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血に染まる学園

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血に染まる学園

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かみに望む希望は狂望か

 ユーリが探し求める荒神は仮設救護室でローズと会話をしていた。

 壁際には横になって眠っている生徒たちが何人もいる。
 起きている生徒は荒神とローズのみ。

「私がなぜ耀の手を取ったのか、知りたいって?」
「あぁ。俺は話した。なら、次はあんたの番だ」
「長くなるけど、いい?」
「俺の話も長かっただろうが」
「分かったよ。じゃ、話すね。………私の両親はね、母は私を産んだと同時に、父は数年前に死んでしまったんだ。耀から話を聞いた時、
私は二人と一緒にいたい。そう思った。……ですが私には誰かを殺すのは無理です」

 そこまで言うと、ちらりと自分の足を見て【紅王】を取り出す。

「……被害者の振りをして、【紅王】で両足を切り落とし私は死にましょう。片足を切った時点で、そうですね血文字であなたの名前を書きます。そうしても構いませんか?」
「構わん。既に証拠を残している。まぁ、ワザとだがな」
「そうでしたか。話しを戻しますね。……何故自殺をするのか分からないって顔してますね? ふふっ親に会いたくないのかって所ですか? 
ははは……心配には及びません。もしかみさまを呼び出せるとしたら、私は愛する人達の一部になれるんです。そして、かみさまから命を授かるということは……ある意味でかみさまの子になれるんですよ! それって凄く素敵なことではないですか?」
「俺はかみの子になる事には興味ない。だが、両足を捧げてくれると言うなら、それを捧げる為に行動するだけだ」
「ふふ……では、ちゃんとおししさまに捧げて下さいね?」

 【紅王】を足の付け根に押し当てると、一気に片足を切り落とした。
 【紅王】の能力で出血がほとんどないと言っても過言ではないが、それでも止血しなければ待っているのは死のみである。

 流れ出た自らの血で荒神の名を書き上げたローズは、もう片方を切り落とすとその場で息を引き取った。

 荒神は何も話さずに、切り落とされたローズの両足を手に教室を後にした。



◇          ◇          ◇




 襲われている生徒を見つけたアルベール・ハールマン(あるべーる・はーるまん)は、その生徒を逃がす事に成功する。

「ちっせっかくのおししさまに捧げる為の供物が」

 淀んだ目でアルベールを睨みつける生徒。

「わたくしを代わりにするつもりでございますか? ……この四肢を司るわたくしを」
「………まさか、あなた様は!?」

 何かに気付いた生徒が後ずさる。

「わたくしに両の手、両の足を捧げる為に、動いているのでしょう? ならば、する事はひとつですよ。手に入れた四肢をわたくしに捧げなさい」
「……申し訳ありません。今はまだ……ですが、次こそは必ず手に入れてあなた様に捧げてみせます!」

 それだけ言うと生徒はアルベールの元から去って行った。

「見事だな」
「主」

 生徒とすれ違うように荒神がアルベールに声をかける。

「生徒たちの洗脳はどうなっている」
「はい。主の名通り、外部の人間の犯行と思わせる為の洗脳は滞りなく」
「そうか。なら、一端耀の所へこれを持って行ってくれ」

 そう言って荒神はローザの足と、トリアの首が入っている袋をアルベールに手渡す。

「かしこまりました。では行って参ります」

 袋を受け取ってアルベールは去って行った。

「後は胴と両手だけだな」

 今まで奪ってきた部位を思い出し確認を取ると、荒神はこの場を去ろうとしたが、復讐に駆られたユーリが荒神に襲いかかったことでそれは叶わなかった。
 さざれ石の短刀で刺されて倒れる荒神。
 パートナーのスコリアに教えてもらった『意識があるままの石像に変える方法』で何度も荒神を刺していくユーリ。

「その死よりも恐ろしい体験をその身が朽ち果てるまで一生味あわせてあげるからね?」

 ザクッ……ザクッ、笑いながら荒神を刺し続けていくユーリ。

「んーただ刺していても痛いだけで、なんにも苦しくないよね? ちょっと思考を変え、て……え?」

 今まで刺し続けていたハズの荒神の身体が突然消え失せ、思考がついていけないユーリ。
 背後から荒神が脚力強化シューズで勢いを付けたヘビーガントレットによる殴りで、ユーリの頭部は木端微塵に破壊された。

「ふん……これで胴と四肢が揃うな」

 刺され続けていたハズの荒神は、ユーリの攻撃を肉体の完成とトラッパーで石化とめった刺しを回避していたのだ。
 全て揃った荒神は、ユーリを引きずって祭壇を目指すのだった。



◇          ◇          ◇




 見回り中の時鍵とセレンフィリティは、進行方向先に死んだユーリを引きずる荒神を発見する。

「あれは……」
「あっちに言っちゃダメ。こっちへ来て」
「分かった」
「(あぁ、あの首が無い死体を奪いたい! あれがあれば後は首だけなのに!!)」

 荒神からユーリの死体を奪いたい衝動をどうにか耐え、セレンフィリティは時鍵を誰も居ない教室へ導いて行った。

「この教室なら、あの犯人には気付かれないハズよ」
「そうか。助かった、礼を言う」

 誘導されたことに気付かず礼を言う時鍵。

「ここでひとまず休憩を取らないか? ずっと歩き続けるのも肉体に負担を掛けるだけだ」
「そうだね。休憩しよっか………永遠に」

 永遠と同時にセレンフィリティはブラインドナイブスで死角から時鍵を襲う。

「……なぜ、だ。お前とも、友になれる……と」
「友? そんなの必要ないわよ。あたしはセレアナを蘇らせたいだけ。セレアナ……待ってて……かみさまに蘇らせてもらうから……」

 絶望しながら死んでいく時鍵。
 死に際、血染めの『百合の頭飾り』をセレンフィリティの服の裾にこっそり付けておいた時鍵。
 セレンフィリティはそれに気付かず、時鍵の死体を持って耀がいる祭壇を目指すのだった。