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リアクション
一章 創造の熱と戦の炎
奇しくもハイナ達の軍と契約者達の兵士の総数はほぼ同数となり、仮想空間の平野には多くの兵士達が詰めていた。
睨み合いとなりどちらが先に動くかという緊張状態の中、口火を切ったのは契約者の軍勢に味方するリネン・エルフト(りねん・えるふと)とフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)だった。
タシガン空峡の空賊の空賊である二人が駆るのは愛馬のペガサスであるが、その容姿は普通のペガサスと異なっていた。
馬面を被り、胸鎧と尻鎧に身を包んだその姿はまるで中世の軍馬を彷彿とさせる出で立ち。
そう、彼女たちは自身のパワードスーツでなく、ペガサス達のパワードスーツを開発していたのだ。
リネンは愛馬のネーベルグランツを、フェイミィはナハトグランツの身体を触ると互いの愛馬から今までにない力強さを感じ取った。
「すごい……これなら、どこまででも行けそう」
「それなら、どこまでも行ってやろうぜ! てめえら! オレたちに続け!」
フェイミィはナハトグランツを嘶かせると配下の女性兵士達は一斉に声を上げ、敵陣へと突っ込んでいく。
地面すれすれを滑空し、薙ぎ払うように敵陣を崩す。既存のペガサスの突進力を圧倒的に上回るそれは天災のように敵兵を吹き飛ばしていく。
「すげえぞグランツ! ここまで強くなるとは思ってなかったぜ!」
「フェイミィ! これはあくまでパワードスーツのテストなんだから、限界まで乗りこなすわよ!」
「ああ、それじゃあ無双モード発動だ!」
フェイミィは叫び無双モードを発動させると、フェイミィとリネンの身体を光が包み、騎乗した光の大天使が姿を現す。
大天使はその巨大な光の槍で敵を切り裂き、陣形は将棋倒しのように崩れていった。
その光景を見つめる一方でマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)、阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)、カスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)は斎賀 昌毅(さいが・まさき)が提案した電子戦強化機を作成していた。
「今後の敵がワシらと同じテクノロジーを使っていると限らん以上ジャミング能力って確実性低いのう。これなら邪魔するより味方への援護をしながら戦うのをコンセプトにした方が良さそうじゃ」
「本当はこの新型エネルギーフィールドを味方機にも展開できればいいんですけど、もとが「僚機の機晶石に干渉してエネルギーシールドを発生させる」ですから難しいでしょうね……いやこの電子戦強化機なら新型エネルギーフィールドを集中させたりちょっと離した位置に展開したり出来るかもしれません。そうなると問題はそんな高度な計算しながら戦えるかってことですよね……一人じゃ無理〜!!」
マイアは頭を抱えると、那由他は励ますように肩を叩いた。
「ナイチンゲール系譜の最大の特徴である僚期へのエネルギーシールド展開機能を再現して、計算を簡略化するプログラムも積み込んでおくのだよ。これで、計算の問題はある程度解決したのだよ」
三人は意見を交わしながらイコンを組み立て、完成したものを昌毅に渡した。
それが、数時間ほど前のこと。そして、改造を施した重火力型のイコンに身を包みながら昌毅は味方に号令を発する。
「味方が動いたぞ、続け!」
昌毅は兵士達の先頭に立ってこちらに向かってくる兵士達に向けて機晶エネルギーフィールドを展開しながら機晶ブレード搭載型ライフル二式をぶっ放す。放たれたエネルギーは一筋の閃光となり、兵士達の身体を貫いた。
「さあ、どんどん行くぜ!」
「「おおおおおおおおおおおおお!」」
兵士達が怒号のような声を上げて、一斉に敵に向かって攻めかかる。
剣の一振りが敵と味方の命を散らし、その最中で昌毅は二式を撃ち続けていると、敵陣から夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が姿を現した。
甚五郎はバロウズの鎧を装着しているため、外装がかなりの重装備となり、味方の兵に囲まれていながら凄まじい威圧感を発していた。
昌毅と甚五郎は互いに睨みを利かせながらゆっくりと距離を縮め、兵士は敵味方問わず、これから起きるであろう激しい戦闘を予見してか二人の周囲に近づこうとしなかった。
最初に声を発したのは甚五郎だった。
「対人戦闘データなんかも必要だろうし、思考ルーチンとばかり戦ってもしょうがないだろう? わしが相手をしてやる……その勇気があればな」
昌毅は口元をニイッとつり上げた。
「いいぜ、丁度張り合いが無いと思ってたところだ。テスト機なんだから限界まで引きずりまわさねぇと意味がねぇしな。……無茶させてもらうぜ!」
