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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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第9章 海で遊べる者なんか呪ってやるッ Story2

「魔性の探知が出来ないと対処が難しいですわね」
「私がやるわ。探知と可視の宝石でニクシーかグラッジか、分かると思うの」
 ニクシーの対処役をするエリシアたちに、フレデリカ・レヴィが言う。
「協力感謝しますわ」
「もし被害者を発見したら頼める?人手が足りなかったらルイ姉にも手伝ってもらうから」
「了解よ、そっちの魔性対策は任せるわね。私たちは治療中の人の近くで待機してるわ」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は海から少し離れた浜辺で恋人と待機する。
「あのさ、アイデア術発動させておかない?」
「ずっと持続させると2人の負担が増えてしまいますよ、真宵」
「わたくしにちょっと考えがあるのよ」
「今度こそまじめに考えたのですね!」
「し、失礼ねっ。わたくしはいつもきちんと想定して言ってるのよ」
 テスタメントのセリフに眉を吊り上げ、自棄酒ならず自棄バナナを食べようとする。
「そんなものを食べている暇はありません。しかもこれはおやつではありませんよ」
 おやつに入らないものを真宵の手から奪い、海の中へ放り投げてしまった。
「わ、わたくしのおやつを!なんてことするのよ、テスタメント」
「怒ってしまっては、探知能力に影響が出てしまいますよ?」
「くぅ〜…っ」
 これが休憩時間だったらぐりぐりしてやるのに、と悔しげに歯を噛みしめる。
「あれはすでに海の栄養となりました。なのでテスタメントも栄養補給します」
 パートナーの目の前で、美味しそうにバナナクリームメロンパンを食べる。
「ちなみに、これはただのバナナではないのでおやつに入ります」
「よこしなさいよ」
「いやです、いつもテスタメントのおやつを取っているじゃないですか」
「ごほん…っ。アイデア術を発動させないんですの?」
 エリシアは咳払いをし、おやつの奪い合いを止める。
「ぁ、はい!」
「ビバーチェをいったん、帰還させますわ。ノーン、あなたも帰還させなさい」
「うん、エリシアおねーちゃん」
 ホーリーエクソシズム(花嵐)を発動させるため、ビバーチェとルルディを帰還させた。
 2人は聖杯を掲げ、再召喚させるため詠唱を始める。
 彼女たちに合わせてガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)、テスタメント、ラルクが裁きの章を詠唱し、ビバーチェとルルディの陣へ力を吸収させる。
 さらに駆けつけた美羽とベアトリーチェ、ラルクとテスタメントが哀切の章を唱える。
 章の力を吸収したビバーチェとルルディが再び召喚される。
「ビバーチェ、花嵐の力はまだ使う必要はありませんわ。おそらく発見した際、使うことになるかと」
「それでいいのね」
「ルルディちゃんも、まだ発動は待って」
「ずっと継続したままでは、ノーンたちの負担が大きくなってしまいますからね…」
 花の魔性たちは指示を待つ。



