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アーデルハイトクリッカー【公開生放送】

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アーデルハイトクリッカー【公開生放送】

リアクション



御神楽 環菜(みかぐら・かんな)は、
夫の御神楽 陽太(みかぐら・ようた)とともに、
空京の放送局からテレビ電話で出演していた。

生まれたばかりの娘の面倒は、
御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が見てくれている。

スタジオでは、
ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)
エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が、待ち構えていた。

「さて、覚悟は良いですの? 質問タイムですわよ!
まさか『アーデルハイト・アワー ワルプルギスの昼』の記念すべき最終回で
番組を盛り下げる様な真似はしないですわよね?」
エリシアがにやりと笑う。
「って、身内なのに何してるのよ!」
「こういうときだからこそ聞ける質問をしようと思っただけですわ」
「大丈夫です、環菜のことは俺がサポートしますから」
陽太が優しく言い、環菜も観念したようだった。

「わたしが聞くのも何だけど……ザンスカールまで鉄道がつながって、
次は外国……カナンあたりまで伸びるの? それとも、ツァンダ?」
ノーンが訊ねる。
「ツァンダが有力です」
陽太が自分の見解を述べる。
「最終的にはパラミタ全体をつなげたいところね。
でもまずは近くから順番に、というところかしら」
環菜がうなずいた。

「ズバリ、配偶者の良い所は?」
エリシアの問いに、陽太が力強く言った。
「合理的な決断力です」
(それでいて、
ちゃんと思いやり深い環菜のことが俺は大好きです!)
心の声まで、聞こえてきそうな勢いであった。

「……優しさと勇気、かしら」
環菜も、照れながらも答える。

「アツアツですわね。
では、娘の陽菜に、どんな将来を望みますの?」

「健やかに成長してくれたら、それに勝る喜びはありません。
その上で、本人が1番やりたいことを見つけて突き進んでほしいですね」
「私も同意見ね。
次世代の子どもたちには、
健やかに育って、平和な世界でやりたいことをやってほしいわ」
陽太と環菜が、うなずきあう。

「なるほど、そのためには、まずは世界を平和にしないと、ですわね。

ところで、今後、鉄道以外の事業展開はありますの?」

「遊覧船事業やツァンダでの大々的なモンスターレースを企画しています」
陽太がそう言ったところで、
スタジオにいたゲストのツァンダの町の精 つぁんだ(つぁんだのまちのせい・つぁんだ)とも電話がつながる。

「モンスターレースの興行も順調そうで何よりです。
ところで、街の名物になるよう資金出資している
大々的なレース企画の進捗状況は如何でしょうか?」

陽太や環菜とつぁんだは以前、モンスターレースの計画の話をしたことがあるのである。
このタイミングで話せば宣伝になると考えた陽太だったが。

「そういえば、まさか、出資金を使い込んでるわけじゃないわよね?」

環菜の言葉につぁんだは一瞬硬直した後、慌てて言った。

「え、えっと、近々開催する予定だよ!
でも、まずは、もう少し平和になってからかな。
そのためにも契約者の皆は世界を救うのを頑張ってよね!
僕もツァンダやシャンバラが発展するように、
頑張らせてもらうからさ!」

「そうですか、皆さんに喜んでもらえるといいですね」

そんな中、ノーンが次の質問をする。

「おにーちゃんと環菜おねーちゃんは今までで何回くらいチューしたの?」

「……なっ!」
「……!?」

ノーンの発言に、さしものエリシアも戦慄する。
(適当にいぢって遊ぼうとしていただけですのに、この子は……!)

ノーンの汚れない瞳に見つめられ、陽太が観念したように言う。

「えっと、その……ご、5000回は越えてる気がします」
しどろもどろで小さな声だったが、マイクはしっかり拾っていた。

「5000回? 1年が365日だから、
もし、毎日、10回ずつチューしたら3650回だよね。
だとすると……」

ノーンが指折り数える。

「生放送で何言ってるのよ!
陽太も余計なこと言わない!」

「わわ、環菜、落ち着いてください!」

「た、確かに事実だけど……なにも今言わなくても」
「本当はもっともっとしたいんですが、環菜も忙しかったので……。
でも最近はゆっくり過ごせていますし」
すねるように言う環菜に、陽太が優しく寄り添う。

「そうね……もっと二人っきりの時間を……って、これ放送されてるのよ!」

「爆発してしまえ、このリア充どもが」

中継越しにイチャつく2人を見て、
アーデルハイトがつぶやいたのであった。