校長室
王子様とプールと私
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その頃、ヴァレリアたちがお茶会をしているすぐ近くのテーブルで。 「本当にフルーツがたくさん入っていますね。」 「そうね……これは人気が出そうね」 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)と御神楽 環菜(みかぐら・かんな)、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)の三人が、軽食をとっていた。陽太と環奈は、用事で来ていた海京で偶然舞花と会い、三人でプールに来ることにしたのだ。 陽太たちは、ウォータースライダーでひとしきり楽しんでから一休みをしに来ているところだった。濡れた水着を着た環奈を見て、陽太は改めてドキドキとする。普段から夫婦として共に過ごしていても、こうした水着姿を見るのはまた違った感覚だった。 「今年もお祭りに行ったり、友人の結婚式に行ったり、いろいろなところに行きましたね」 陽太は、今年になってから巡った様々なイベントを思い返す。 「舞花たちも、冒険をしてきたのよね」 「五千年の眠りについていたお姫様を助けたりしました。今頃、何をしているのでしょう」 と、舞花が呟いた瞬間、その目に、ヴァレリアの姿が映った。 「あれは……ヴァレリア様?」 舞花がヴァレリアに気付き、思わずテーブルを立ってやってきた。 「ヴァレリア様、ですか?」 「ええ、そうですわよ」 舞花の後から、陽太と環奈もやってきた。 「もしかして、今話をしていた舞花の知り合い……?」 「よろしければ、皆さんも一緒にお茶会をしましょう♪ まだまだケーキもありますよ」 「ハーブティもね。席もすぐに用意するよ」 オルフェリアとエースに誘われて、突然の事に驚いていた舞花たちも、一緒にお茶会に参加することになった。 お茶会の参加人数は、総勢12人に増えた。 「ご結婚を視野に入れてお付き合いなさっているのですね」 舞花にヴァレリアを紹介してもらった陽太が、そう問いかけた。 「ええ。そういうことになりますわね」 陽太はヴァレリアに、結婚生活の素晴らしさを話し始めた。 「愛する伴侶と2人で人生を歩んでいけるのは、本当に幸せなことです」 「こうして、幸せな時間を共有できる、ということよね」 環奈も、陽太の言葉に賛同して微笑む。ヴァレリアは陽太と環奈を交互にみて、ふっと頬を緩ませる。 「お二人は、理想の夫婦という感じがしますわ。おとぎ話には書かれていないその先に、幸せな生活があるのですね……」 ヴァレリアがうっとりとした表情になった。 陽太たち夫妻が今度はキロスと話し始めてから、ヴァレリアはリリア、オルフェリアと舞花の三人と絶賛女子会中である。というより、ヴァレリアにいたっては最早キロスとのデート中だということを忘れていそうな勢いだ。 「あなたも違う時代から来たのですね」 五千年という時代のラグを持っているヴァレリアは、未来からやってきた舞花に親近感を持ったらしい。 「わたくしも……目覚めてから、ユーフォリアお姉様がいたので一人ではなかったとはいえ、心細かったですわ。眠りにつく前の見知っていた環境が、一瞬にして変わってしまっているのですもの」 「時間を超えるというのは、不思議な感覚ですよね」 「時を超えたラブストーリー、というのも素敵です」 オルフェリアはそう言って、どこからか恋愛小説を取り出した。 「ふふ、後でこの本をお貸しするです。これで、恋を勉強しましょうね♪」 「まあ、本当ですの? わたくし、恋愛小説を読むのは大好きなんですの」 「小説だけじゃなくて、経験も大事よ?」 「……キロスもエスコート大変だね」 エースが女子会の様子を見ながら、キロスに聞いた。 「まあ、これでも今朝よりはまともにデートしてくれるようになったからいいが……」 キロスがここまで振り回されるのも、珍しいことである。 「それで、彼女の事を君はどう思ってるんだい?」 「どうって……」 「彼女の気持ちに答えるつもりはあるのかい?」 「……ヴァレリアはまだ、どういうのが好きってことなのか、学んでいる途中だ。今彼女の気持ちに答えるより、色々な恋愛模様を見て勉強して、それから選んでもらった方がいいだろ」 「なるほどね」 「……まあ、俺だけに限らず、こうして一緒に過ごしてくれる人がいてほっとしてる部分もあるな」 キロスの言葉に、エースは「ふうん?」と小さく呟いて話の先を促す。 「琥珀の眠り姫として眠りについたまま空賊だのなんだのに狙われ続けるより、現代で目覚めて色々な人と関われたら良いんじゃないかと思って、封印を解いていたからな」 「色々と考えているわけだね」 「まあ、な」 キロスはハーブティを飲み干した。その優しい味のおかげか、キロスも素直に心の中の言葉がでてきたようだった。 お茶会も、しばらくしてお開きになった。ばらばらと皆が去って行く中、リリアがメシエの腕を掴んだ。 「メシエ、ウォータスライダーで遊びたいの♪」 「……まったく、仕方ないな」 リリアに可愛くお願いをされて、メシエはウォータースライダーの方へと足を向けた。リリアはその腕を取って、一緒に歩き出す。 「キロス様、わたくしたちも行きましょう?」 ヴァレリアもリリアを真似て、キロスの腕を取って歩き始めた。