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【ダークサイズ】俺達のニルヴァーナ捜索隊

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【ダークサイズ】俺達のニルヴァーナ捜索隊

リアクション

 尋常でないイレイザーの雄叫びを、ちょうど到着すると共に聞いたダイソウ達。

(うわーい。怒ってるよー)

 危機を感じているのか喜んでいるのか、フレイムたんは妙なテンションでくるくる回る。

「やはり、始まっておったか。皆、大丈夫か」

 ダイソウが緊張感高まる皆に声をかける。
 ダークサイズ本体の合流で、俄然元気を取り戻す。

「おおー! やっと来てくれたかダイダル卿!」
「お待ちしてましたアルテミスさま!」
「……」

 戦力として最も期待できるダイダル卿とアルテミスに駆け寄る一同。
 ダイソウは一人ぽつんと取り残される。

「アルテミス! 早速だがおまえの力が必要だ」

 ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が巨体を揺らしてアルテミスのもとへ。

「状況はどうなのだ?」
「さすがイレイザーだな。半端じゃねえぜ。氷属性のスキルも効いてんだか効いてねえんだか。総力戦なだけに、長引けばとてもじゃねえが全員もたねえ。イコン数十機分の強さってのもうなずける」
「……なるほど。我の魔力を使いたいと?」
「察しがいいぜ。とびきりのやつを頼む。騎士って柄じゃねえが、時間がかかるなら防御は任せろ」
「仕方あるまい、試してみるか。ラピュマルのバリアよりも濃く強力なものを練らねば。ジャジラッド、当然ご飯の用意はいいのだろうな?」

 大量の魔力を使う際には猛烈なカロリー消費が避けられないアルテミス。
 それを見越したサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)が、

「お任せください。調理のタイムロスは今回危険ですわ。味は大したことございませんが、この【仙人の豆】があれば、あなたの魔力消費にも充分耐えうるかと。さらに……」

 サルガタナスは続いて【不可思議な箱】を取り出し、

「事前にこれに、『この遺跡に眠っているモノで、イレイザーに通用する武器になりそうなものは?』と質問を入れておきました。そろそろヒントが書かれているはずですわ」
「おお、手際がよいな」

 サルガタナスは表情に出さないが自慢げに紙を取り出す。
 そこには、

『あー、そういうのあったら、ニルヴァーナ人がイレイザー倒してますよね。そもそも、ニルヴァーナの武器はニルヴァーナ人でないと使えないですしねー』

 と、妙に砕けた口調で書かれている。

「……まあ、そう言われればそうだな……」
「……心配ご無用。こんなこともあろうかと、そのものズバリ『イレイザーを倒す方法は?』という紙も入れておきましたわ」
「うむ! それがよい。なぜそれを早く言わぬ」
「俗に言う前座というものですわ」

 サルガタナスは2枚目の紙を取り出す。

『説明しよう! 『下呂』『別府』『草津』の3体のモンスターを倒すのだ! さすればイレイザーを囲う結界が解ける! それでイレイザーにダメージを与えられるようになるので、みんなでがんばるのだ!』

 と、今度はドヤ顔気味に書かれている。

『知っておるわ!』

 二人で紙にツッコみ、サルガタナスがぺしっと紙を叩きつける。
 ヒントと言うより答えに近い回答をくれた【不可思議な箱】だが、全然役に立ってない。
 アルテミスは箱の事はなかったことにして【仙人の豆】を口に含み、

「ジャジラッド、見事我の盾となってみせよ!」

 と、魔力の蓄積に入った。
 一方で、取り残された形のダイソウ。
 皆が自分で考えて動いたり、チームを組んだりしているのを見て、ダメな管理職のようにとりあえず、

「うむ。うむ」

 とか言って、指さし頷いてみたりする。
 結和と共にエメリヤンに乗ったままなので、騎乗したままうろつくが、現時点でまるで邪魔である。
 そこにようやくダイソウに話しかける者が。
 七篠 類(ななしの・たぐい)である。

「ふはははは! ようやくたどり着いたようだなダイソウトウ!」
「む、類か。サンフラちゃんをほったらかしにしてどこに行ったかと思えば」
「そうだぜ類! てめーこっちは大変だったんだぜ!」

 向日葵の隣でゲブーが文句を言う。
 類はふははと笑いながらぼろ布を古代ローマ人みたいに纏っている向日葵を見、

「ふは、あれ! 何があったんだサンフラワー!?」
「ふんだ、教えてやんないもん!」
「うらやまイベントが起こったらしいな……いやそんなことよりダイソウトウ! お前の永遠のライバル(自称)のこの俺が、何故お前の前から姿を消し、ここにいたか分かるか!」

 類がダイソウを指さす。
 ダイソウは軍帽の中から、自信ありげに目をキラリと光らせ、

「うむ、分からぬ!」
「え、あ、うん、そうだろうな。ふふふふ。お前を倒すには、並の方法では通用しないことは今までの戦いでよくわかった。そこで俺は考えたのだ。それならば、並以上の方法で襲えば良いと!」
「なるほど。我々ダークサイズを過小評価はしないと。で、その方法とは」
「ふはははは! 恐れるがいい、おののくがいい! 来い、イレイザーたん!」
「い、イレイザーたん!?」

 ダイソウだけでなく向日葵たちも驚く。

「くくくく。チーム・サンフラワーをこっそり抜け、フレイムたんとはぁはぁするのも我慢して、俺はイレイザーたんとの対話を続けていたのだ!」
「何っ。お前はイレイザーを味方につけたというのか!」
「今日こそがダークサイズの最期だ! そいでもってフレイムたんと心ゆくまではぁはぁするのだ! ゆくぞ!」

 類が【女王のソードブレイカー】を構える。
 ダイソウも身構えるが、

「ところで類よ」
「どうしたダイソウトウ? 命乞いか?」
「お前のイレイザーたんはずいぶん忙しいようだが……」
「え?」

 類が振り返ると、怒りに暴れるイレイザーの姿が。
 こんなやりとりをしている中でも、戦闘は続いているのだ。
 怒りで本気度が増しているイレイザーに、徐々にタンポポ隊が押されているのが見える。

「イレイザーたん! そっちはいいからこっちに来てくれよお!」

 類はイレイザーの傍まで走り、

「さっきあんなにおしゃべりしたじゃないか、結界越しに! 俺達はもう友達だろう?」

 と類が言った直後、イレイザーの触手が、

ぺしっ

 類を壁に弾き飛ばした。

「あっ、ツッコんだ!」
「あのイレイザー、強い上に空気まで読めるのか……」

 永谷が汗をぬぐう。
 向日葵も類の心意気を買い、

「類くん……君の死は無駄にしないよ……」
「し……死んでねえっす……」

 がれきに埋もれながら、類がかろうじて震える手を上げる。
 ダイソウは類の行動を分析し、

「ううむ……友達と言って殴られた。友達なのに蹴られるのはボール……ボールは友達と言いたかったのか?」
「違うと思いますよ」

 クロスがダイソウをぴこんと叩いた。