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動物ふれあい広場

 
 
「ああ、やっぱり、まだこっちの姿の方がくつろげるな」
 ふれあい広場でのびのびと寝そべりながら、ジャワ・ディンブラがつぶやきました。バイトにも飽きたので、抜け出してきたようです。
 その周りには、何匹ものドラゴンがくつろいでいます。
「よおし、わしも変身じゃ
 ウィルメルド・リシュリー(うぃるめるど・りしゅりー)が、ジャワ・ディンブラのそばで叫びました。みるみるうちに、ウィルメルドの身体がドラゴネットの大きさにまで膨れあがります。その姿は、白い体毛で被われていて、もっふもっふです。
「ここは、ドラゴンが多そうですから、放しておいても大丈夫そうですね」
 イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が、最近乗っている水雷龍ハイドロルクスブレードドラゴンをそのそばに放しました。
「さあ、たまにはゆっくりと羽をのばすがいいのだよ」
 イグナ・スプリントに言われて、水雷龍ハイドロルクスブレードドラゴンが大きくのびをしました。
「わあ、ドラゴンが一杯。かわいいなあ」
 にこにこと顔をほころばせながら、ドラゴンマニアの南天 葛(なんてん・かずら)が言いました。
「レースが終わるまでにまだまだ時間がありそうだから、キワノプルーンも遊んでおいで」
 居ならぶドラゴンたちに和みながら、南天葛が連れてきていた二匹のドラゴンたちをその仲間に入れました。
「よろしくーなのじゃ」
 近づいてくるキワノとプルーンに、ウィルメルド・リシュリーが頬ずりして挨拶しました。
「ああ、そこ、動かないで。記念写真、記念写真!」
 ベストショットを逃してなるものかと、南天葛があわててウィルメルド・リシュリーとキワノとプルーンの仲睦まじい姿を写真に撮ります。
「ふふっ、もふもふなんだもん」
 ベストショットも手に入れて、南天葛が満足そうにウィルメルド・リシュリーのふわふわの体毛をもっふもっふしました。
「ふっ、もふもふなら、占いで保証された俺様の方が上だというのに」
 雪国ベアが、ちょっと冷めた目で、それを見つめます。
「もう、ベアったら。そういうことは言わないの」
 ソア・ウェンボリスが、軽く雪国ベアを注意します
「ああ、このもふもふ感がたまらないです〜」
「ふーん」
 ウィルメルド・リシュリーのもふもふ感に満足してぼーっとなるソア・ウェンボリスに、やっぱりちょっと気にくわない雪国ベアでした。
「ああ、私にももふもふさせてよー」
 駆け寄ってきた仁科姫月が、もふもふ仲間に加わります。ウィルメルド・リシュリー大人気です。
「うふ、うふふふふふふ……」
 思わず顔がにやけてしまう、仁科姫月でした。
「やれやれ、姫月もしょうがないなあ」
 もふもふする仁科姫月の姿の方に癒される成田樹彦が、まだ憮然としている雪国ベアの方を、同じ保護者同士という感じでちらと見ました。
「まあまあ。あれは、ソアには大きすぎるさ」
 緋桜ケイが、なんとなく雪国ベアを慰めてみます
「ウィル、大人気だな」
 ちょっと感心して、セルマ・アリス(せるま・ありす)が言います。
「あの、ボクも、もふもふしてもいいかなあ」
「どうぞどうぞ」
 フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)に聞かれて、セルマ・アリスが答えました。
「わあ」
 すぐに、フルーネ・キャストももふもふの輪に加わります。
「ああ、もふもふしてて、格好いいなあ」
 ウィルメルド・リシュリーの毛並みのよさにうっとりしながら、フルーネ・キャストが言いました。
「もふもふー」
 パフンとウィルメルド・リシュリーの背中に飛び乗って、秋月葵が言いました。
『ガオォォォォォン!!』
 その様子を見ていたメカニカルな龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)としては、ちょっと気に入らないようです。正統派ドラゴン――と言っても恐竜型なんですが――の龍心機ドラゴランダーとしては、もふもふなどなくても戦闘力には関係ないと言いたいところなのですが、いかんせん『ガオォォォォォン!!』としか鳴けません。
「まあまあ。我らの出番は、何かあったときでいいだろうが」
 のんびりすればいいと、ジャワ・ディンブラが龍心機ドラゴランダーに言いました。
「やあ、楽しんでるかい、ドラゴランダー君」
『ガオォォォォォン!!』
 天樹十六凪に声をかけられて、龍心機ドラゴランダーが首をかしげました。
「酷いなあ、昔地球でメンテナンスをしてあげたこともあるのに」
『ガオォォォォォン!!』
 おお、ポンと、龍心機ドラゴランダーが尻尾を叩きます。なんとか、思い出したようです。
「久しぶりなんだから、積もる話でもしようじゃないか。姉貴の悪口とか……」
『ガオォォォォォン!!』
 それはいいと、龍心機ドラゴランダーが天樹十六凪に答えました。
 もふもふとは関係なく、他のドラゴンたちものびのびとすぐそばででんぐり返しをうったりして遊んでいます。
 ちょっと寒いかなと思ったら、プルーンが、自分の穿いた吹雪のブレスで出来た雪を、キワノと一緒に丸めて遊んでいました。
「こっちのドラゴンも、格好いいなあ」
 ジャワ・ディンブラたちの方にも回ってみて、フルーネ・キャストが言いました。ここにいるドラゴンの中では、ジャワ・ディンブラが一番の大型です。他のドラゴンたちも、同じ姿形の者は一匹もおらず、見ていて飽きません。さすがにパラミタを代表する生き物でもありますから、見ていて貫禄があります。
「今頃、うちのペットは頑張っているかなあ」
 すぐそばで行われるペットレースのことを思って、フルーネ・キャストがつぶやきました。
 
