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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記

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【空京万博】子猫と子犬のお散歩日記
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「さあ、行きましょう」
 何事もなかったかのように、ユニコルノはみかん箱を引いて歩き出す。
「みー……」
 三毛猫アレナは舞い落ちてきた黒い羽根を体を振って振り払おうとする。
「ワンワン!(大丈夫か、こんな汚い羽根で綺麗なメス猫達を汚すわけにはいかねェぜ!)」
 ボクサー犬竜司は、落ちてきた黒い羽根を汚らわしげに外に振り落していく。
「ワン?」
 ふと、三毛猫が加えている水仙の首輪に気付く。
 この模様、何度か見たことがある――そう、アレナがよく穿いているスカートの絵柄だ。
「ワンワン(今日は優子と一緒じゃないんだなァ? ンな顔すんなよォ)」
 不安そうな顔をしている三毛猫アレナに、力強く吠えて見せる。
「ワン!(オレが守ってやるからな)」
「みー、みー(ありがとうございます。ちょっと、色々びっくりしてしまって……。頑張ります)」
「ワン!(そうか、何かあったら呼べよ。外から守ってるからなァ)」
「みー(はい)」
 会話の後、竜司は箱の外へと飛び出して、道を走り出す。
(頼りになる、素敵な人、です。でもどなたでしょう?)
 アレナは竜司を不思議そうに見つめていた。
「ワンワンワンワン!(パレードが通るからな、道を開けてくれよ。子猫達を撫でる時は優しくなァ!)」
 言葉は通じないが、ボクサー犬竜司は走り回って警備を務め。マナーの悪い客や、鴉を牽制したり、威嚇をしていく。
「犬の警備員さんね。うおっと」
 アルメリアは勇ましいボクサー犬竜司や可愛いパレードの様子を、デジカメで撮っていく。……何枚か鴉の羽根が一緒に移ってしまったので、あとで消去しなきゃと思いながら。
「みんな注目してますよ〜。お歌でせんでんもするですよ」
 気を取り直して。
 ヴァーナーは『わんにゃん展示場』のプラカードを掲げた。
「にゃんにゃにゃーん、にゃにゃにゃにゃーん、かわいい子たちとあそべる『わんにゃん展示場』はあっちなんですよ〜」
「みゃーみゃーんみゃみゃーん、みゃんみゃーみゃんみゃー♪」
 バウバフの上のベンガルのサリスも、気を取り直して可愛い声を上げる。子猫の歌声だ。
「にゃーん」
 ターキッシュバンのクレシダも、声をあげてぺこりと頭を下げる。だけれど、愛嬌を振る舞うということが良くわからないクレシダはおすまし状態でサリスの傍にいる。
「おうまさんのわんちゃんと、うたう子ねこちゃんと、ぬいぐるみのこねこちゃん」
 幼子がそんなことを言って、2人に近づいてきた。
「みゃーみゃんみゃみゃー♪」
 幼子に小さな手で撫でられながら、気持ちよさそうにサリスは声を上げる。
「みゃー」
 クレシダはちょっと尻尾を振ってお礼を。
「バフ」
 セントバーナードのバフバフもバフッと声を上げる。
「こねこちゃんのおせわ、えらいねえらいね」
 そんなことを言いながら、幼子はバフバフの頭をなでなでする。
 バフバフは尻尾を大きく振ってこたえた。
「にゃーにゃー」
 ボンベイのセツカも声をあげてアピール。
「かわいー」
「私にも抱かせて」
「どうぞです。やさしくしてくださいです」
 沿道から手を伸ばしてきた女子達に、ヴァーナーはセツカを預ける。
「にゃー、にゃあ(わんにゃん展示場をよろしくお願いいたしますわね)」
 セツカは可愛らしく振る舞い、少女達に優しく抱きしめられ、体を撫でられた。
「ん? すみっこたのしいですか〜?」
 ヴァーナーはみかん箱のすみっこで大人しくしている三毛猫アレナと、箱の中をちょこちょこ歩いている黒猫呼雪を、誰とは知らずに抱きかかえた。
「みー」
 子猫2匹は可愛らしい声を上げる。
「むむ、かわいいですね〜。かわいすぎますね〜♪」
 ヴァーナーは黒猫呼雪の頭と背をなでなでして、三毛猫アレナの頬と額にちゅーをする。
「みー、みー」
