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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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リアクション

 イルミンスールの街。

「あの子達は楽しい事を考える子達だねぇ」
「これ以上、余計な事をしてなきゃいいけどな」
 熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)は双子が怯える笑みを浮かべ熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は嫌な予感しかない。
「もしかしたら平行世界の我達に会えるかもなのだ」
「キュピキュピキュ(会えたらいいな)」
 天禰 薫(あまね・かおる)わたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)は同化現象騒動や映像で見た平行世界の自分達に会いたいと思っていた。
「ちー」
 薫の隣にいる白もこちゃんも二人に賛同するように鳴いていた。
 とりあえず、薫達はぶらぶらと歩き始めてしばらくして平行世界の自分に再会を果たす事が出来た。

 再会後。
 薫達の再会。
「こんにちはなのだ」
 薫は丁寧お辞儀。
「これはご丁寧にどうもなのだ」
 平行世界薫も同じくお辞儀をする。胸元にはこちらの薫と同じく翡翠の守り石「誓」が輝いていた。
「こちらこそなのだ」
 また薫が上げた頭を下げた。
 いつぞやのようにお辞儀合戦をする二人。
 この後、数回続けた所でようやく落ち着き、
「今日はゆっくりと話せるのだ」
 薫はお喋りに誘う。前回出会ったのは同化現象騒ぎの中でお喋りをする余裕などなかったから。
「何を話すのだ?」
 平行世界薫は小首を傾げて話題を訊ねた。
「共通の話題なのだ。双子ちゃんの事なのだ。そちらの双子ちゃんと関わったりケアをしているのだ?」
 薫は上映会の映像を思い出し、共通の話題として双子を挙げた。
「しているのだ。いつも元気で楽しませてくれるけど最後は孝高達がお仕置きしているのだ。でも懲りないのだ。そちらも双子くんのケアをしているのだ?」
 平行世界薫はにこにこと楽しそうに話した。
「しているのだ。お互いにお疲れ様だねえ」
 薫はこくりとうなずき、互いを労った。
 その隣では白いもふもふ生物白もこちゃん同士の再会が繰り広げられていた。
「ちー」
 白もこちゃんは再会の挨拶とばかりに鳴いた。
「ちー」
 びっぐ白もこちゃんも返事を返しているかのように鳴く。
 挨拶らしきものが終わると
「ちー」
「ちー」
 無表情のまま鳴き合う二匹。まるで会話をしているかのよう。
 それが終わると白もこちゃんはとことこ、びっぐ白もこちゃんはのしのしと歩き回り、ふんふんと嗅ぎ回っていた。
 時には同化現象騒ぎの時のようにびっぐ白もこちゃんの上に白もこちゃんが乗ったりと仲良くしていた。

 再び薫達。
「白もこちゃん達、仲良しなのだ」
「楽しそうなのだ」
 薫と平行世界薫は微笑ましげに白もこちゃん達の交流の様子を見ていた。
 そして、
「そちらの白もこちゃん大きいね、こっちの白もこちゃんはちっちゃいのだ」
「ちっちゃくて可愛いのだ」
 互いの世界の白もこちゃんについて語り始めた。
「もふもふなのだ」
 平行世界薫は白もこちゃんの頭を撫で撫で。
「大きい方はふかふかで可愛いのだ」
 薫は自分の背丈よりも大きいびっぐ白もこちゃんに抱き付いて顔を埋めて堪能していた。

 孝高達の再会。
「久しぶりだな」
 まずは挨拶からと孝高が先に口を開いた。
「あぁ、相変わらずのようだな」
 平行世界孝高はちらりと薫達に視線を向けながら労い込みの挨拶。
「まぁな。しかし、天禰は可愛いよな……お前はもうアタックしたか?」
 孝高も同じく視線を薫達に向けながら何気ない事を質問した。
「俺ならわかるだろ。アタックしても気づいてもらえない事ぐらいは」
 平行世界孝高は孝高に向き直り、様々な感情が交ざった調子で答えた。俺様な孝高でありながらも悩む所はこちらと変わりないようだ。
「まあそうだがな」
 孝高は反論はしなかった。こちらでは恋人同士のはずにも関わらず薫の凄い鈍さのため苦労が絶えずという状況。つまりは平行世界の孝高が告白した未来みたいな感じだ。
「ところでお前も双子に仕置きをしているのか?」
 孝高は溜息しか出ない話題から別の話題に変えた。
「そりゃあ、迷惑をかけているからな。天禰に危害が及んだらただじゃおかないけれどな」
 平行世界孝高は自分の世界の薫に視線を注ぎながら言った。
「それもそうだな。また悪戯が飛び火したら、懲らしめてやるか」
 孝高は女子だろうと容赦無く仕置きをしていた事を思い出しニヤリ。双子が聞いたら逃げそうな事を言う。
「そうだな、お互いにな」
 双子を知る平行世界孝高はフォローなどはせず孝高にうなずくばかり。
 そして
「そうだそうだ……巨熊化してから……」
「……最もだな」
 孝高と平行世界孝高はこれまでした双子の仕置きについて盛り上がっていた。

