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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

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マレーナさんと僕(2回目/全3回)

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7.増改築をしよう その1

 夜露死苦荘は、パラ実生達の下宿である。
 そうでなくとも、若い学生達は血の気の多い。
 そんな下宿生達にとって、必要不可欠なもの。
 それは「愛」――ではなく、適切な診療だ。
 
 それでは、医療スペースの結果。

 ■

 その噂は、待ち望む下宿生の為に、開設前から下宿中を席巻していた。
 そのため、ことに主格であるラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)の下へは、連日患者達が押し掛けていた。
「まったくよぉ。
 はいはい! じゃ、俺も必要とされていることだし。
 ひと肌脱ぐぜ! なぁ、パラケルスス」
 予定では、パラケルスス・ボムバストゥス(ぱらけるすす・ぼむばすとぅす)も主治医として常駐するのだ。
 そうして、ラルクは彼と共にオーナーからの許可を取り付けると、「医療スペース」に着工したのであった。
「さて、一丁増築すっかな!」
 場所を選定する。
「どーせなら、比較的皆が行きやすい場所がいいよな?」
 程なくして、玄関脇のモヒカン桜の近くに建てることにした。
 理由は、下宿生達の中には「元カツアゲ隊」、「首狩族」の面々も含まれるため、夜露死苦荘を含めた各グループとの間を取った形だ。
「それに、玄関近くだったら、誰もが分かりやすいよな?」
 あとは目的を果たすまで。
 
「じゃ、俺は現場監督でもするかねぇ?」
 パラケルススは月詠 司(つくよみ・つかさ)を伴い、現場指揮を買って出る。
「ついでに、司に水脈でも掘り当てさせるさ。
 下宿生達も増えることだし。
 水の確保は最優先課題だろう?」
「わりぃな、任せるぜ! 相棒!」
 そうしてラルクは空京から業者を手配した後、自身は医薬品や備品の確保に追われるのであった。
「医薬品は大学に頼もう。
 研究に必要だ! とか言えば、あの大学の事だ。
 貸しだすことくらい訳ないだろう。
 自前で必要なのは、ベッドとあればここのブレーカーが落ちない程度の医療器具くらいかな?」
 
 ラルクが出向いている間、パラケルススは現場監督に専念する。
 その傍らで、司は「水不足解消」の使者として、水脈探しに専念していた。
 格安の自動車のトランク部から、しこたま積んだ日曜大工セットと工事用ドリルをおろす。
 自動車の一部がへこんでいるのは、運転を誤って玄関に突っ込んだからだが、工具の類は無事だったようだ。
「さぁ、頑張りますよ♪
 勤労パラダイスバンザイ!」
 トレジャーセンスと考古学の知識を生かして、下宿周辺を回る。
「なんとなく、ですが。
 この辺りですかね?」
 この辺りで、水は間違いなく宝なのだ!
 だからこそのトレジャーセンスだったが。
「ありゃ? こ、これは……っ!!」
 掘って掘って……掘りつづけて。
 司が掘り当てたのは、なんと!
 古代の古井戸だった。
 あまりにも古過ぎて、何かの遺跡のように見えなくもない。
「古代遺産……人類の宝って奴ですかね?
 あながちトレジャーセンスもあなどれませんね♪」
 ウキウキとしつつ、司は調べる。
 この古井戸は、しっかりと水源も確保している。
「つまりは使用可能なまま、古代の火山の爆発か何かで、埋もれてしまったと。
 そういうことですかね?」
 ともあれ、水源は確保し、ついでに遺跡も見つけてしまった。
 思わぬ一石二鳥に、司は満足したようだ。
 
 一方。
 水源発見の報を聞いて、いま一人の相棒であるラルクも頬を緩ませた。
「よし!
 これで、医療器具の煮沸洗浄に十分な水が確保できたぜ」
 しかも、水源は医療スペース予定地の傍だ。
 診療所も、彼が総ての工程を終えて帰ってくる頃には、パラケルスス監督の下、外観は仕上がっていた。
 小さな診療所ではあったが。
「こう下宿生の人数が多いと、電源の問題もあるしな。
 ブレーカーが落ちない程度、と言えば、こんなものだろう」
 そうして、彼も業者の工夫達と共に建築(主に内装関係)に汗を流すのであった。
 壁をペンキで白く塗って行く。
 傷薬、包帯、湿布などは普通の棚に置く。
 一方で、扱いの難しい医薬品や消毒用の洗浄剤などを入れた棚には施錠をし、『危険!触るな!!』の貼り紙を貼った。
「この鍵は俺と、それからパラケルスス。
 お前にも渡しておくな?」
 そうして、自身は繁盛記に備えて、自室で筋力を鍛えよう……として、結局患者達の治療にあたるのであった。
「開院したばかりだってのによぉ。
 ……て、あれ? キヨシじゃねぇか? どーした?
 なに? 奈落彼岸花の花びら入りの茶を飲まされただと?
 胃洗浄じゃねぇのか? それって」
 
 ■
 
 こうして、小さな診療所は日々夜更けまで繁盛することとなるのであった。
 お疲れ様でした。