 三毛猫アレナはお礼の様に、声を上げて頬をヴァーナーに摺り寄せた。
「こっちでも遊んでいってくださいです」
 それから、ヴァーナーは、2匹をバフバフの背に乗せてあげた。
「にゃにゃにゃにゃんにゃーーー!」
 ジャーンプ。
 その、バフバフの背の上の箱に、もう一匹外部から飛び込んできた子猫がいた。
「にゃーにゃーにゃ」
 しきりに声を上げて、三毛猫アレナにすり寄るその子猫は、メインクーンになっただ。
「みー? みーみー?(葵、さんですか? こんな姿ですけれど、合流できてよかったです……っ)」
 2匹はすり寄りあって、再会を喜ぶ。
「あおいママとは違うネコさん達なの」
 カレンは、ひょいっと2匹を抱き上げて、撫でてもふもふして。可愛がっていく。
「よかったですね。葵ちゃん」
 エレンディラは手を伸ばして、カレンの腕の中の葵の頭を撫でてあげる。
「にゃーん(良かったよぉ)」
 葵が可愛らしい声をあげ、エレンディラの顔に笑みが広がっていく。
「皆さん、ホントとても可愛らしいですねぇ。ミーナちゃんも勿論とってもかわいいですけれど」
 恵美はそんな皆を見守りつつ、大切に猫のミーナを胸に抱きしめながら歩いていく。
「うううにゃー……」
 だけれど、ずっと抱きしめられているミーナはちょっと不満げな声を上げる。
「にゃー。にゃ!(恵美さんの胸は反則です)」
 抱きしめられていることが不満なのではない。
 心地良さになんだか悔しくなっていく。
「にゃー、にゃにゃん!(ミーナの胸成分をきっと奪ってるのです!)」
「子猫ちゃん、可愛い〜!」
 そんなことを訴えていくミーナの様子は、集まった客達からは元気のいい子猫に見えて、応援の声が飛んでくる。
「ちっちゃくて可愛い〜」
「にゃーん!(ちっちゃいのは嫌なんですー!)」
 胸のことを言われたわけじゃないのに、ミーナは思わず反発。
 とはいえ、彼女の声は猫の鳴き声にしか聞こえなく、声援にお返事をした子猫として、ますます人気が出ていくのだった。

 少しの休憩を挟み、その間も来客達に可愛がられながら、数時間かけてパレードは万博会場全ての通路を回り終えようとしていた。
「あら? ミーナ猫ちゃん、眠ってしまったのですねぇ」
 ミーナは心地良さに負けて、恵美の胸の中で眠りに落ちていた。
「フランカ猫殿も眠そうです」
 みかん箱の中で、子猫、子犬達と元気に遊んでいたフランカも目を閉じたり、開いたり、眠そうにしている。
「眠っていいですよ」
 胡桃が優しく抱き上げて撫でてあげると、猫フランカもすぐに眠りに落ちていった。
「お疲れ様でした」
 会場の入り口近くに到着し、ユニコルノがパレードのメンバー達にそう声をかけると、拍手が沸き起こった。
 ユニコルノは丁寧にお辞儀をし、子犬と子猫達も、一斉に声を上げてお返事する。
 その後。
 子犬と子猫達は箱の中から出たり、出してもらって、互いにお疲れ様と言いあう。
「にゃー(お疲れ様、アレナ)」
 黒猫呼雪が、メインクーンの葵と一緒にいる三毛猫アレナに近づいて、パレードを手伝ってくれたお礼にと、こう尋ねる。
「にゃん、にゃー(何か俺にして欲しい事とか、欲しいものはあるか? 俺に出来る範囲なら何でも良いぞ)」
「みー、みー(できることじゃないのですが、お願いがあります)」
 アレナはすぐにそう答えて、大切に咥えていた首輪を地面に置いた。
「みー、みー!(これを首に着けてほしいんです。このまま戻ったら……大変、なんです)」
 猫の手では嵌められないし、人間に言葉は通じないしで、アレナはとても困っていたのだ。
「にゃん」
「順番にいきますよ、順番に」
 すぐに、呼雪はユニコルノの服の裾に噛みついて引っ張るが、ユニコルノは他の子猫の世話をしており、アレナのことを優先してはくれない。
 彼女がアレナだと、気づいていないことはないだろうにと、呼雪もヘル同様不審に思う。
「んん? その首輪おきいりですか〜? おリボンもしたらもっとかわいいです」
 みーみー鳴いているアレナに気付いて、ヴァーナーが首輪をつけてくれた。ついでに首輪に、自分のパートナー達に着けたリボンとお揃いで、色違いのリボンも巻いてあげる。
「みー……(ありがとうございます)」
 ほっと、息をついて、アレナは葵と呼雪と微笑み合う。
 そうして、彼女は何とか裸で復活を免れたのだった。