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―アリスインゲート1―後編

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―アリスインゲート1―後編

リアクション

恭也:やっぱ、高周波ブレード駄目だな。ナマクラにも程があるわ
唯斗:武器電力効率と攻撃力強化を優先しないからそうなる。ポイント足らないだろう
恭也:く……、マリアッチでメキシカンスタイルにかまけたのがイケなかったか……早くムラサマブレードに替えたいな
唯斗:替えたところでムービーみたいにズバズバ切れないぞ。強化も最初からやり直しだからな。
恭也:と言うか、ムービーはどう見ても斬鉄剣だよな。プレイ時は「ジャックに戻る時だ……」とか言って中二病発動したかと思えば、結局リッパーモードは消耗激しくて使えないしやっぱり切れないし。
唯斗:邪気眼(笑)
和輝:お前ら真面目にミッションしろよ! てか恭也は自分の話をしてるのかゲームの話をしてるのかわからねぇよ! 

 警備のランプがレッド(ALERT)からグリーン(SAFETY)に変わる。電脳戦組が警戒システムのセーフティーを解除したのだろう。同時に、使用不可能になっていた目の前のテレポートゲートの仕様が可能になる。
 指定移動区域【700N】を入力し紫月 唯斗(しづき・ゆいと)はこのテレポートゲートの安全を確認する。【不可視の封斬糸】をゲートの向こう側へと通し、《超感覚》で糸に伝わる微かな振動を捉える。待ちぶせはいないようだ。
 ゲートの先は研究室だった。不自然なことに部屋の一つに防火壁が降りている。
 コンソールパネルに《雷術》を流しショートさせる。警備システムを掌握した今、危険行動をとってもバレることはない。防壁向こうの扉に入る。
「助けに来たぞアリサ――」
「ああいらっしゃいー」
 ミナミ・ハンターが椅子に座ったままやる気なく歓迎する。
 ここは第三研究所だった。
「ああ! 唯斗ちゃんだ!」
「ノーン!? それと舞花か何故ここに?」
 二人の代わりにミナミが説明する。
「ああ、この二人にあたしが捕まってたの。あ、もしかしてあたしを殺しに来た?」
「真面目に話してください。ノーンたちが閉じ込められて動けないってのは聞いてますから」
 唯斗に指摘されミナミが目を泳がす。
「俺はアリサのいる【700N】地区に飛んだはずだが、どうしてここに?」
「ああ、それね。700Nってのはここにつながるコードなんだけど、あなたの行きたい【700N】には直接それを入力してもいけないの」
「つまり、コード【700N】というのは隠語か?」
「そいうこと。電子関係に強い子ならわかるんじゃない? 聞いてみたら? あ、わたしは答えないから」
 あっけらかんと言うミナミは危機に対しての感受力が低いのだろうか。答えなければ命はないということもあるだろうに。
 それとも、彼らが命を取らないと知ってからなのか。
 ミナミを脅して殺すことになるにせよ。時間がかかる。

舞花:コード【700N】の意味分かる人いますか? 隠語見たんですけど

 レスポンスがすぐに帰ってくる。

ダリル:いくつか候補がある。が恐らくUNIXの『eXec.Write.Readの全権、相手のアクセス権の剥奪』コマンドのchmod 700のことだろう。これを8進数だと考えると、十進数で『448』、2進数で『111000000』、16進数で『1C0』だ。
 目的地入力は4文字。文字末のNは任意数nかそのままだと考えると【448N】【448n】【1C0N】【1C0n】のどれかだろう。
ルカルカ:つまり22パターンのうち一つね。
和輝:では今いる全員で当たらせよう。22パターンくらい誰かが辺りを引くだろう。だが、油断するな。アンブッシュの可能性は捨てられない。

「俺は次へ行く。ノーンと舞花は博士を連れて今のうちに避難しておけ」
「つまりあたし拉致られるの? やーだー」
「拉致した人を会社に入れていたくせに何を――」
 唯斗の言葉を切り、ミナミが手を否定方向に振る。
「それあたしじゃないから」
「だが、くわえタバコした女性研究員が拉致した人を運び込んでいたと……」
「そんなの同じのがいるから。第一研究所にも電子タバコ吸う解剖フェチのレズビアンが」