葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

合コンしようよ

リアクション公開中!

合コンしようよ
合コンしようよ 合コンしようよ

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ヒャッハー。ついに嫁ゲットだぜぇい!」
 参加賞を握りしめながら、南 鮪(みなみ・まぐろ)がテンションを上げていた。
「ヤバいぜ、ヤバいぜぇい。とびきりのヤバい臭いが、俺様の支配欲を刺激するぜぇい。これは、やっぱりヤバい奴を狙うしかねえな。スリルだぜぇい。そうだなあ、安徳 天皇(あんとく・てんのう)あたりは、素晴らしくやんごとなきヤバイ臭いがする上に、拉致欲を最高にかきたてて至高で一番狙いたくて捨て難……」
 もう言いたい放題であった南鮪が、ピタリと口をつぐんだ。その喉元に、白刃がしっかりと押しあてられている。
「そこまでにしてもらおうか……」
 織田 信長(おだ・のぶなが)が凄みのある声で、南鮪に言った。
「上洛も果たさぬおぬしに、天皇と語る術はないと知れ」
「はははは、じょ、冗談に決まってんだろうが。あんなロリに、手は出さねえぜ」
 思いっきり顔を引きつらせながら、南鮪が答えた。
 それを聞いて、たっぷりと間をおいてから織田信長が剣を引く。
 まさか、織田信長がロリだったとはと、南鮪が内心舌打ちをする。
「まったく。おぬしや茸の馬鹿ぶりを見に来たのだが、気が変わった。わしも参加するぞ。さあ、受付へ案内せい!」
 そう言うと、織田信長は南鮪をどつきながら受付へとむかった。
 
    ★    ★    ★
 
「受付だったら、こっちよー。しくしくしく……」
 なし崩しに受付係になってしまった日堂真宵が、エメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)を探してキョロキョロしている高峰 結和(たかみね・ゆうわ)に声をかけた。
「えっ、あっ、その、私、違うんですっ。そっそそその、好きな人が……。あああの……、彼氏さん、が、いるのでっ……」
「あっそ」
 心の中で、羨ましい、コロスと唱えながら、日堂真宵が素っ気なく答えた。
 まだ彼とか恋人とかという言葉に慣れていない高峰結和は、耳たぶまで真っ赤である。
 そんな高峰結和を見ていて、さすがにエメリヤン・ロッソーも羨ましくなったらしい。それで、今日の合コンに参加しているというわけだ。当然、彼氏のいる高峰結和は観客であった。
 
    ★    ★    ★
 
「ずいぶんとにぎやかだね。みんなで合掌する会が、こんなに盛況だとは思わなかったよ」
 受付を済ませたガウタマ シッダールタ(がうたま・しっだーるた)が、一緒に参加することになったジーザス・クライスト(じーざす・くらいすと)に言った。
「えっ、シッダールタ、合コンの合って、合掌のことだったのかい?」
 予想と違ったのか、ジーザス・クライストがちょっと驚いたように聞き返した。
「えっ、だって、他に合ってどんな意味が……」
 他には思い浮かばないと、ガウタマ・シッダールタが逆に聞き返した。
「いや、大事なのは、合コンの合の方じゃなくて、コンの方ではないのかな」
 ジーザス・クライストが、新説を展開する。
「えっ、漢字の方が大切なんじゃ……。本当は、梵字の方がいいんだけどね」
「だから、きっと漢字は当て字なんだよ。大事なのは、コン、コンクラーベのことだと思うのだよ」
「それは、盲点だった。うん、そういう解釈もあるにはあるね。でも、やっぱり、重要なのは合掌することだと思うんだがなあ」
「多分、始まれば分かるだろう?」
「うん、そうだね。早く始まらないかなあ」
 そう言い合うと、ガウタマ・シッダールタとジーザス・クライストはわくわくしながら合コンが始まるのを待った。
 
    ★    ★    ★
 
「あっ、愛美とマリエルも来ていたんだ。おーい、ここだよー」
 受付近くで小谷 愛美(こたに・まなみ)マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)を見つけた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、大きく手を振って声をかけた。
「美羽も来てたんだ。もしかして、運命の人を見つける気にでもなったの?」
 ちょっと大胆にスリットの入った上質のチャイナドレスを着た小谷愛美が、小鳥遊美羽に訊ねた。ピンクのチャイナに合わせて、同じ色のシニョンで髪を品良く纏めてお洒落している。
「えっと、あたしはもう……」
 そう言うと、小鳥遊美羽がチラリとそばにいるコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の方を見た。少し照れくさそうにへへっと笑う。
「そうなんだ。運命の人見つけたんだ。いいなあ……」
 もの凄く羨ましそうに、小谷愛美が小鳥遊美羽とコハク・ソーロッドを見つめた。ちゃんとした彼氏いない歴実年齢の小谷愛美としては、一刻も早く運命の人を見つけたいところだ。
「ということで、ここなら運命の人が見つかると思うのよ」
 小谷愛美が力説した。
「まなみんの運命の人は、たくさんいるからねー。今度こそ本物ならいいよね」
 当然のように、マリエル・デカトリースが突っ込んだ。小谷愛美の弱点と言えば、惚れっぽく振られやすいことである。これでは、運命の人もなかなか見つからないはずだ。
「マリエルにだけは負けたくないわよ」
 ライバル心をむきだしにして、小谷愛美が言った。当のマリエル・デカトリースの方は、小谷愛美にだけは負けるはずがないと思っていて、それを実践しに来たらしい。
「でも、恋人ができたのなら、なんで参加してるんだもん?」
 あらためて、マリエル・デカトリースが小鳥遊美羽に訊ねた。
「今日は、ベアトリーチェのつきそいできたんだよ」
 あっさりと、小鳥遊美羽が答えた。
 真面目なベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、ほとんど異性の友達というものをもっていない。そのため、この際交友を広げた方がいいと思って、小鳥遊美羽が強く参加を勧めたのだった。ベアトリーチェ・アイブリンガーも少しは気にしていたらしく、二つ返事でここにやってきている。
「みんな、いい人が見つかるといいよね」
 余裕のニコニコ顔で、小鳥遊美羽が言った。