 孝明達の再会。
「やあ俺、この間は世話になったね。景気はどう?」
 孝明はとりあえず同化現象騒ぎでの共闘の礼を言った。
「ぼちぼちだね。ところで、自分と話をするのって何だか不思議だよね」
 のんびりと答える平行世界孝明。
「そうだよなあ」
 孝明は目の前のもう一人の自分を何気なく見ながらうなずいた。
 とにもかくにも再会の挨拶を交わした後、
「そうそう、君んとこの双子ってどんな感じなんだい? どう言う風におしおきしちゃう?」
 孝明が共通の話題として双子を挙げた。
「色々仕掛けるかなあ。あの二人にちょっかいかけるのって楽しいよね、わざとだけど」
 女子でも容赦の無い平行世界孝明は双子姉妹が聞いたら文句を言いそうな事をさらりと言う。
「そうそう、反応が毎回面白くて飽きなくて。ほんと若いっていいよねえ、からかいがいがあってさ」
 孝明は同意見とばかり口元を歪めながら言う。
「冗談なのにすぐに怯えたりとか。本当に素直だよねぇ」
 孝明は冗談とは思えない冗談で双子を怯えさせている事を話したり
「あぁ、それに懲りない」
 平行世界孝明が事項を追加。何度仕置きしても懲りないタフさはさすがと言っているかのように。
 これ以外にも二人はこれまでの双子の仕置き遍歴を語り合っていた。双子がこの場にいれば即凍り付いていた事だろう。

 わたぼちゃん達の再会。
「ピキュピ(久しぶりだね)」
「本当に久しぶり」
 わたぼちゃんと首に赤いリボンを付けた平行世界わたぼちゃんは再会の挨拶を交わした。
 そして
「キュピゥピ(今日はいっぱいお話しようね、わたぼ同士で)」
「しようね。今日はたくさん時間があるからね」
 わたぼちゃん達はぴったりと寄り添ってお喋りを始める。片方がピキュウ語に関わらずなぜだかスムーズに通じているのは同じわたぼちゃんだからだろう。
「ピキュピキュピキュピキュピ(双子のお兄ちゃん、お姉ちゃんと遊ぶのって楽しいよね)」
「うん、楽しいね。それにすごいよね。面白い物たくさん作ったり出来るんだよ」
 わたぼちゃんは共通の話題である双子の話をした。これまでの事を思い出しながら。
「ピキュピキュピキュピ(平行世界のわたぼに会えたから双子のお兄ちゃんとお姉ちゃんにも会えたらいいよね)」
「わたぼもこの世界の双子のお姉ちゃんに会いたい。それで挨拶が出来たら嬉しいな」
 話している内にふと会いたくなったわたぼちゃん達は顔を見合わせて笑い合っていた。

 それぞれのお喋りが一段落した時、
「綺麗な蝶なのだ」
「弾けて花火になったのだ」
 薫と平行世界薫は空を飛び行き時には弾け様々な物を振らすカラフルな蝶に釘付けとなった。
「……おい、嫌な予感がするんだが」
「丁度、俺も感じた」
 蝶を見た瞬間、孝高と平行世界孝高は嫌な予感に呆れの溜息を同時に吐き出した。
「これは間違い無くあの子達だねぇ」
「……相も変わらず落ち着きがないみたいだね」
 孝明と平行世界孝明は苦笑気味に蝶を見ていた。平行世界の方は多少お父さんな笑みだったり。
「ピキュピキュピ(きれいな蝶々だね。双子のお兄ちゃん達すごい)」
「こっちに来るよ」
 わたぼちゃんと赤リボンのわたぼちちゃんは楽しそうに蝶を見ている。
 ひらりと一匹の蝶がわたぼちゃんを通り過ぎ、薫達の前へ。
「あいつらのは危険だ」
 平行世界孝高が速やかに薫達の安全を守るため妖刀白檀で斬り落とした。
 その判断は正しくあちこちから蝶の爆発に遭遇した人々の悲鳴が上がっていた。
「……素敵な演出をしてくれたね」
 言葉とは裏腹に怖い笑みを湛える孝明。
 そんな時、
「あいつはもういないな」
「何なんだ。オレ達の行く所に現れまくって」
 大慌ての双子兄弟。
「でも蝶は成功だよ」
「ヒスナ達のやり過ぎがなければね」
 満足げな双子姉妹。
 神出鬼没の仕置き人達に追いかけ回され中の双子達が現れた。

「ピキュピキュピピキュピ(双子のお兄ちゃん、お姉ちゃん、こんにちは)」
「こんにちは」
 わたぼちゃん達は同時に双子に挨拶。
 気付いた双子は挨拶を返した。
「上映会のまんまじゃん」
 ヒスミは瓜二つぶりに驚き、
「可愛い鳴き声だね」
 キスナはわたぼちゃんのピキュウ語に和んでいた。
 一方、
「おわぁっ」
 キスミとヒスナはびっぐ白もこちゃんにのしかかられ白もこちゃんに頭を踏み踏みされ悪戯を受けていた。
 その後、双子達は怖い熊親子がいるため逃亡を図ろうとするが、蝶が双子達の仕業と確定した熊親子は逃がさない。
 孝高達はダブル巨熊になり
「本当に懲りないな」
「今日はこちらもサービスだ。二倍で相手をしてやる」
 『麒麟走り』でわたぼちゃん達が双子達とやり取りをしている間に孝明達が設置した『インビジブルトラップ』がある所まで追い回し
「楽しく過ごせたお礼をさせて貰うよ」
「世界が違うからいつもより力が入り過ぎたかな」
 孝明とわざとらしい事を言う平行世界孝明は爆発させた。
 最後は魔術師殺しの短剣片手に孝明が双子達の肝を凍り付かせる笑みを浮かべながらいつものように冗談か本気か分からぬ事を発し双子達を硬直させた。その後、双子達は薫のケアを受けるなり再び逃亡した。薫達はその後も平行世界の自分達と楽しく過ごした。