葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

今日はハロウィン2023

リアクション公開中!

今日はハロウィン2023
今日はハロウィン2023 今日はハロウィン2023

リアクション

「ほわぁ、変わったのだ。白もこちゃんもすごいのだ」
 サブレで和装魔女になった天禰 薫(あまね・かおる)はサブレで変身したちーの白もこちゃんにびっくり。
「いーたーずーら、いーたーずーら」
 本日悪戯モードの白もこちゃんには悪魔の角・羽・尻尾が出現してますます可愛くなっていた。
「キュピキュウ!(わたぼ、サブレで蝙蝠さんの羽が生えたよ!)」
 蝙蝠の羽が生えたわたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)。本日ハロウィン初体験。
「なかなか面白い物を作るものだね」
 身体中に縫い目がついたフランケンの熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)はサブレの効果に感心。
「今日はハロウィンだ。奴らは活き活きして必ずやり過ぎる。親父シメに行くぞ」
 巨熊のゾンビに変身した熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)はすでに双子の行動を読み切っていた。
「つまりトリック・オア・トリートだね。さて、何をあげようか」
 孝明はニヤリ。双子達にとっては嫌な予感しか抱けない笑み。
「キュピキュウ、ピキュピピキュ、ピーキュピキュウ(わたぼも行く、双子のお兄ちゃんたちにこの姿、見せたい)」
 わたぼちゃんは『レビテート』でパタパタと飛ぶ。
「我はフォローするのだ。白もこちゃんも手伝ってなのだ」
 薫はいつものように酷い目に遭うと思われる双子のケアに回る。
「ちー」
 白もこちゃんは鳴いてうなずくも悪戯したくてたまらない様子であった。
 とにもかくにも双子の元に急ぐ。これまでの経験から双子をすぐに発見する事が出来た。

 双子発見後。
「双子、元気そうだね」
 孝明が何気なく双子に声をかけた。
「……」
 孝明の姿に優れぬ顔色になる双子。ちょうど北都達に遭遇した後だ。
 そこに
「トリック・オア・トリートだ」
 孝高が双子の背後に登場。
「トリック・アンド・トリックじゃなくて?」
「トリートあるのか」
 これまで散々痛い目に遭わされた故、熊親子の発言を疑う双子。そもそも痛い目に遭った原因は全て双子なのだが。
「いやいや、本当にトリック・オア・トリートさ。双子、お菓子と悪戯、どっちがいい? 正直に答えなさい」
 孝明はにこやかに訊ねた。
「そりゃ、お菓子に決まってるだろ」
「そうだ。答えたんだからくれよ」
 双子は素直に答えた。そもそも悪戯が欲しい奴はいない。それも相手が熊親子ならなおさら。
「あげるさ。正直者にはどちらもね」
 孝明のにこやかさに怖いものが混じった。
 その瞬間、
「!!」
 身の危険を感じた双子は即座に逃げに転じた。
 しかし、追いかける相手が悪かった。
「俺も親父同様に両方くれてやる。喜べ」
 孝高が『分身の術』で高速移動により生み出した分身で双子を牽制しながら追いかける。ただ、追い回すだけでなくこっそり双子のポケットに力餅を押し込みトリートを贈った。
「喜べるかー」
「逃げるぞ、ヒスミ」
 追いかけられている双子はいつものように必死。捕まれば待つのは地獄と分かっているので死に物狂いである。
 双子がとある地点まで来た所で
「…………(追いかけ回すのはここまでだな)」
 孝高は引き下がり、油断させるために双子の前から姿を消した。
 足音が迫って来ない事に気付き、
「……いなくなってるぞ」
「諦めてどこかに行ったか」
 立ち止まり、そろりと振り返った双子は深い息を吐き出した。
「キスミ、まだ油断は出来ないぞ」
「あぁ、一人残ってる」
 双子は周囲をしつこいぐらい確認して孝明の所在を確認するもどこにもいない。
「いないみたいだな」
「というか、ここ誰も人がいないぞ。いつの間にこんな所に」
 双子はいつの間にか人通りのない通りにいた。孝高によって誘導されたとは気付いていない。