    ★    ★    ★
 
「和輝さん、みんな連れてきたですぅ〜。てへっ
 賢狼の頭の上に乗っかったルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)が、図書室から移動してきた佐野和輝を見つけて叫びました。
「これはまた、たくさん連れてきたなあ……」
 ペットの群れを見て、さすがに佐野和輝がちょっと呆れました。ヒポグリフに賢狼、パラミタ猪、DSペンギン、牧神の猟犬、涅槃イルカ、それに、ゴーレムまでいます。他にも大小細々いろいろ小動物から大型の動物まで、よりどりみどりてんこ盛りです。禁書『ダンタリオンの書』の使い魔であるカラスと猫も加えたら、ちょっとした動物園でした。
「みんな、たまには空京が見て見たいって言ってたから、いい機会だと思って連れてこられるだけ連れてきたんだよ。偉いでしょぉ」
 動物たちの言葉がよく分かるルナ・クリスタリアが、ちょっと自慢げに言いました。それにしても、たくさんの動物たちです。
和輝〜、早く手伝ってよ〜」
 二人だけじゃ、とても面倒見切れないと、アニス・パラス(あにす・ぱらす)が佐野和輝に助けを求めました。
「はいはい。おお、お前か、懐かしいな。元気にしてたか?」
 久しぶりに会うペットたちの頭をなでてやりながら、佐野和輝が言いました。ルナ・クリスタリアが野生動物の保護活動をしているため、お手伝いで保護した動物たちの姿もいくつか見えます。
「みんな、おっきくなったでしょ?」
 アニス・パラスが、佐野和輝に言いました。確かに、動物の育つのは早いものです。アニス・パラスにしても、久しぶりに会う者たちがたくさんいます。
「あははは、くすぐったいよぉ」
 いつもは人見知りなアニス・パラスも、相手が動物たちだと違うようです。一緒にじゃれあって、転がり回っていました。
 ルナ・クリスタリアと一緒に、ここまで動物たちを運んできたわけですが、アニス・パラスもずいぶんと楽しかったようです。
「さあ、みんな、楽しく遊ぶですぅ」
 ルナ・クリスタリアが、動物たちにむかって言いました。
「これは、また、たくさんペットがいるなあ」
 ドラゴンのでんぐり返しに潰されては大変と移動してきた緋桜ケイが、ルナ・クリスタリアのペットたちを見渡して言いました。
「ええ、凄いですねえ。ああ、あの賢狼さんも、もふもふです」
「むっ」
 感心するソア・ウェンボリスの言葉に、またぞろ雪国ベアの対抗心が頭をもたげます。
 その視線に気づいてか、アニス・パラスがすすすっと佐野和輝の後ろに隠れました。
「ヒポグリフも、ふわふわだよね」
 羽根に被われたヒポグリフに駆け寄っていって、南天葛が首に手を回して抱きつきました。
「あなたも、遊んできなさいな」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が、キャットアヴァターラ・ブルームを箒の形態から猫の姿に戻すと、動物たちの輪へと入れてやりました。
「こちらは、普通サイズのペットたちですか。これはまたにぎやかですね」
 ドラゴンたちと比べればもの凄く小さく見える動物たちを見て、イグナ・スプリントがちょっと和みました。
「大きいのや、小さいのや、たくさんいるなあ。目移りしそうだ。そうだ、ペガサスたちがいるって聞いたんだが……」
 セルマ・アリスが、ペットたちの姿に和みながら、また広場を移動していきました。