昌毅は叫ぶのと同時に二式を構えて甚五郎へ向けて発射する。数瞬遅れて、甚五郎も鎧に備え付けられた砲身を昌毅へ向けてぶっ放し、爆音が轟く。
二式から放たれたエネルギーは甚五郎に直撃するが分厚い装甲を貫くには至らず、甚五郎の砲撃もエネルギーフィールドに着弾することで爆炎を巻き起こすが、昌毅の身体には傷一つついていない。
「なら……最大チャージしたやつをぶち込んでやる」
「いいだろう。その兵器の威力とわしのイコンの耐久力を同時に試すチャンスというわけだ。……来い! 正面から受け止めてやる!」
甚五郎は腕を組み、仁王立ちで構えると昌毅もそれに応えるように足を踏ん張らせて二式のチャージを開始した。
「数秒のチャージは命取りだな。本番ならその間にやれることもある」
「改善点ってやつだな。……それなら、次はこいつの破壊力テストだ!」
チャージが終わるのと同時に昌毅は引き金を引き絞ると先ほどより強い閃光が銃口から発射され、踏ん張らせていた足がそのまま後ろに少しずれる。
甚五郎は腕を交差させて、それを正面から受け止める。前傾姿勢で押し戻そうとするが、甚五郎の足は後ろへずれていき、かかとが地面を抉っていく。
エネルギーは収束すると、徐々に光が薄れてやがて消えてしまう。甚五郎の腕の装甲は無残に剥がれ落ちていた。
「なるほど……まともに受けてはひとたまりも無い威力だ」
「こっちの性能実験に付き合ってくれた礼だ。あんたの性能も試してやるよ」
「そうか、ならば遠慮はしないぞ!」
二人は互いに笑みを浮かべると、再び武器を構えて至近距離への撃ち合いへと移行した。
戦場の音を聞きながら湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は完成したイコンを渡す。
「とりあえずは出来たから、データーの方、よろしくね?」
「はい、任せておいてください」
高嶋 梓(たかしま・あずさ)が返事をしながら二つのイコンを見つめる。
一つは精錬された外装が特徴的なイコン、もう一方が重火力を意識したと思われる重装甲なイコンではあったが、どこかウィンドセイバーのような見た目をしていた。
「プラヴァーの換装システムを使い、外装型追加ユニット方式に変更されたBMIを搭載したイコン。プラヴァーBMIと言ったところかな。高機動型と重火力型を用意したから、好きな方を使ってくれ」
「でしたら、私はこちらの方を……」
梓は高機動型のイコンを装備し始めた。
「それでは私は重火力型を装備しますわ」
天城 千歳(あまぎ・ちとせ)は重火力型のイコンを装備すると、大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)が外装部のパーツを千歳に渡した。
「龍一さん、これは?」
「湊川先輩の設計データを元に製造した外装型BMIユニットだよ。行動予測演算システムの自動化を行い、従来のシステムより反応速度を向上させた上で使用者に掛かる負担を軽減させてみたんだ」
「便宜上、それは高機動をA型、重火力をD型と呼称するから」
亮一がそう言っていると、
「待ってほしいであります!」
「私たちの装備も使ってくださいですわ〜!」
遅れてアルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)、ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)の二人も提案していた兵器を渡した。
梓と千歳がそちらに目をやると、アルバートは咳払いして自分が送り込んだ兵器、連装ビームキャノンの説明を始める。
「そのビームキャノンは従来のものより長射程と攻撃力に加え、十分な弾数を実現した新しい兵器です」
「私のは12連ミサイルランチャー。火力が向上したのはいいんだけど、大型のイコン向けになってしまったのが難点ですわね……」
「お二人とも、ありがとうございます。さっそくテストさせていただきますね?」
千歳は二人から送られた兵器も装備して梓と並び立ち、二人の歩兵、総勢二万人が控える中を堂々と歩いて行き、燃え広がるような戦場を見つめる。
それとほぼ時を同じくして、千歳達と真逆に位置。ハイナ軍に所属する柊 真司(ひいらぎ・しんじ)はゴスホークを身にまとい、アレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)に新装備の説明を受けていた。
「よいか真司、もう一度説明するぞ? わらわのランページ・ストライクはエネルギーを大量に消費することで機動性を強化、突撃して連続で敵に斬りかかる必殺の剣技じゃ。使いどころさえ考えれば回避と攻撃を当時に行うことができるのじゃ」
続いてアニマ・ヴァイスハイト(あにま・う゛ぁいすはいと)とヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が自分たちの提案した装備の説明をした。