 突然、前方の横道から
「双子、お菓子だ」
 冷凍みかんを持った孝明が現れた。

「!!!」
 なぜお菓子がみかんなのかよりも孝明が現れた事の方が重要な双子はツッコミを入れずに静かに後退する。

 孝明は振りかぶり、
「トリック・オア・トリート」
 この言葉と共に双子の頭部目がけて本気でみかんを投げつけた。

「ヤベっ」
「死ぬぞ〜」
 自分達の狙う速球に恐怖を感じた双子は背を向け再び逃走を開始。
 しかし、双子よりもみかんの方が早く
「うごっ!!」
 ヒスミの後頭部に見事に命中し、
「に……逃げろ……」
 キスミに言葉を残し前のめりに倒れた。
「ヒスミ!!」
 キスミは倒れたヒスミの元に駆け寄ったが、
「後で戻って来るからな。それまで生きてろよ」
 すぐに逃げる事に集中。
「次は悪戯をあげよう」
 双子の小芝居が終わった所で孝明は『奈落の鉄鎖』によりキスミの足元付近に重力干渉させる。
 すると
「おわっ!!」
 ぶっ転び、普通に倒れるかと思いきや
「うわぁぁぁぁぁぁ」
 『インビジブルトラップ』によって爆発に巻き込まれ転ぶよりも惨事となった。

