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雨姫様の恋雫

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雨姫様の恋雫
雨姫様の恋雫 雨姫様の恋雫

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 森のさざめきがするだけの南の入口にいるリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)の三人組。

「良いですか? この森にはたくさんの魔物がいるんですから、十分気を付けて行くんですよ!」
「分かってるよ! 行こう、ナディム」

 ナディムの手を引いて森の中へ入っていくマーガレット。
 それを不安と心配が入り混じった状態で見送るリース。

「不思議な樹木から滴る天然の魔法薬を採りに行くって言ってましたが、大丈夫でしょうか……」



◇          ◇          ◇




「(これでナディムと恋人になれる! あぁ……地球に住んでるリースの2番目のお姉様、素敵なイベントを教えてくれてありがとうございます☆)」

 雫を探す前から恋人になれる気でいるマーガレット。
 浮かれていた為、ナディムの手を離してしまい霧で逸れてしまう。

 辺りはマーガレットただ一人。
 風のざわめきが不気味さを醸し出す。

「ナ、ナディム……ナディムどこにいるの?」

 怖くなり、ナディムの名を呼びながら走りだしていったマーガレット。
 彼女は霧の中へ消えて行った。



◇          ◇          ◇




 マーガレットと逸れたナディム。
 彼は今、想い人であるグィネヴィアと向き合っていた。

「(おかしい。俺はさっきまでマーガレットと一緒にいた。ならばこのお嬢さんは……)」
「どうしました、ナディム?」
「(ニセモノ……ならばこの秘めたる想いを伝えても)グィネヴィアのお嬢さん」
「はい?」
「俺は俺の国の姫さんが何故死んだのか分かるまで、伝えないでおこうと思っていた事がある」
「なに? 教えてちょうだい」
「俺は……グィネヴィアのお嬢さんと恋人同士になりたいって意味でグィネヴィアのお嬢さんを好きだ。好きなんだ……」
「ふふ……わたくしもナディムが好きよ」

 そっと寄り添うグィネヴィア。


ーーーぱきっ


 小さな枝が折れる音がする方をみると、悲しいような驚愕を浮かべたような表情でマーガレットが立っていた。

「マーガレット……。グィネヴィアのお嬢さん、ありがとう。すっきりしたよ、だからニセモノは消えてくれないか?」

 寄り添っていたグィネヴィアから距離を取り、頬笑みを浮かべてそう言うナディム。
 グィネヴィアは声なき声を上げて消えて行った。

「悪い、時間を取らせてしまったな。急いで天然魔法薬を探しに行くか」

 彼女に聞かれていた事に気付きながらもナディムはマーガレットを連れて歩きだす。
 先ほどまでハイテンションであったことが嘘のようにマーガレットは黙ってついて行っている。

「お、ここか」

 双樹の下まで来たマーガレットとナディム。
 小瓶を取り出し、ナディムに手渡すマーガレット。

「あ、あのね……ごめんなさい」
「ん? どうして謝るんだ」
「不思議な樹木から滴る天然の魔法薬があるなんて嘘なんだ。本当はここで好きな人と樹から滴る雫をすくうと結ばれるっていうから、あたしここにナディムをつれてきたの」
「そうだったのか……」
「だからね、ここにはグィネヴィアはいないけど、いつかナディムがグィネヴィアと一緒にすくい取れるようにこの小瓶に入れてよ」

 泣き笑いの表情でマーガレットは樹から離れる。
 それを見て、複雑な表情をするもナディムは渡された小瓶に雫を入れるのだった。
 入れられた雫が消える事はなかった……。