「私が用意したのはアサルトシールドです。フォースフィールドを展開し外部から受けるダメージを軽減することも、力場を収束させれば威力は低いですが攻撃に使うことも出来ます」
「私はブレードビットを用意しました。無線誘導による遠隔操縦式ブレード。通信が届くレーダー圏内が全て射程範囲となっています……でも、BMインターフェイスがあることが前提条件です」
「なるほどな……」
真司が用意された装備を再確認していると、遠くから爆音が轟く。梓と千歳が突撃してきたのだ。
「誰か来たみたいだな。丁度いい、新型機の性能がどんなものか確かめるいい機会だ。ついでにパーツのデータも取ってくる」
「うむ、任せたぞ」
アレーティアに背中を押され、真司は兵士の人混みをかき分けて前へと進み、梓、千歳と対峙する。
「契約者側の人間だな? すまないが、データを集めるのに協力して貰う」
真司の言葉に梓が応える。
「いいですよ。ですけど、私たちにも取らなければいけないデータがあるので……手加減できませんよ!」
梓は機動型の特性をフルに活かして真っ直ぐに突撃すると一定の距離を保ってウィッチクラフトライフルを発射する。真司は横にスライドするようにそれを回避するとブレードビットを射出する。
総数十個のビットが宙を舞い、バラバラに動きながら梓の周囲を纏わり付きプレッシャーを与える。
「っく!」
距離を離せない梓はサンダークラップを放つと、それと同時に背後に回っていたビットがレーザーを放ち、梓の背中に着弾する。
「きゃあっ!?」
「梓さん! 援護します!」
二人の機動についてこれず、遅れてきた千歳は連装ビームキャノンを構え、複数の砲身から光の弾丸を放った。
「ちっ!」
横やりを入れられ、真司は攻勢に転じるのをやめてアサルトシールドを展開し、光の弾丸を受け止めた。
「それなら……これはどうですか!」
千歳はべた足で動きを止めている真司に向けて12連ミサイルランチャーを全弾撃ち尽くした。
「に、逃げろおおおおおおおおおおおおおおおお!」
放物線を描くミサイルを見上げて、兵士達が隊列を無視し蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うが、真司はシールドを展開していた方がダメージを抑えられると判断しジッと構えていると、一発のミサイルがシールドに着弾し連鎖するように残りのミサイルが爆発と炎に巻き込まれ、火柱が上がる。
千歳と梓の視界から真司の姿が見えなくなってしまう。
「これは……すごい威力ですね。味方を巻き込まないようにしないと……」
「しっかりとデータには残ったでしょうから、今は目の前の敵にだけ集中しましょう?」
「え……?」
千歳は意外そうな声を上げる──それと同時に、爆炎の中から爆発的な推進力で真司が現れ、油断していた千歳の懐に飛び込むと、そのまま連続で敵に斬りかかった。
「きゃあ!」
千歳は悲鳴をあげて後方に飛ぶが、咄嗟に防御した右腕と隙だらけだった胴を斬られ、鎧となったイコンから火花が飛び散る。
「やばかった……ランページ・ストライクで抜けていなかったら、どうなってたか」
真司はため息を吐く。見れば、ゴスホークの鎧もシールドを破られたのかあちこちがボロボロになっていた。
「やりますね……。でも、まだ終わりではありませんよね?」
「当然だ」
梓の問いに真司は答えると、三人は再び武器を手に取り合いたたらを踏んで切り結んだ。
この合戦に参加した人間が全て戦うことを目的としているわけではない。
中には大勢の人間が戦う様を観戦したり、シミュレーターに入ってデータだけ置いていく奴らもいる。
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が丁度そうだった。
「ボクはイコンのコア、10のセフィラと22のパスの、セフィラに見立てて機晶石を配した魔術的なユニットで通常『至高の三組』『倫理的三角形』『星幽的三角形』の位置にあたる三基一組の機晶石をセットで、三交代式に運用する事で、トリニティシステムに近い出力と、第三世代機の持続力を併せ持つようにしてみたんですけど……三人は何か、アイデアを持ってきたんですか?」
その問いに最初に答えたのはユーリカだった。
「あたしはイコンで魔術を使える様にする様な武装案を用意しましたですわ。ウィッチクラフトのように魔力を弾丸にする武器は、在りましたので……それを、もう一歩進めて
魔法を込めて撃つ事で、着弾点で魔法を発動させる弾を撃てる様にする……というコンセプトですの」
次いで、イグナとアルティアが答える。
「私とアルティアが提案したのはイコン格闘技、無尽パンチの強化発展案だ。名付けて、超空間無尽パンチと負拍子無尽パンチ、といったところか。一つは空間等を飛び越えて飛来する無尽パンチ。軌道が読み難く避け難い他、閉狭所へのピンポイントな打突が可能にし、もう一つはパンチの予備動作に存在する起点と結果の間に在る時間をマイナスにして命中率を上げたものだな」
