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リアクション
★ ★ ★
「はーい、アイスクリームおまちどおさまー」
イルミンスール大浴場のカフェテラス席にいる小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の所へ、たっゆんをちょっと窮屈そうに押し込めた水着を着たパフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)が、注文のアイスクリームを持っていきました。小鳥遊美羽たちは、浴場用のタオルを身体に巻いています。
「これは、あちらのテーブルへね」
「はーい」
妹たちと比べると、極端に布面積の少ない水着を着たトレーネ・ディオニウス(とれーね・でぃおにうす)が、ゴチメイたちが座っているテーブルをさして、アイスコーヒーなどの載ったトレイをシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)に差し出します。シェリエ・ディオニウスの水着は、可愛らしいフリルがふんだんについた黄色い水着です。
どうやら、今日はカフェ・ディオニウスを出張させてきているようです。近年、ライバル店も増えましたから、営業は大変のようですね。
小鳥遊美羽がのんびりとアイスクリームをなめていると、その側を頭にパンツを被ったPモヒカン族の姐さんがそそくさと通りすぎていきました。もちろん、由緒正しいPモヒカン族のしきたりに則って、すっぽんぽんにパンツーハットだけという出で立ちです。
「あれ、あれは美羽の勝負パンツじゃ……」
Pモヒカン族が被っていた黒のショーツを見て、コハク・ソーロッドが言いました。
「えっ、まさか……」
慌てて、小鳥遊美羽が脱衣場に戻って確認してきます。
「いやだ、勝負パンツですって」
「なんで分かるのかなあ」
「まあまあ」
コハク・ソーロッドをジト目で凝視するシェリエ・ディオニウスとパフューム・ディオニウスを、トレーネ・ディオニウスがまあまあとなだめました。既婚者ですから、奥さんのパンツぐらい知っていても……。
「変態よね」
「変態だあ……」
シェリエ・ディオニウスとパフューム・ディオニウスの評価は、既婚未婚関係ないようでした。
「ちょっと待って。俺は……」
「変態さんなのなのー!? 変態さんはどこー、退治しちゃうのー」
慌てて弁明しようとするコハク・ソーロッドの前に、変態という言葉に反応した及川翠が現れました。
「俺じゃない、変態はPモヒカン族!」
慌てて及川翠の視線を否定するコハク・ソーロッドでした。
「やっぱり盗られてる。コハク、早く取り返してきて!」
脱衣場の方から、小鳥遊美羽の声が聞こえてきました。
「よし、任せろ」
とにかくこの場にいる方が危険だと、コハク・ソーロッドは慌ててPモヒカン族を追いかけていきました。
「わーい、変態だー」
「わーい、変態飛行なのじゃー」
何やら、少し先の方で、Pモヒカン族はビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)とザンスカールの森の精 ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)を伴って、飛行機の真似をして走り回っていました。
「さすがだ。よし、記念に、このパンツーハットをやろう」
「わーい」
ビュリ・ピュリティアを気に入ったらしいPモヒカン族が、彼女の頭に小鳥遊美羽のパンツを被せようとしました。
「ちょっと待った! それは俺のだ!」
その一瞬の隙を突いて、コハク・ソーロッドがパンツを取り返します。
「やった!」
小鳥遊美羽のパンツをグッと握りしめて、コハク・ソーロッドが言いました。
「変態だー」
「変態だわ」
「変態だよね」
みんなの冷たい視線が、コハク・ソーロッドに集中しました。
「ふ、夫婦だから、奥さんのパンツ握りしめても、変態なんかじゃない……」
「何、力説しているのよ!」
顔を真っ赤にした小鳥遊美羽が、コハク・ソーロッドに跳び蹴りを浴びせました。
「そうなんだもん、変態さんはあなたなんだもん!」
変態ハンター及川翠が、Pモヒカン族にキックを浴びせました。
「ああ、みんなのパンツーハットが……」
思わず、Pモヒカン族が、脱衣場から盗んできたゴチメイたちやら誰やらのパンツを宙に撒き散らしました。そのまま、ざんすかに激突して、気絶したまま流れるお風呂を流されていきます。
「本当に変態ではないのか?」
