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死の予言者

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死の予言者

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 そのころ、街角のそば屋では、ルカルカ達も聞き込みをしていた。そば屋の主人と客達に死の占い師の容貌を話し、占い師の噂の中から何か有益な情報はないかと探る。しかし、やはりこれといって有益な情報はないようだ。
「そっかー。やっぱり誰も詳しい事は知らないんだね」
 ルカルカが箸を置いてため息をついた。
「けど、娘さん、あの占い師の事をそんなに調べてどうしようっていうんだい? まさか占ってもらおうって気じゃないだろうね。やめた方がいいよ」
「ちがうよ」
 ルカルカは首を振った。
「あの占い師をとっちめてやりたいだけだよ」
「とっちめる? やめた方がいいよ。女の身で……」
「大丈夫! こう見えても、幻心道場で武術を習ってた事もあるんだから」
「幻心道場? あの死んだ荒田幻心のやってたっていう道場か?」
「違うよ。最近明倫館にできたんだよ。荒田先生を師範に招いて」
「荒田幻心は死んだんじゃないのか?」
「それが死んでなかったんだよ。殺されかけたけど、実はうまく逃げ延びる事ができたんだって」
 ルカルカはローザマリアと同じ噂を町の人に広めて行った。
 こうして、葦原に荒田幻心はまだ生きていて明倫館に新しい道場ができるという噂が広がり始めた。

「死の予言者? それなら知ってるよ」
 葦原の人ごみで若者が答える。
「本当ですか?」
 変装したローザマリアが答えた。
「ああ。実は俺も占って欲しくて、今日の夕刻にあの橋のたもとで合う約束をしてるんだ。良かったら一緒に来るかい?」
「はい。ありがとうございます」
 ローザマリアは頭を下げる。

 そして、夕刻。
 ローザマリアは約束通り橋のたもとに立った。
 しばらくすると、若者がやって来て手をふる。
「待たせたね」
「いいえ、それほどでも」
 ローザマリアが答える。
「けど、占い師はまだみたいです」
「そうかい。それより姉さん。ひとつきいていいかい?」
「なんですか?」
「何が目的で、占い師の事をコソコソ探ってるんだ? 嘘までついて」
「……」
 ローザマリアは驚いて若者の顔を見る。若者は邪悪な笑みをその顔に浮かべていた。
「あんた、誰?」
 叫ぶマリアローザに男が答える。
「我が名は鳶ノ段蔵」
 そういうと、鳶ノ段蔵と名乗った男はゆっくりと変装を解いて言った。その下から細い眉に暗い目をした男の顔が現れる。
「ただ、寿命を知りたいだけなら教えてやるよ。お前の寿命は今日この時までだ」
 声と同時に、周囲から手裏剣が飛んできた。
 と、その時。
「危ない!」
 ルカルカが飛び込んできてエンドゲームで敵の初撃を迎撃する。
 手傷を負った忍び達が屋根の上から次々に落ちて来る。
 実は、こういう事を見越してルカルカと夏侯淵がさりげなくローザマリアの近くに潜んでいたのだ。
 その隙を見てローザマリアは逃げ出した。
「逃がさぬ!」
 段蔵が後を追う。
 さらにその後を追いかけようとする忍び達の前に、神威の矢を構えた夏侯淵が立ちはだかった。
「ここから先は行かせぬ」
「愚かな。我ら忍びに勝てると思ってか?」
 忍び達が笑いながら襲いかかって来た。訓練された忍びの動きは、常人の目には捕らえられぬ早さだ。
 夏侯淵はとっさにルカルかと自分にゴッドスピードを付与する。
 さらに、夏侯淵は行動予測で忍びの動きを見切りながら神威の矢で次々と忍びを倒して行った。ルカはドラゴンアヴァターラ・ストライクを手に、ミラージュで自分の分身を生み出して避けつつ百獣拳で夏侯淵と連携し、確実に忍びをしとめて行く。
 こうしてあっという間に忍びは全滅させられてしまった。

 一方、ローザマリアは葦原の路地裏をひたすら駆けていった。その後ろを段蔵が追いかけて行く。
「逃げられると思ってか?」
 段蔵はまるで狩りを楽しむかのようにローザマリアの後ろを追いかけて行った。
 その時、脇道から現れた少女が段蔵のいく手を阻む。
「あ、ごめんなさい」
 少女は謝った。少女と見せかけたのは実は竜胆だったのだが……。
 その間に段蔵の視界からローザマリアは消えてしまった。
「くそ、どこに行った?」
 段蔵はあちこちを見回す。
 そこに、金色の髪の少女がやってきた。
 変装を解いたローザマリアだ。
「おい、貴様」
 段蔵がローザマリアを呼び止める。
「この辺りに赤毛の女はいなかったか?」
「それなら、あの空き地の方にいたわよ」
 ローアマリアがしれっと答える。
「そうか」
 段蔵破うなずくと、空き地の方に向かって言った。
「うまくいきましたね」
 竜胆がローザマリアに話しかける。
「ええ」
 ローザマリアはうなずいた。

「クソ、誰もいないではないか」
 段蔵は空き地であちこちを見回し怒りくるっている。
「あの、女。必ずつかまえて全てを吐かせてやる」
 その時、どこからか吹き矢が飛んできて段蔵のうなじにささった。
「うう!」
 段蔵は針を抜き、そのままがくりと膝を折った。
「ルカルカ特製の含み針だよ! サービスで睡眠薬も塗っておいたよ」
 ルカルカが現れ、段蔵にウィンクする。その背後に夏侯 淵も立っていた。
「最初からここに追い込むのが目的だったんだよ! ルカルカ達は先回りして待ってたんだ!」
「では、あの藍色の髪の女と、金髪の女もグルか?」
「そうよ! 変装対決はこちらの勝ちみたいね」
 ローザマリアが赤毛のカツラを見せながらいう。
「貴様、何が目的だ!」
 夏侯 淵が占い師の胸ぐらをつかんで言った。
「ふん。そのような事をやすやすと教えると思うか?」
 段蔵が嘲笑する。
「とりあえず、屋敷に連れ帰ってゆっくりと聞きましょう」
 竜胆の言葉に一同はうなずいた。
「とりあえず収穫ね。貴重な情報源をつかまえた」
 ローザマリアの言葉に皆はうなずいた。


 しかし、段蔵も忍びの者である。
 屋敷に連れ帰り徹底的に吟味したが、頑に口を割ろうとはしなかった。
 段蔵の口を割らせる仕事は藤麻達にまかせて、竜胆達は再び町へと聞き込みに出た。