「おい、キスミ。生きてるか」
 先に復活したヒスミが倒れているキスミの元に駆けつけた。後頭部には立派なこぶが出来ていた。
「……あぁ」
 何とかもっそりと立ち上がった。
 そんな双子の背後から恐怖の咆哮。
「……」
 聞き覚えのある熊の声にそろりと振り返る双子。
 そして、いたのはやっぱり
「!!」
 孝高であった。今度は逃げる隙が無く、両目を閉じる事しか出来なかった。
「ハッピーハロウィンだ」
 この言葉と共に額に強烈な痛みが走った。孝高がデコピンによる悪戯をしたのだ。
「……いてぇ」
「何だよ」
 双子は目を開けるなり額や後頭部をさすったりと大忙しであった。
 もちろん
「みかんが何でトリートなんだよ」
 ヒスミが孝明に改めてツッコミを入れた。
「みかんは甘い。立派なトリートだよ。それとも西瓜やメロンが良かったのかな……しかし、投げると大きさがあるからみかんより……あぁ、冗談だよ」
 孝明は双子にとって笑えない冗談を口走った。
「!!」
 双子はいつもの怯えの目で孝明をにらんだ。本気で西瓜などを投げつけられるんじゃないかと。
「やっぱり、トリック・アンド・トリックじゃねぇか」
「ポケットをよく見ろ」
 キスミのツッコミに孝高はポケットを指さした。
「……ポケット……あっ、餅がある」
 言われるままポケットを探ると力餅が入っていた。
「それがトリートだ」
「いやいや、餅は違うだろ」
 孝高の言葉に即否定するキスミ。餅はおやつになる事もあるが、ハロウィンである今日だけは認めたくない。
「餅は嫌いか?」
 孝高はキスミのツッコミに答える事はせず、餅の好き嫌いを問う。
「嫌いじゃねぇけど」
 とキスミ。
「それなら問題無いだろ。トリック・アンド・トリートだ」
 孝高は話を終わらせた。
「……」
 何を言ってもだめだと観念した双子は大人しくなった。
 そこへ
「双子ちゃん、双子ちゃん。どうもお疲れ様なのだ。ほら、我達と一緒にチョコレートを食べて一息つこうなのだ」
 薫が安らぎのチョコレートを手に登場。両側にはわたぼちゃんと白もこちゃんがいる。
「……食べる」
 ちらりと熊親子を見た後、答えた。
 そして、近くのベンチに移動。ただし、熊親子はベンチには座らず双子の監視を続けている。
「ピキュピキュキュ(双子のお兄ちゃん、わたぼ変身したよ)」
 わたぼちゃんはぱたぱたと飛びながらくるりと回転。
「わたぼちゃん、変身した姿を二人に見せたかったのだ」
 薫がいつものようにわたぼちゃんの通訳を務める。
「体は大丈夫なのか。ロボットだろ?」
「一応、どんな人が食べても大丈夫なようにはしてるけど」
 双子は褒めるよりも先にわたぼちゃんの身を案じた。
「キュピキュウ(大丈夫だよ)」
 わたぼちゃんは元気に答えた。
「元気なんだな。それなら良かった。似合ってるじゃん」
「ハロウィンって感じだな」
 わたぼちゃんの様子から元気であると判断してから改めて褒めた。
「ピキュキュピ、ピキュキュ、ピーキュキュッ(ありがとう、双子のお兄ちゃん、トリックオアトリートだよ)」
 わたぼちゃんは褒めてくれた礼を言ってからハロウィンの挨拶をした。
「わたぼちゃん、トリック・オア・トリートと言っているのだ。それにわたぼちゃん、ハロウィン初体験なのだ」
「ふーたーご。とりーっく、おーあ、とりーいと」
 薫がわたぼちゃんの言葉を通訳した時、白もこちゃんが話しに加わった。
 改めて白もこちゃんの姿を見るやいなや
「白もこちゃんも変身したのか」
「悪戯好きの白もこちゃんにはぴったりの姿じゃん」
 双子が言えた台詞でない言葉で褒めた。
「それをお前らが言うな」
 当然孝高にツッコミを入れられた。
「……いや……なぁ?」
「……見えたんだもんな」
 双子は声小さくぼそり。怯えがちらちらしていた。
 すぐに気を取り直して
「ほら、お菓子」
「ハロウィン初体験ならとっておきをあげないと」
 双子はいそいそとお菓子を取り出した。
「まともな物だろうな」
 孝高が厳しい調子で確認を入れた。
「まともな物だって」
「甘くて美味しいただのお菓子」
 疑われた双子は口を尖らせる。しかし、呼吸するのと同じく悪戯をする彼らを簡単に信じるのは危ない。
 そこで
「それで薫とわたぼちゃんを泣かせたら承知しないよ?」
 孝明が優しく怖い笑みで対応。変な物を寄越したらしばき倒すと言葉以上に目が言い放つ。
「……ほ、本当だって」
「……少しは信じろって」
 双子は孝明の見えぬ脅しにしどろもどろになりながらも無実を訴える。
 さすがに可哀想になった薫が
「我は食べるのだ」
 と自分にくれる予定のお菓子を双子の手から取り、食べた。
 途端、
「!!」
 薫の口から何度も悲鳴が溢れる。
 ただし、出所は薫ではなく
「少しビックリしたのだ。もちろん、味は美味しいのだ」
 薫が食べるビスケットからだった。
「面白いだろ。かみ砕く度に悲鳴が出るホラーなビスケット」
 製作者であるヒスミは薫の驚いた顔に満足。
「わたぼちゃんにはこれをあげるぞ」
 キスミは包装されたチョコを差し出した。
「キュピキュ(ありがとう)」
 受け取り、中を開けると
「ピキュピキュウ、キュピキュ!(わたぼのチョコだ、すごい!)」
 わたぼちゃんをかたどったチョコが入っていた。色も愛らしさも何もかもそっくりで違うのは大きさだけ。
「白もこちゃんにはこれだ」
 ヒスミがドーナツを渡すと無表情でぴょんぴょん飛び跳ねた。喜んでいるらしい。
 そのすぐ後に
「うぉっ!?」
 背後からビーチボールが飛んできて双子の頭を直撃した。
「ああっ!? 白もこちゃん!? 悪戯しちゃだめなのだ! ふ、双子ちゃんごめんなのだ! 大丈夫なのだー!?」
 薫は慌ててボールを投げた白もこちゃんを注意したり双子の様子を伺ったりとおろおろ。
「……大丈夫だけど」
「これってトリックを貰ったって事か」
 双子は頭をさすりながらも大丈夫であった。
「ピキュッ、ピキュウピィ(わたぼも、お兄ちゃんたちにお菓子あげるね)」
 わたぼちゃんはお菓子のお礼にどでかマシュマロを双子に差し出し、『サイコキネシス』でちぎって食べさせてあげた。
「ん、おいしい」
「ありがとうな」
 マシュマロを食べた双子は満足し
「ピキュキュピキュピ(ハロウィン楽しいね)」
 わたぼちゃんは初めてのハロウィンを楽しんだ。