舞い散った色とりどりのパンツに埋もれたコハク・ソーロッドを見て、ビュリ・ピュリティアがつぶやきました。
「こ、コハクは、変態じゃないもん」
そう言い返すと、小鳥遊美羽は、パンツまみれになったコハク・ソーロッドを引きずって逃げていきました。
★ ★ ★
「なんだか、騒がしいですねえ」
脱衣所にむかってすっ飛んでいく小鳥遊美羽を見て、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)がつぶやきました。
引きずられていくコハク・ソーロッドから飛び散った布が、フワフワとアラザルク・ミトゥナの頭の上に降ってきました。
「それは!」
アルディミアク・ミトゥナが、アラザルク・ミトゥナの頭の上に載った白いレースのショーツを、電光石火で奪い取ります。
「はうっ……」
「おっと、危ない」
椅子に座ったまま、押されて後ろに倒れようとしたアラザルク・ミトゥナを、ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が途中で支えました。
その眼前に、青いシルクのショーツがひらひらと舞い落ちてきます。
「これは……。どうやら、不届き者がいるようですね」
自分のショーツを拾いあげると、ペコ・フラワリーがつかつかと脱衣所にむかいました。
「あらまあ、みんなのパンツも……。これは、お仕置きが必要ですねえ」
その後に、チャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)が続きます。
しばらくして、女子脱衣場の方から、コハク・ソーロッドの悲鳴が聞こえてきました。小鳥遊美羽がいるので、パンツ泥棒にはされないはずですが、もしかして、何か見てはいけない物でも見てしまったのでしょうか。そもそも、小鳥遊美羽によって、女子脱衣場へ連れていかれたときから悲劇が始まっているような気もしますが。
「みんなうるさいなあ。ラジオでも聞くかあ」
男の悲鳴なんて聞いても面白くないと、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)がラジオをつけました。ちょうど、ミッドナイトシャンバラがやっています。
「そういや、もう結構遅い時間だっけ。ここにいると、時間の感覚が鈍るよねえ」
「まあ、暖かいからな。時間を忘れてくつろげる」
側にあるビーチチェアーに寝転びながら、人間体のジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)が言いました。日光浴よろしく、入浴用タオルを下に敷いて、お尻と尻尾を顕わにしてくつろいでいます。ちなみに、他のゴチメイたちも、ここではちゃんとタオルを巻いていますが、ココ・カンパーニュとチャイ・セイロンは、たっゆんのせいかちょっと幅が足りなくて、片側がスリットのようにあいてしまっています。おかげで、椅子に座って脚を組んでいるココ・カンパーニュは、発達した太腿が丸見えです。
「そういえば、リンはどこ行ったんだ?」
周囲を見回して、ココ・カンパーニュが聞きました。マサラ・アッサムは新婚旅行で不在ですが、リン・ダージ(りん・だーじ)はここへ一緒に来ていたはずです。
「さっき、ナンパにゴーとか言って、どこかへ走っていったはずだが」
「何もそんなに張り合わなくても。変な男の人に引っ掛かってなければいいけれど」
ジャワ・ディンブラの言葉に、アルディミアク・ミトゥナがちょっと心配そうに言いました。
「まあ、リンなら大丈夫だろう? どちらかというと、引っ掛けられた男の方が心配だけど……」
ココ・カンパーニュがそう言ったときです。ラジオから、何やら聞き慣れた声が聞こえてきました。
『ココさん、愛してます! 結婚しましょう!!』
「えっ……」
突然の予想外の風森巽の絶叫に、ココ・カンパーニュが飲んでいたコーヒーを思いっきり吹き出しました。見れば、珍しく耳まで真っ赤です。
「あら、大胆ですね」
「ふっ、若いな」
アルディミアク・ミトゥナとアラザルク・ミトゥナが、なんだか達観したように言いました。
「なんだ? 正式につがいを作るのか? それで、産卵はいつだ?」
足をパタパタさせて、ジャワ・ディンブラが聞きました。でも、ドラゴンじゃないので、卵は産まないと思います。
「え、えっと、そ、それはね……」
両手の人差し指をツンツンとつきあわせながら、ココ・カンパーニュがもじもじしながら小声でつぶやきました。
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