「アルティアは、補陀落山おろしと無尽パンチの二つの合わせた技をご用意しました。無尽パンチの要領で伸ばした両腕で敵を掴み、そのまま補陀落山おろしを仕掛けて投げる技。投げた後も、腕を伸ばして掴んだままにし敵が地面等に激突する直前まで体を不規則に返し続ける事で受身をとったり、姿勢の制御を封じ、より着実なダメージへと繋ぐ。激突する物に、敵を加速させる事にも、掴み伸ばし続けた腕は貢献する。名付けて補陀落山おろし無尽返し、でございます」
近遠は頷いた。
「これが、この先役に立ってくれることを祈りましょう」
「折角だから、このまま合戦を見学したいですわ」
ユーリカは近遠の袖を引っ張った。
「そうですね。それでは、しばらく見学させてもらいましょうか?」
「……はい、ですわ!」
ユーリカが嬉しそうに合戦を見つめ近遠たちも目の前に広がる戦火を見守り続けた。
そんな戦場を見つめる近遠を横目で見つめながら富永 佐那(とみなが・さな)とソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)はこっそりとシミュレーター内に潜入していた。
「天学を休学中だけど、アイデアだけは残しておきたいのよねぇ……」
「ちなみに、どんな物を用意したんですか?」
ソフィアが訊ねると、佐那が微笑んで見せる。
「良い質問ですね。私が用意したのは重火力型の機晶ブレード搭載型ライフル二式と全く逆の発想から作ってみました」
「逆……ですか?」
「そう。つまり、白兵戦用兵装の中に射撃兵装を内蔵させてみたのです。ただ、射撃兵装を内蔵するとなると、必然的に母体となる白兵戦用兵装は大型化してしまいますから、そこで、私がウィッチクラフトバスターを搭載する母体として目を付けたのが大型超高周波ブレードです。これならジェファルコン、ストーク、そして機動型、全ての機体を底上げし得る兵装になる筈です」
ソフィアは感心したような顔をする。
「それで、武器の名前はなんていうんですか?」
「それはまだ考え中なんですよね……」
佐那が言葉に詰まるとソフィアはポンと両手を合わせた。
「それなら、マジックバスターブレード。というのはどうでしょう」
ソフィアの提案に佐那は笑顔になる。
「いいですね。では、マジックバスターブレードのデータだけを残してお暇しましょう」
佐那はデータだけを置いていくとソフィアを連れて仮想空間を後にした。
シミュレーター内には戦闘を間近で見てデータを取ろうとする意欲的な研究員も数多くいる。
そんな研究員を集めて、キャロライン・エルヴィラ・ハンター(きゃろらいん・えるう゛ぃらはんたー)は自身が提案した自律イコン支援空中機動飛行ユニットのプレゼンを行っていた。
ただ、なぜか片手にはハンバーガーを持っており、時折それをかじったりするものだから、いささか説得力や真剣みに欠けるところがあった。
「いい? 迅速な展開というのは何にも増して必要な事なの。これは、その為の装備よ」
「まずは、見て貰ったほうがいいかもね」
トーマス・ジェファーソン(とーます・じぇふぁーそん)に言われて、キャロラインは咳払いをしながらユニットの紹介をした。
「これが、自律イコン支援空中機動飛行ユニット“サイクロン”……あたしは前に居た職場の兼ね合いで、予てからイコンの移動・展開能力の向上を検討してきたの。そういう意味で既存のイコンの移動・展開能力を飛躍的に上げるイコンホースは素晴らしいスペックの反面、跨って乗らねばならなかったりと、色々面倒だったのです。そこで、イコンホースの後継機として考案するのが、このサイクロン」
そう言って、キャロラインはサイクロンを起動させると、サイクロンは飛行を開始した。
「普段は背面に装着され補助スラスターとして機能するものの、状況に応じ本体から分離させ上に乗っての移動や遊撃戦闘が可能となっています」
研究員達は感嘆の声を上げながらサイクロンに目を光らせる。
それに続いて、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)がプレゼンを始めた。
「パワードスーツや自立機動型のユニットが出てくるのに合わせて、気になることがあるの。それは輸送手段。以前は輸送トラックだっただけに、結局地上からの行軍が主となってしまってパワードスーツの能力を限定してしまった感があると思うのよね」
研究員は納得したような顔をして、ローザマリアは説明を続ける。
「そこで私が提案するのは機晶動力でローターを回す大型のヘリよ。大型飛空艇があるじゃないか、ですって? あれはダメ、全く空挺には向かないわ。そんなわけで、私はパワードスーツ輸送用新式大型ヘリを提案するわ」
「何か、ご質問はありますか?」
トーマスが言うと、研究員達が一斉に手を挙げてキャロラインは苦笑いを浮かべる。
「はいはい、順番に質疑応答しますから。それじゃあ、一番右の人からいってみましょうか」
研究員達と質疑応答を繰り返している最中、トーマスはすることもなくサイクロンを見つめながら生あくびを噛みしめた。
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