「ニクシーって複数いるのかな?」
「先生方は1体とはおっしゃっていませんでしたからね」
 確認するように呟くノーンにテスタメントが言う。
「2種類の魔性が協力関係にあるようだけど。つまり、同時に現れる可能性があるってことね?」
「おそらくそうなりますね、フリッカ」
「リア充ね…。……テスタメント、ちょっとこっちきなさい」
 真宵はテスタメントを手招きし、何やらごにょごにょと話す。
「ですが、それはどうかと…」
「ものは試しよ。向こうから来てもらえば捜すのも楽だし」
「…分かりました、では…歌います!」
「(フフフ、釣られてくるがいいわ)」
 録音したものじゃない幸せの歌で、グラッジを寄せようとテスタメントに歌わせる。
「どうして気配がこんなに!?」
 アークソウルの探知エリアに複数の気配が入り込んできた。
 なぜ自分たちのところへ集まってくるのか分からず、フレデリカは驚きのあまり声を上げた。
「はっ!まさか、その歌のせいで…」
「えー、だって向こうから来てくれたほうがよくない?」
 探す手間が省けたでしょ?という態度で言う。
「ほら。操られてる器だっているし」
「……ぇっ、町の人からグラッジが離れたわ」
「あ〜これはきっとあれね。標的がわたくしたちになったのよ」
 ターゲットが被害者から自分たちに変わったとのだと真宵が告げる。
「ほんの少しでも幸せな気持ちになってるでしょ?」
「え、えぇ。テスタメントさんの歌でなんとなくね」
「幸せ気分の集団が集まってたら、グラッジ的にどんな感じかしら」
「じゃあ…この歌でここに来てるってことね」
 グラッジが集まってきた原因がようやく判明した。
 しかもターゲットが自分たちにされてしまっている。
「自分から被害者から出て行ってくれたんだし、何か問題でもある?魔性祓いだけじゃなくって、被害者の救助もするわけだからね。まっ、憑かれなきゃいいだけよ」
「えぇ、それならあとは助けるだけだもの」
「すごーく暴れそうな感じだよ、フリッカ」
「こっちが狙われてるなら、先にグラッジをなんとかしなきゃ…」
 だが、目の前の被害者の救助もしなければならない。
 何から遂行するべきかと頭の中で整理する。
「ねぇねぇ、フリッカ。あの人珍しい服着てない?なんか水の羽衣みたい」
「今、考えてるところなんだから黙っていてレスリー!…って水の羽衣……?」
 まさかと思い、恐る恐るスクリプト・ヴィルフリーゼ(すくりぷと・う゛ぃるふりーぜ)の方へ顔を向ける。
 そこには宿で情報交換の時に得た、魔性の特徴と同じ姿の者がいる。
 羽衣というよりもロングスカートのような服を纏っている。
「青色っぽい感じだね、ちゃんとスケない作りみたい」
「そんなことより、応援を呼ばなきゃ。このグラッジの数と、ニクシーが同時に相手じゃ厳しいわ」
 フレアソウルの炎で発煙筒に火をつけ、祓魔術を行使出来る者を呼ぶ。
「な、なぜこんなに集まっているんですか…?」
「諸事情でね…。グラッジのほうを頼めるかしら」
「了解いたしました」
 フレンディスはハイリヒ・バイベルの哀切の章を開く。
「行くぞ、フレイ」
 ベルクはホーリーソウルの力を指先に集中し、光のレーザーを撃ちグラッジの位置を的確に知らせる。
「煙が上がったから来てみたけど、どういう状況なの?…なんか1人は歌ってるし」
「いろいろあったのよ…。ルイ姉たちと一緒に、被害者たちの治療をしてもらいたいの」
「精神だけじゃないわよね?」
「えぇ…。毒のほうは後でエリシアさんたちが治療してくれると思う」
「セレアナ、任せたわ」
 ホーリーソウルを使える恋人に、魔性の憑依による精神の浄化を託す。
「この人を押させえておいて、セレン」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はペンダントに触れて祈り…。
「(肌の色は正常のようね、毒は他の人に取り除いてもらわないと…)」
 精神を病ませる邪気をホーリーソウルの光で浄化する。
「そんなに暴れちゃ、治療出来ないよ!」
「レスリー、押さえていてください。(まだ若いのに死のうだなんて。この毒はそんなにも性格を歪ませてしまうんですか…)」
 海に飛び込もうとする主婦の精神を浄化しようと、ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)がホーリーソウルに祈りをこめる。
「ボクと交代しよう。続けて治療すると大変だし。ありゃ…こっちは少し深いね」
「…取り除けそうですか?」
「うん、大丈夫っ」
「セレアナさん、そちらはどうですか?」
「症状が重い人もいるわね。この人数だから軽傷だけ対応ってわけにもいかないわ」
 宝石の光を自分の手のように扱い、憑依されていた者の身体の中にある非物質の邪気を探す。
 光を粘着させるように邪気を掴んで引き剥がす。
「メスのいらない手術しているみたいね」
「なに言ってるの。神の手みたいなのがあれば、世の中長生きな人ばかりよ」
 セレンフィリティの冗談に、セレアナは肩をすくめた。



「あれが水の魔性か」
「ケルピーもそうでしたな、ラルク」
 しかし、今回は“食欲の暴走”ではなく、“海に入れる者を全て憎む”魔性だ。
「さて…これは大人しく説得に応じるようには見えませんな」
 ニクシーが作り出した水分身を見据える。
 ホーリーエクシズム(花嵐)を使うしかなさそうだ。
「ラルク、氷術で攻撃してきそうですぜ!」
 未来予知でニクシーが仕掛けてくると告げる。
「……ほぼ今だな。エリシア、ノーンも避けろっ」
 氷術で作り出された氷柱の雨をかわす。
「ノーン、わたくしの下へ!…くぁっ」
「エリシアおねーちゃんっ」
「立ちなさい…ノーン。あんなもの、何発もくらっていられませんわ」
 空飛ぶ箒シーニュに乗り、ニクシーの氷術をかわす。
「今度は俺たちを吹雪で吹き飛ばそうとしてますぜ」
「めちゃくちゃ魔法を使ってくるな…っ」
「花嵐で大人しくさせますわよ、ビバーチェ!」
「ルルディちゃんもお願い」
 2人はホーリーエクシズム(花嵐)をビバーチェとルルディに発動させてもらう。
 白い花びらが舞い散り、雲のように集まっていく。
「フレデリカさん、本体を教えて」
「右側の…奥のほうに隠れているやつよ」
 アークソウルで本物の気配を探知する。
「ビバーチェ、降らせる領域を小さくしなさい。大人1人分程度で十分ですわ」
「降らせるポイントは、あなたの仲間が教えてくれたところでいいのね」
 血の情報でエリシアの思考を読み、的を小さくしてルルディと術を操作する。
「ウェルデン ジー エイン ミスゲスヒック アオスシュテルベン!(不幸になって絶滅してしまえばいいのに!)」
 手の平から黒い蛇のようなものを出現させたニクシーは、それを操りエリシアたちを襲わせる。
「ノーン…呪術を使ってきたようです…」
「あれが呪いなの?皆ー、集まって!」
 狙われた術者たちに作り置きしておいた香水を使う。
 呪いはノーンたちに手出し出来ず、消滅してしまった。