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ワンダフル・ティーパーティー

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【4章】終わらない茶会を、君と。


 夕暮れ時。フラワーリングの一角、茶会の会場となっている広場からは少し離れた場所で、何やら野太い声が響く。
「ありあっしたー!」
 数人の妖精たちに混じった大の男五人が、まだ幼い辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)に頭を下げている様子はある意味異様な光景だった。
 刹那は今日もいつもの通り護身術(暗殺術)教師として妖精たちに手ほどきをしていたのだが、ついでに彼ら――元チンピラの五人衆にも戦闘法を教えることにしたのだ。集落には自警団や協力的な契約者たちがいるとはいえ、いざとなった時に戦力が多くて困ることはない。
「いやぁー……姐さんの指導、結構キツいっす」
 戦闘経験があることを踏まえ、チンピラたちには多少本格的な戦術を叩きこんだ。そのため、指導方がいささか厳しくなるのは致し方あるまい。
「ねぇねぇ、せっちゃん先生はお茶会出ないの?」
 妖精たちは授業が終わると早速茶会の話で盛り上がり、キラキラとした瞳で刹那の顔を覗き込んでくる。
 そういった場が苦手なわけではないが、暗殺者という仕事柄あまり行くことのない刹那が考えあぐねていると、妖精たちは「せっちゃん先生も行こうよー!」と彼女の周りを跳ねまわる。広場から漂ってくる甘い香りに浮き立っている彼女らの様子を見ていると、刹那は不思議と行っても良いかという気持ちになり、気付けばチンピラたちにも声をかけていた。
「暇ならぬしらも一緒に出ぬか?」
「マジっすか!? 姐さんの誘いなら喜んで!」
 そういうわけで、その少し不思議な集団は連れだって広場まで赴くこととなったのだ。
「あ、せっちゃーん! こっち、こっち!」
 刹那たちが広場に並べられた長椅子の合間を縫って空席を探していると、手を振って居場所を示しているアルミナとイブの姿があった。幸いなことに二人の対面に席を確保できた刹那は、授業の疲れを温かな紅茶で癒す。
 そのすぐ後ろでは、華苺と雛菊が補充用のお菓子やティーポットを持って各テーブルの間を行ったり来たりしている。忙しなく働く二人の様子を見かねたサーラが華苺の肩を抑え、
「ちょっと休んでみんなと楽しみなさい。あとは私が受けもってあげるから」
とウインクして給仕役を代わった。
「サーラさん……ありがとうです」
 サーラの厚意に甘えることにした華苺はしばらく雛菊や他の妖精たちと会話を楽しんでいたが、やはり落ち着かない気持ちになって、ほとんど経たないうちに雛菊と共にサーラの後を追っていた。
「ゆっくりすれば良いのに」
 サーラにはそう言って笑われたが、華苺はこれはこれで楽しいからと充実した笑顔を返す。
 芳しいお茶の香りに甘い菓子。友人たちとの会話に花を咲かせる人々の笑い声が、広場には絶えず溢れていた。
 その明るい輪の中から離れたカイは、先刻から森へと続く道の前で一人立ち尽くしている。
「族長たち、遅いなぁ……」
 大丈夫だと分かっていても、夕日が傾いていくにつれて不安が募る。森の中はもうだいぶ暗くなってきたし、肌寒さも増した。
 人を待っている時間というのは、何故こうも長く感じられるのだろう。
 もういっそ自分も洞窟へ向かおうか――そうカイが考え始めたその時、森の奥からぱたぱたという足音が聞こえてくる。
「カイー!」
 手を振りながらこちらへ駆けて来る少女は、目立つオレンジ色のワンピースをなびかせて満面の笑みを浮かべている。
 リトはそのままの速度で走り寄り、カイの目の前でようやく立ち止まるとこれまでになく明るい声で言った。

「ただいま!」


担当マスターより

▼担当マスター

黒留 翔

▼マスターコメント

 黒留 翔です。
 お待たせして申し訳ございません。『ワンダフル・ティーパーティ』に参加して頂いた皆様、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。今回のシナリオでフラワーリングにおけるお話は最後となりますが、ここで育まれた友情や絆は以後も連綿と続いていくものと思います。

 一連のストーリーは途中でかなりの短縮化を図ったこともあり、ご参加いただいた方の中には不自然さを感じられる場面もあったかも知れません。これまでのマスタリングにおいてその他至らない点も多々あったとは存じますが、毎回素敵なアクションや温かいお言葉等いただきまして、それら全てがリアクション作成時の励みとなりました。
 
 最後となりますが、プレイヤーの皆様には再度厚く御礼申し上げ、幕引きとさせていただきます。
 もしもまた別の場所でご縁がありましたら、その時は何卒よろしくお願いいたします。