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ひとりぼっちのラッキーガール 後編

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ひとりぼっちのラッキーガール 後編

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第24章


 その男達は、瓦礫の中から現れた。
 崩れ落ちる屋上の瓦礫から咄嗟にアニーの入ったカプセルを護ったフューチャーX。
 ちょうどその時屋上へとたどり着いた彼らは、そのフューチャーXごとカプセルを護り、瓦礫に押し潰されていたかも知れないアニーを救った。
 そして今、恋歌の亡霊達を無差別に攻撃しようとする四葉 幸輝を止めようと、姿を現した。

 その男は、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)、そして龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)
「この局面じゃ、誰がどう見たって悪役はアンタだぜ、幸輝さんよ!!」
 パートナーの灯も、牙竜に並ぶ。
「そうです……亡霊達との接触は想定外ですが……助けを求める声には応えなければなりませんね!!」

 そして、駆けつけたのは牙竜だけではなかった。
「そうとも……これ以上犠牲者を増やしてはならない。恋歌とアニー……少女達の未来について多くの鍵を握っているのは、やはりあの老人、フューチャーXだろうからな」
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)だった。パートナーのメティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が自らの棺桶を上手く盾にしてくれたお陰で、アニーのカプセルは傷ひとつない。
 そして、そのカプセルの陰にフューチャーXと、天神山 清明がいた。
「ふう……屋上ごとたたき壊すとは、無茶をする。少女よ、無事か?」
「あいたたた……はい、ちょっとコブができたくらいです。
 あまり覚えていないのですが……さっきも今も、清明とアニーさんを助けてくれてありがとうございますです」
 清明の頭をちょっと撫でて、フューチャーXは微笑む。
「なあに、礼には及ばん……それに、今回は儂の手柄ではない」

 崩落する屋上から二人を救ったのは、レンのパートナーであるガウル・シアード(がうる・しあーど)であった。
 獣人ならではの素早さで崩れる屋上から二人を救い、避難させたのだ。

「それこそ礼には及ばない……当然のことをしたまでだからな。
 それに……本当の仕事はこれからだ……そうだろう、レン?」
 ガウルの言葉に、レンは頷く。
「もちろんだ……恋歌の依頼通りアニーを救い……恋歌本人をも救うためには、フューチャーX……お前の持つ情報がまだまだ必要だ。
 お前は彼女を救うと言った。救うとな。ならば俺達が戦う理由は何もない。俺達もまた、彼女達を救いたいのだから」

 牙竜もまた続いた。
「その通りだな……まずは恋歌の依頼を果たそうじゃないか。
 恋歌は『アニーを助けてください』と言ったんだ。『命を助けて』やれば全て解決か?
 俺は違うと断言する……『アニーを取り巻く全ての運命から』助けなければ意味はない。
 フューチャーX……この亡霊達……この嘆きのカタマリは、アンタの知る未来にあったのか?」
 その問いに、フューチャーXは首を横に振る。
「いいや、儂の依頼主……未来の四葉 恋歌も言っていなかった。恐らく、知らないのではないかな」
「そうか……あれを、ただの悪意と呼ぶには、あまりにも悲しい響きが感じられる……
 フューチャーX……アンタは、どう動く。ここでアニーを護っているだけで、アンタの依頼は達成できるのか?」
 その言葉に、鼻息ひとつでフューチャーXは答えた。
「ふん、痛いところを突くな。アニーを真に救うためには、もちろんここで護っているだけでいいはずもない。
 だが、重要なのは現在の恋歌だ。しかし分かるだろう、現在の恋歌を幸輝に最も都合よく無力化するには、アニーを殺すことだと」
「だろうな……パートナーロストの影響で死ぬ寸前まで追い込むことができるだろうし……しかし死なないならその間にどうとでもできる。
 それに、アニーが死ねば恋歌が頑張って生きようとする理由もなくなる……」

 その牙竜の呟きに、レンとガウルが応えた。

「なに、心配することはない。アニーは俺達が守る。フューチャーX、お前は恋歌の元へ急げ。
 もし彼女を救う方法があるなら、恋歌を救うために――もし具体的な策はなくとも、恋歌を護ることで糸口は掴めるだろう」
「うむ……異論はない。単なる依頼であれば、もとよりここまで激しくビルを破壊することは必要ないはず……。
 あなたもまた個人的に、この依頼について思うところがあり……ここまでの激情に駆られたのだろう。
 ならば行くのだ――ここは私達に任せて!!」
 ガウルの台詞を受け、フューチャーXは周囲の様子を見る。
「しかし……奴、四葉 幸輝は強敵だ。貴様らだけで大丈夫か?」

 そこに、メティスが連れて来ていたブレイズ・ブラス(ぶれいず・ぶらす)が割って入った。
「心配ねぇよ、先輩達に任せておけって!! それより、恋歌を救う方法があるなら、教えてくれよ!!
 確かにあんたにゃ色々聞きたいこともある、けどよ、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇんだ!!」
 フューチャーXはブレイズの顔を一瞥し、視線を逸らした。
「貴様……」

 ブレイズの声に、牙竜が反応する。
「フューチャーX! 恋歌を探すならブレイズを連れて行け!!
 ここはお前ら二人のヒーローに任せるぜ!!」

 レンもまたそれに続いた。
「そうだブレイズ……いつかお前に言ったな。強大な敵を倒せる者がヒーローじゃない。戦うべき時に戦い、救うべき時に救うのが、本当のヒーローだ。今こそ恋歌を救い、アニーを救うために……この救いようのない物語に、希望を与えるために」

「……だってよ……後はあんた次第だぜ」
 ブレイズはフューチャーXに詰め寄る。フューチャーXは今度こそブレイズの瞳を覗き返し、その決意を読み取った。
「……仕方ないな……足手まといにはなるなよ」

 アニーの入ったカプセルを前に相談をしていた一行だったが、そこに四葉 幸輝が声を掛ける。

「……さて……突然出てきて、何やらご相談のようですが……そのカプセルを破壊してしまえば、とりあえず恋歌を確保できます。
 色々と立て直しは大変そうですが……まぁ、それは皆さんを処分してからゆっくり考えましょうか」
 幸輝は両手に集中していた魔力の炎を牙竜とレンたちに放った。

「カード・インストール!!」
 灯は叫び声と共に、魔鎧となり牙竜に装着される。
「シャイニング・ケンリュウガー、降臨!!
 ……行けフューチャーX! 未来から来たってんならヒーローの後輩だろ!! 後輩を助けるのは先輩の役目!!
 いいかブレイズ、そのジジィや他のヒーローと一緒に行け!! そして……」
 その言葉がブレイズの耳に届く頃には、すでにフューチャーXと共にカプセルの元を跳んでいた。

 牙竜とレンガ弾き返した幸輝の炎が、カプセルの両脇で弾けた。


「ヒーローのいる物語を、かっこよく終わらせてこい!!」