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第17章 ろくりん御籤

 1月4日。
 大分初詣客が減った頃――。
「御籤はいかがカシラ? ご利益あるヨ!」
 複数ある授与所の隣で販売をしようと思っていたキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)だが、神主や巫女たちに追い出されてしまったため、入口の隅っこの方で露店を開いて、御籤の販売をしていた。
 3日までなら、友人のアレナが巫女として働いていたので、側で販売させてもらうことも出来……いや、優子に掃き出されていただろう。
「イラッシャーイ! 御籤アルヨー!」
 格好は勿論巫女姿。巫女装束を羽織り、黒髪の鬘をして髪を一本にまとめている。
「……何してるの?」
 最初のお客様は、なんと! キャンディスがかつて、御近づきになりたいと思っていた娘だった。聖域(百合園)に入るという夢を叶えるために。
「アラ、瀬蓮さんジャナイ、あけましてオメデト〜!」
「おめでと〜。その格好……巫女さん?」
「そうなのヨ! 今日は特別に巫女姿を披露なのネ、でも惚れちゃダメヨ」
「うん、惚れないように気を付けるね」
 元百合園女学院生、現パラ実生の高原 瀬蓮(たかはら・せれん)は素直にほんわり笑みを浮かべた。
「トコロデ、今年の運勢を占う空京神社スポーツ御神籤はイカガカシラ?」
 キャンディスは瀬蓮に自作の御籤が入った箱を差し出す。
「今ならナント、御神籤がろくりんピックの入場券を兼ねるワヨ〜」
「ろくりんピックの入場券??」
「御代はこっちにお願いネ!」
 更にもう一方の手で、御代を入れてもらうための箱を差し出す。
「入場券つきだから、普通の御神籤より高いのね。……まあいいか。どんなこと書いてあるのか興味あるしねー」
 瀬蓮はお金を箱に入れると、御神籤を1枚箱の中から取り出した。
「ん?」
 畳まれている紙を伸ばしてみる――その紙はろくりんピックの入場券だった。
「ひっくりかえしてネ!」
 肝心?(余分?)な、御籤の内容は裏の余白部分に書いてある。
「あっ、大吉だ〜! やった」
 その御籤には、一般的な項目の他に、スポーツ運という項目もあった。
「飛躍の年って書いてあるね」
「ジャンプ競技がお勧めのようネ!」
「ジャンプかぁ……。瀬蓮はアイリスと観戦かな? 楽しい大会になるといいね」
 アイリスの分も貰っていこうかな、と。
 瀬蓮はもう一枚御籤を買ってくれた。そちらも、大吉だった。
「瀬蓮さんも、昔の友達や、今の友達と一緒に楽しむとイイヨ」
「うん! それじゃお仕事頑張ってね」
「アリガトー! 盛り上げるために、まずは沢山売るワヨ!」
 またねーと手を振る瀬蓮の姿をキャンディスは写真にとって、御籤箱に貼り付けた。
『この娘も公認! スポーツ運気急上昇の御神籤!!』
 そんなコピーを書き加えて。
「イラッシャーイ! 御神籤イカガー!!」
 大声を上げて、訪れる客達の視線を集めていく。
 御籤が売れたかどうかはともかくとして、間違いなくかなりのアピールになった。