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リアクション
ずっと仲良しっ! 錬金術部っ!!
色紙の上のほうに大きな文字でそう書かれている。
真ん中には全員でピースをした女子生徒たちの集合写真があって。
赤、青、黄色、ピンクなどの丸い字の寄せ書きで埋まっていた。
「なーるほど。ここは錬金術部の研究所みたいやな。ドグマ教の連中、まったくひどいことしてくれるで」
手に取った色紙を見ると大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は言った。
部屋の窓は割れ、床にはガラスの破片が辺りに散らばり、壁には亀裂が入っている。
どうやら契約者たちが助けにくるより早くドグマ教の襲撃にあったようだ。
敵は人探しをしているようだが、そのやり方は乱暴だった。
「それにしても普通、色紙ってのは後輩から先輩に渡すもんちゃうの?」
「面白いじゃないですか。先輩たちは後輩を喜ばせたかったのですよ、きっと」
泰輔の隣のフランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)が言った。
「なるほどな。なかなか粋なことするでこの卒業生」
泰輔は辺りを見回す。
「――よし、ここにはもう誰もいないな。次いくで!みんな。敵を倒すことに熱中しすぎたらあかんで、気ぃつけていこうや」
救出メンバーを率いていた泰輔は研究所を後にしようと歩き出した。
「待って下さい!」
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が2人を止めた。
「あそこから力を感じます」
瓦礫が高く積み上がった部屋の角を指差した。
「これは魔力ですね……誰か2人……瓦礫の中にいます」
「なんですって!だとしたら早く助けないと。ここは僕に任せてください」
フランツ・シューベルトは瓦礫をどかす。重そうな瓦礫も彼は難なく退かしていく。
「よいしょっと!ふう……それにしても『リリー』ね。百合のようなべっぴんさんなのでしょうか……おや?」
瓦礫を退かし終えたフランツは目を丸くした。
「なんや。何もないやないか」
泰輔の言うとおり。薄汚れた部屋の角だけしかない。
「俺の目は誤魔化せませんよ」
唯斗が何もない空間を掴むと勢い欲引き剥がす、するとそこに2人の女の子がいた。
1人は見た目は中学生ぐらいでショートヘアの女の子だ。首にはネックレスが掛けられている。
ネックレスには2つのリングが1つに結びついる。
その1つのリングに LILY PELLADONNA の文字が刻まれていた。
「……リリーのネックレスはたしかペアのネックレス。ということはあなたがキロスの言っていた渡辺優理。リリーの契約相手ですね」
布を手に握った唯斗は言った。
姿が見えなかったのは錬金術で作られた透明のマントを羽織っていたからだった。
「瓦礫に埋もれて動けなくなったというより、隠れていたみたいですね」
レイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が言うと泰輔が声を上げた。
「あー!色紙の姉ちゃんやん」
優理はリリーを抱きしめる。
「……この子は渡さないわ」
眠っていたリリーの目が薄っすらと開いた。
「リリー!良かった大丈夫」
「ユーリ……ここは研究室?」
「お久しぶりですねリリー」
「あら?あなたは……どこかで……」
唯斗の顔を見るとリリーは優理の腕から逃げ出し研究所の外へ行ってしまった。
驚いた契約者は慌てて後を追っていく。
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「ふふふっ、見事に掛かりましたね」
唯斗はリリーを見て笑った。彼女は『不可視の封斬糸』に捕まって動けなくなっていたのだ。
「っく、私としたことがぁ……う、動けない……なんなのかしらぁ?これは」
「不可視の封斬糸です。奈落人を捕まえるための道具ですよ。研究所に入る前からどことなくリリーの気配を感じ取っていたので予め設置しておいたのです」
「どうしたのリリー!いきなり逃げ出すなんて!」
優理は声を上げると、リリーはもがきながら答えた。
「……っく、あらあら。だーれに向かって口を聞いてるのかしらぁ?私はドグマ教の幹部なのよ。馴れ馴れしい口を聞かないでちょうだい」
「気を失っていたリリーは知らないかもしれませんが、そのドグマ教の連中がこのイルミンスール襲っています。リリーを探し回っているようですね」
「私を……探して?」
「危ない!」
気がついたレイチェルがソルジャーペステに発砲するが攻撃は盾にガードされた。
「あれは――あのときの敵です!」