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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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「ありとあらゆる手段を尽くして逃げる、それが私だ!」
 高らかに宣言しながら、オールエリアの逃走者であるオー・ルラ・ウンダー。それを追いかける小さな体の眼鏡少女。
「た、体力さえあれば……! 自分の体なら負けないのにー!」
 叫びながら賢明にオー・ルラ・ウンダーを追うのはレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)だ。
 現在はパートナーであるミア・マハ(みあ・まは)の肉体を使っており、思うように、というよりも体力が少ない体に四苦八苦していた。
「も、もうだめ。ちっとも走れない。まるで自分の体じゃないみたい……」
「まあ実際、そなたの体じゃないからのう」
「だったらミアが頑張って捕まえてよ!」
「いや、この体の『たゆん』の重みがどうにもな」
「セクハラ! セクハラだよ!」
 言い合う二人を差し置いて優雅に逃げ回るオー・ルラ・ウンダー。残り一つの鍵は目の前にあるというのに。
「いやいやそんなことはないぞ、にしても暑いのう。たまったものではな……ん?」
 Tシャツの裾で汗を拭おうとした時、ある黒服の体が反応したのをミアは見逃さなかった。
「……ははーん」
「? なに、どうしたの? そんな企み顔で。」
「いやー暑いわねー。これでは、Tシャツなど着ていられないわー」
「何その喋り方、というかTシャツ脱がないでよ! 恥ずかしいから!」
「まあ奴を見てみろ」
「……?」
 ミアに指差されたほうを見ると、見事な鼻血を噴出している黒服がいた。オー・ルラ・ウンダーに成りすまそうとしていた『偽装者』だ。
 成りすます前にミアに見つかり、お色気の毒牙にかかってしまったのだった。
「なっ?」
「なっ? じゃないよ! いくら捕まえるためだからって恥ずかしい格好を許可した覚えは」
「ほれほれ、次のお客人が来たぞ。こちらには効かんようじゃ」
「人の話を聞きなさーい!」
 レキの話も聞かずにミアが飛び出す。『銃舞』を使用して、黒服たちをさらりさらりとかわしていく。
「いやはや、若き体とはいいものじゃ。いくらでも戦えそうじゃ! ほれほれこっちじゃ!」
 二挺の銃で威嚇しながら黒服たちを弄ぶミア。に、対して未だに慣れぬレキ。しかし、足踏みだけでは終わらない。
「動けないのなら、動かずして倒す!」
 『ブリザード』を使って黒服たちを迎撃する。そして、黒服たちのその奥にオー・ルラ・ウンダーの姿を発見したレキ。すかさず『奈落の鉄鎖』を発動。
「届かぬ届かぬ!」
 寸でのところでかわされてしまう。
「もう! すばしっこいったらありゃしないよ! 容赦しないんだから!」
 事前に聞いていた敵の弱点、幽霊等が怖いを利用する。『その身を蝕む妄執』を使用して、この世の物とは思えない恐怖の幽霊を幻視させる。
「ゆ、幽霊な、ななどしししらぬ!」
 明らかに恐怖し、動きが鈍る。
「よーし! 今がチャンス、捕まえなきゃってうわぁ!」
 自分の体ではないことを思い出し、盛大に扱けるレキ。同時にスキルの効果も解除されてしまいオー・ルラ・ウンダーが正気に戻る。
「……明日は筋肉痛じゃのう」
「あいたたっ……明日よりも、今を考えないと」
「じゃが、その筋肉痛を被るのはわらわじゃぞ?」
「それは……ごめん!」
「……『たゆん』の重みにはリスクが付きまとうということか」
 そう言いながらも全力で蹴散らし、オー・ルラ・ウンダーを確実に追い詰める二人。

 その二人に負けじと黒服たちを寄せ付けず、オー・ルラ・ウンダーを捕まえるべく尽力しているのは四谷 大助(しや・だいすけ)グリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)の二人だ。
「ちょっと大助! その格好でキックは禁止! はしたないじゃないの!」
「文句言うなら戻って待ってろ! それと大声で騒ぐなバカ!」
「大声なのはどっちよ!」
「お前だよ!」
 互いに言い争いながらも相手の攻撃はさらりかわしていく。だけでなく、迎撃もこなしていく。もののついでに倒される黒服たち。しかし、オー・ルラ・ウンダーまではまだ遠い。
「まったく! 隠れたり逃げたり、男なら正々堂々とかかってきなさい!」
「その姿で言うな。というか、頼むからもう黙っててくれ……死にたくなってくる……」
「どうして?」
「俺の姿でお前の口調は似合わないってことだよ!」
「そんなこと言ったらそっちだってそうじゃない」
「女が男口調なのと、男が女口調ってのは全然違うんだよ……」
 自分の姿でのグリムの行いにどんどん気持ちが憂鬱になっていく。これ以上、自分のこんな姿を見ていられない、と思ったときある作戦を思い立つ。
「そういや今、さっき一緒に捕まえようとしてくれてる協力者の人が、『ブリザード』して周囲の気温が下がってるよな……雰囲気ばっちり」
「どうしたの?」
「いや、あいつを驚かせるいい手を思いついてな。これならあいつもたまったもんじゃないだろう」
 そう言ってニヤリと笑う四谷。【ドッペルゴースト】を二体、グリムの姿同様にとらせる。
「グリム、あいつをあっちの暗い方向へと追い込んでくれ。俺とゴーストはそっちで待機してるから」
「……何をするかわからないけど、変なことしないでよ」
「誰がするか!」
 四谷の言葉を最後に別れる二人。グリムが黒服たちの波を割きながら、オー・ルラ・ウンダーへと迫っていく。
「残念、いくら早くても障害物だらけのここじゃそう簡単には捕まらないのさ!」
「本当に口の減らない奴ね! 一緒に体力も減らしてくれたらありがたいんだけど!?」
 減らず口をたたくオー・ルラ・ウンダー。しかし、そちらは四谷が指定した暗がり。
「……」
「ん、何かただらぬ気配がっ!?」
 オー・ルラ・ウンダーの目の前にいたのは、長い金髪の毛を前にたらし顔が見えず、生気があるとは思えない何かの姿だった。
「ひ、ひいいい!」
 逃げようとするオー・ルラ・ウンダーだが、そこにも同様の姿が。
「な、なんだこれは!?」
 また別の方向に逃げようとするもそこにも同じ姿が。自分の周りを囲む、謎の生命体。その二体がじりじりと詰め寄ってくる。
「く、くるなぁっ!?」
 そう言って二体から遠ざかるオー・ルラ・ウンダー。だが、彼は忘れていた。後ろにも同じものがいることを。後ろから肩をがっちり掴まれ、耳元でこう囁かれる。
「遊ビハ 終ワリダ」
 髪と髪の間から見えたのはまるで鬼の目。その光景に耐えられなくなったオー・ルラ・ウンダーは音もなく卒倒する。
「……なーんてな」
「まったく、人の姿を見て卒倒するなんて失礼な奴ね」
「いや、いきなり鬼の目で睨まれれば誰でも怖がるだろう」
 幽霊の正体は金髪を前にたらし、『鬼眼』を使用していた四谷だった。
「とにかく何とか捕まえたな。あとは鍵をもらうだけだ」
 しかし、事態は思わぬ方向へと向かってしまう。