葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

終りゆく世界を、あなたと共に

リアクション公開中!

終りゆく世界を、あなたと共に
終りゆく世界を、あなたと共に 終りゆく世界を、あなたと共に

リアクション

「――泰輔、どこだ、泰輔!」
「ここや。ここに、おるよ。……顕仁」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は、自分を求める讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)の声に優しく手を伸ばす。
 怖くない……怖くないよと。
(死が――恐ろしい?)
 泰輔の手に、言葉に顕仁はふと自身を取り戻す。
 そして理解する。
 否だ、と。
 恐ろしいのは死ではない。
 再び独りになること。
 泰輔を失ってしまうこと。
 世界もろとも泰輔も自身も滅びてしまうのであれば、『独り』にならなくて済むのかもしれない。
 しかし、泰輔と2人共に存在した時間、かけがえのない記憶。
 それすらも、世界と共に消滅してしまうのであるならば――
 悲しい。
 切ない。
 普段の顕仁であれば考えられない感情が、日頃の強気や傲慢さを忘れさせる。
 素直な感情を泰輔にぶつける。
 忘れないように、消えないように、顕仁は刻み付ける。
 記憶に、体に。
 自身が愛した泰輔を、泰輔が愛した自身を、この世界に留めておこうと足掻くかのように。
 永遠に――

「――僕はここにおるよ」
 そして泰輔は、顕仁の全てを受け入れた。
「大丈夫、一緒におるから、大丈夫」
 僕は、顕仁が大切で、顕仁も僕のことが好きなんやろ?
「――それでも、不思議やなぁ」
 泰輔の顔に、場違いな程穏やかな笑みが浮かぶ。
 殺伐とした時代を生きてきていた顕仁の方が、生死に対してそう超然としてるわけでもないという事実に驚いて。
 今になって、そんな彼の新たな一面を見ることができて嬉しくて。
 そして顕仁の答えは、泰輔をもっと笑顔にする。
『たいせつな人があるから……』
 ――ああ、おおきに。
 僕は、一緒におるよ。

「――あ」
 そして泰輔は目を覚ます。
 隣にいる、大切な人とともに。