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空域陣取り合戦、始まる

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空域陣取り合戦、始まる

リアクション


時には逃げる事も戦法である

 群がっているワイバーンの1匹を陽一は長く伸ばした深紅のマフラーで捉える。

「(痛めつけるのは可哀想だしな)ごめんな、これで堕ちてくれ」

 マフラーを操作しつつ、陽一自身の背中に出現させた巨大な手に変形させた漆黒の翼で捕まえていく。

「あれは……」

 ワイバーンの地上降下作業をしていると、ティフォンを発見する。

「美由子、行くぞ」
「ええ、リコたちには負けないわよ! たとえ刺し違えてでもね!」
「それは、試合じゃなくて死合だろ! ボケは程々にして、マジメにやってくれよ?」
「でへへ。わかりましたー」

 白装束姿をした酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)に突っ込むと、ティフォンへ接近していく。

「お相手願おうか」
「む。よかろう、かかって来い」
「なら、私から行くわよ!」

 気合満々で一歩前へ出る美由子。
 がしっと髪を掴んだかと思うと、ティフォンの前で無造作にウィッグをはずして、剃りあげたツルピカ頭を披露した。

「……………は?」

 一体どういった攻撃が来るのかとかまえてたティフォンは、突如見せられたツルピカ頭に固まってしまう。

「また、それかよ! 味をしめたのかよ!」
「繰り返しはギャグの基本だからね!」
「ていうか、ちょっとは恥じらいを持てよ……」

 呆れた表情を浮かべる陽一。
 美由子とのやりとりをしつつ、その裏では光学迷彩を被せて姿を消した美由子のアヴァターラダーツに死角からクリスタルに接近させていた。

 赤くなるクリスタル。
 そこでようやくティフォンは、攻撃がされたのだと気付いた。

「光学迷彩で隠していたのだな」
「当たり。一度手の内を見せれば、二度は通用しないだろうけどやらせてもらったよ」



◇          ◇          ◇




 ティフォンのクリスタルが奪われた同時刻。
 エリシアとノーンは東陣営の司令塔、洋たちの攻撃からクリスタルを守っていた。

「手を休めるな! 攻撃を止めるな! ここでは守りは必要ないぞ! 攻めて攻めて攻めまくれ!!」

 洋は容赦なく二丁銃で発砲していく。
 みとも洋孝もエリスも指示通り攻撃の手を休めない。

「こ、これ以上守りきれないよ……」
「ノーン、お願い。クリスタルはしっかり守りますわ」
「わかった。行くよ!」

 受太刀と魔除けのルーンで防御していたエリシアは、ノーンに獣寄せの口笛で集めもらうことにした。

―――ピューーーーイ!

 集まっていく飛行竜たち。

「賢い君たちなら、どっちが上か、分かるよね?」

 適者生存と幻獣の主でいくつかの飛行竜を支配下に置くことに成功したノーン。

「敵はあいつら! 全力で攻撃しちゃって!!」

 ノーンの命令に従って攻撃してくる飛行竜たち。
 その反撃により、機体がボロボロになっていく。
 ボロボロになっていっても洋の表情に焦りはない。
 いつも通りの声質で戦略的撤退を指示し、乗っていた飛空艇から脱出する洋とみと。

「ふん、空挺部隊を甘く見るなよ……機体ブースト! ぶち当たれ!」
「機体を最悪、砲弾とする。どこのロボットアニメかと言われますが、ですが有効ですしねえ。使い捨ての特攻ブースター……そのあとがショボイです……が」

 脱出した洋とみとはパラソルチョコで宙を飛んでいる。

「やれやれ……オレッチもやれってことか? しょうがないな。機体限界速度まで加速! 熾天使化発動!」

 洋孝もそれに倣って機体限界速度まで加速させ、熾天使化と戦略的撤退で脱出する。
 3機のブーストさせた機体に向けて洋はラスターハンドガンの二丁拳銃で燃料タンクを破壊して誘爆させた。

「ちょっ乗り物を捨てるとか、なにしてるの!?」
「いやーーー来ないでーーーー!」

 爆発によってエリシアたちのクリスタルは青くなる。

「戦いとは非情なんでな。こういうセコイと言われる手段でも勝利すればいいのだよ」
「はあ。じーちゃんも空挺降下好きなんだよなあ……。オレッチには真似できねー。一応、空挺訓練、未来で受けたんだけどさあ……機体突っ込ませるってどーよ」

 チョコパラソルと光の翼で機体が無くても飛ぶ事ができている洋たちはこの陣地を後にした。