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屍の上の正義

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屍の上の正義

リアクション

『こちらホークアイより全契約者へ。オリュンポス・パレスより通信があった。
 現在制御を乗っ取られ、制御不能状態の模様。直ちに周りにいるスポーンを撃破し、パレスの制御を奪還させてくれ』
 ハデスの切なる通信は辛うじて伝わっていた。それを聞いたセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は少なからず驚く。
「凄い数のスポーンの群れだと思ってはいたが、まさか本当にアレが機動城塞オリュンポス・パレスだとは……信じがたいな」
「仕方のない奴だ。だが、助けを求められたのならば、いいだろう…。我々は【同志】だからな!」
 マネキ・ング(まねき・んぐ)が高らかに言い放つ。
「あの新兵器・荷電粒子砲は、確かに危険。何せアレの作成には我も関与しているのだからなっ!」
「キリッっとしていないで早く行くぞ!」
 何本もの武器を装備したかのようなイコン【剣の女帝】キシオムバーグが荒野を駆け抜ける。
「セリスよ、我らでオリュンポス・パレスを破壊する。それが救いの道にもなるだろう」
「……そうしたいところだが、他にも味方がいる。それにパレスの荷電粒子砲も役に立つかもしれない。破壊はだめだ」
「ならばどうするというのだ? 我らだけでは周りのスポーンを排除しきるのは苦難だぞ?」
「そこはお前次第だ。パレスの構造には詳しいんだろう? なら、動力部がどこにあるかもわかるはずだ」
「無論、容易いことだ」
「比較的乗っ取られて危険な場所から排除していく。そうすればあいつらが少しでも早く制御を取り戻せるかもしれない」
 喋りながらもオリュンポス・パレスへと単身向う。
「……面白い。我の知識とセリスの腕、どこまで通じるか、試してみようぞ!」
「作戦会議は終わりだ。指示をくれっ」
「右下、及び左下の奴を倒すのだ。そうでなくては動力部は遠い」
「了解した!」
 指示されたとおりオリュンポス・パレスの下に回りこみ群がっていたスポーンを片方の『パイルバンカー・シールド』で守りながら、もう片方で敵を倒していく。
「倒したが、別に動力部に見受けられるところはないが」
「……はて? 間違えたか?」
「……」
「いや、作ったのは結構前だから。記憶違いもあるさ」
「……一度体勢を立て直す」
 オリュンポス・パレスから離れセリス。それをみたスポーンが守りを固めつつ、侵食を再開。
「くそ、時間がないって言うのに。味方の支援があれば、探す時間も……」
『その支援の役目、任せるであります!』
 通信と共にセリスの真横を『グラビティキャノン』を掠めてオリュンポス・パレスに群がるスポーンたちを薙ぎ払った。
「スレスレだったな、面白い」
「……無事に帰れるか、心配になってきたよ」
 笑うマネキと呆れるセリス。それでもパレスの前からは引かなかった。

