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冬のSSシナリオ

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でポン!

――先程の城門での出来事から少し経ち、場面はレティロット城天守閣へと移る。

「最初にトラブルはありましたが、順調に進んでいるようですねぇ」
 紅茶の入ったカップを傾けながら、レティシアがモニターを見て満足げに頷いた。
 画面に映るのは、挑戦者達が難関に挑む光景である。ミスティのカメラを通して、こちらへとリアルタイムで映像が送られているのであった。
「うーん、確かに順調は順調だけど……ちょっと順調過ぎな気もしますよ?」
「そうですねぇー……あっさりとクリアされ過ぎな感じもするにゃー」
 輝と瑠奈は懸念を抱いていた。
 現在挑戦者達は第壱、第弐の難関をクリアし、第参の難関へと向かっていた。その二つの難関を、挑戦者たちは特に困難も無くクリアしているのである。

――第壱の難関は【試金石の壁】というアトラクションであった。
 これは二メーター以上有る壁を一分以内に乗り越える、というルールであった。
 一般人にとって、二メーターの壁を一分以内で乗り越えるのは中々難しい。
 だが、今回挑戦しているのは逸般人である契約者達。二メーター程度何の壁にもならない。
 というわけで、あっさりと全員乗り越えてしまったのであった。

――続いて第弐の難関【虎陣池】である。
 こちらは池に浮かぶ浮島を飛び、対岸へ渡り切るというアトラクションだ。
 これに関しては完全にあっさり、と言うわけではなかった。
「この程度! ヒーローなら簡単にぃぃぃぃぃぃあぁぁぁぁぁぁッ!」
 最初の挑戦者を名乗り上げた牙竜は、序盤は浮島を軽快に渡っていた。が、流石にそこまで簡単ではない。普通の浮島は固定されているのだが、中にはいくつか全く固定されていない物もあり、その上に乗ってしまうと池に沈んでしまうというトラップが仕掛けてあったのだ。
 牙竜はそれに引っかかり、池へと落ちてしまったのであった。
「その犠牲、無駄にはしない!」
 だがその次に挑戦した永谷は、罠に引っかかることなく、袴を翻しつつあっさりと対岸へと渡り切った。
 何故罠に引っかからなかったかというと、永谷は牙竜が落ちた時の浮島の様子を観察していたのであった。
 固定されていない浮島は、落ちた時に衝撃で固定されている物とは違った動きを見せる。それを観察し、【記憶術】を用いてその様子を記憶。トラップに引っかかる事無くわたり切る事が出来たのであった。

「あっさり攻略されたのは仕方がない所もあるかもしれんな」
 ハデスが顎に手を当て呟いた。
「そうですねご主人様…‥じゃなかったハデス博士」
 ヘスティアもその呟きに賛同するように頷く。
「あの二ヶ所、誰も居ませんでしたしねぇ」
 ルイの言葉に、ハデスとヘスティアがうんうんと頷いた。
「……あー、そうでしたね」
「そう言われてみればそうだにゃー」
 そして輝と瑠奈が納得したように一度頷いた。
 あっさりとクリアされた理由は、難易度もあるだろうがこの二つのアトラクションには誰もついていなかった、というのもあると思われる。
「だがしかーし! 先の二つはいわばイージーモードみたいなもの! 次からはそうはいかん!」
「ですよねー! お次からはボク達も加わりますからねー!」
 ハデスと輝がいきなり、テンションを上げて笑い出した。
「はっはっは! その通りですよ! さて次は私の担当ですね! ちょっと行ってきますよ!」
「行ってらっしゃーい。気をつけてにゃー」
 瑠奈の声に、サムズアップでルイは答えると高笑いを残して去っていった。

「さーて、どうなることやら……」
 その様子を眺めていたセイニィが小さく呟いた。
「おやおや、機嫌が直ったようですねぇ」
 レティシアがニヤニヤと笑みを浮かべて言うと、セイニィは一つ溜息を吐いた。
「諦めたのよ。どうにもならないんだから付き合うしかないんでしょ?」
「すいませんねぇ」
「いいわよ……ところで、これ聞きたいんだけど」
 そう言ってセイニィが取り出したのは、最初に使用したアトラクション一覧が書かれたフリップ。そして指さしたのは次に行われる第参の難関。
「何でこれだけ訂正線が引かれてるの?」
 セイニィが言う通り、【キノコでポン!】という文字を訂正するように線が引かれていた。
「ああそれは次を見ればわかりますよぅ……っと、準備ができたみたいですねぇ」
 レティシアに促されるようにセイニィがモニターに目をやる。
「……んなッ!?」
 そして、固まった。

 一方、画面の向こう。挑戦者側も固まっていた。

「はーっはっはっは! 第参の難関【キノコでポン!】改め【ルイでポン!】です! さぁ皆さんかかってきなさぁいッ!」

 そこには、天井から逆さづりになった、赤褌一丁で体中にワセリンを塗ってテッカテカになり、マッシヴなポージングを取りつつ声高に笑うルイが居た。