「目標補足! 直ちに破壊するであります!」
「中々の大物だな! 狙いをはずすわけにはいかんな!」
「……二人とも、管制機から連絡があったのを忘れないでよね。あくまでパレスの周りにいるスポーンたちが目標よ?」
「……わかっているでありますよ? 多分、きっと、恐らくは」
「なに、荷電粒子砲で木っ端微塵にしてやるのだよ!」
「……目標を周りにいるスポーンにセット。多少はパレスにも攻撃が行くでしょうけど、そのまま直撃するよりましだろうし」
 戦艦を髣髴とさせる大型のイコン伊勢に搭乗している、
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)の三人がパレスに向けて攻撃開始の準備を始めていた。
『こちらジェファルコン特務仕様、生駒だよ。伊勢に流れてくる小物はこっちで排除するから、大物は任せたよ』
「了解しました。援護、ありがとうございます」
『できることをやってるだけだよ』
『ウキー!』
『あんたは黙ってなさい』
 伊勢の援護を勤めるのが薄い緑色をその身に施したジェファルコン特務仕様に搭乗する、笠置 生駒(かさぎ・いこま)ジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)の二人。
 というか一人と一匹。現在、ジョージは戦場の空気を感じ取り興奮して野生に帰っているのだ。
「あはは、とにかくお願いしますね」
『はーい、頑張りまーす』
 通信を閉じてパレス攻撃へ向けて本格的に動き出す。
「レーダーを確認。少数の小型スポーンが向ってきてるけど、そちらは生駒さんに任せる。私たちはこのままパレスへと攻撃を開始」
「了解であります。荷電粒子砲の準備でありますな!」
「腕が鳴るな!」
「威力が高すぎるわ。メインは射程があり、命中がそれほどでもない『要塞砲』と低威力の『レーザーマシンガン』を併用していくわ」
 コルセアの提案に明らかに肩を落とす。それを見たコルセアが微笑む。
「大丈夫よ。荷電粒子砲なら、多分使うから」
「ホントでありますか? 相手をぶち抜くことができるでありますか?」
「ええ。多分ね」
「そういうことなら……二十二号! さっさとあのふよふよしてるパレスを援護するでありますよ!」
「うむ、よいだろう! 射撃なら任せておけ!」
 上手い具合に二人をコントロールするコルセアだった。

「ウキー! ウキキー! ウッキッキー!」
「だーもううるさいなっ。喋れるんだから普通に喋ってよ」
 向ってくる小型スポーンをエネルギー消費に優れる『二式(レプリカ)』を使用して各個撃破しながらジョージのうるささに辟易する生駒。
「ウキー! ウッキー! ウキキキキキキッ! ウキッ―――」
 あまりにうるさいジョージの頭にレンチが飛来し、見事にヒット。
 ジョージが意識を失い、コックピットには心地よささえ感じる静寂が広がった。
「よし、まず身内のうるさいのは倒した。あとは目の前にいるこいつらだけだね」
 距離がある敵には『銃剣付きビームアサルトライフル』で応戦し、近寄ってくれば『二式(レプリカ)』で凍らせ、斬り払う。
 その攻撃の前に小型スポーンたちは伊勢はおろか、生駒にすら何もできずにただ土へと還るのみ。
「小型スポーンくらいなら何とかなるもんだな。……あれ、何だろう?」
 あらかた小型スポーンを倒した生駒の目に映ったもの。それは、天をも貫くほどの大きさを持った歪な物体が、こちらに接近してきている光景だった。
「……あれはまずいね。もうわかってるとは思うけど、連絡しとこう」

『こちらジェファルコン特務仕様、向ってきた小型スポーンは全て撃破。後は、もう見えてるだろうけど』
「はい、超大型スポーンの姿、こちらでも確認しました」
『どうするの?』
「無論、パレスを攻撃した後であのでっかいのに荷電粒子砲を叩き込んでやるであります! そうでありますな? コルセア、二十二号!」
「うむ、射撃は外さんのだよ!」
「と、言うことらしいので離れていてください。巻き込まれたらしゃれになりませんし」
『うん、そうするよ』
「援護、ありがとうございました」
『はーい、後は任せたよ』
 通信が終わり、ジェファルコン特務仕様機が後退をする。それを確認した吹雪が指示を出す。
「パレスに攻撃をするであります! 時間がないため『要塞砲』でのみ攻撃!
 それで制御が戻らなければ荷電粒子砲を叩き込んだ後で、再充填をし今度はあのでっかいのに攻撃するでありますよ!」
「了解。『要塞砲』の準備はオッケーよ。やっちゃって」
「待ちかねたぞ、この瞬間をっ! これでも喰らうといい!」
 そうして伊勢からパレスに向けて『要塞砲』が放たれ、パレスへと着弾。
 果たしてパレスはどうなったのか。それを見極めつつ、荷電粒子砲の準備入る三人だった。