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歴代グランドアイドル決定戦

リアクション公開中!

歴代グランドアイドル決定戦
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リアクション


一幕

「はーい! こちら司会の卜部 泪(うらべ・るい)でーす! さあ、いよいよグランドアイドル決定戦の開幕です! 最初のエントリーはこの人たちですっ!」
「わあああああああああああああああああああああああああああ!」
 割れんばかりの歓声の中、ステージに立ったのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だった。
 衣装は露出度の高い水着姿で、一部の男性客が野太い歓声を上げる。
「こんにちはー! 私たちセクシーマスコットです! 今日は楽しんでいってくださーい!」
 歓声は大声で応える。セレンはそれを聞きながら笑顔で手を振る。
「ほら、セレアナも愛想よくしなさいよ。それとも、この後に及んで恥ずかしいなんて言わないわよね?」
「逆よ。この格好に慣れすぎて恥ずかしいって思わないのが怖くなってるの」
「まあ、緊張してないならそれでいいわ。……準備はいいわね?」
「ええ……いつでもいいわ」
 二人はマイクを手にすると、照明が暗くなりそこから明るいポップスのイントロが流れ始める。
 徐々にライトが二人だけを照らしていき、二人の歌声が会場に響き渡る。
 歌詞は一人の女の子の恋模様を四季に合わせて、明暗のメリハリをつけた内容だった。
 セレンは科を作り、色のある歌声で女の子の明るい部分を歌う。
 這うようにして観客に近づき、大胆なポーズでステージの最前線に立つと観客は歓喜の声を上げる。
 続いて、セレアナが女の子の悲しみや恋い焦がれる切なさを歌う。
 セレンの曲線的なダンスとは対照的に、セレアナの動きにはキレがありセレンの活発な色気とは違う、どこか妖艶な雰囲気をかもし出していた。
 歌がクライマックスに近づくと、二人は互いの身体を近づけて女の子が悲しみや喜びを全て受け止めて濃いに向かっていく歌詞で曲の最後は締めくくられた。
 曲が終わると、再び歓声と拍手が二人に降り注ぐ。
 抱き合ったままセレンはセレアナに微笑みかける。
「最高に気持ちいいかも。……こんな気持ちを味わえるのも、セレアナがいてくれたからだよ」
「それはこっちの台詞よ。ありがとう……セレン」
 セレアナが感謝の言葉を告げると、セレンは笑顔を深くしながら顔を近づけて――突然、唇を奪った。
 その光景に観客はさらに興奮を高めるが、セレアナは眼を丸くしてセレンを見つめるばかりだった。
 そこに泪が顔を真っ赤にしながら入ってくる。
「え、えーっと……セクシーマスコットさん、最高のオープニングありがとうございました! 皆さん、今一度盛大な拍手を!」
 二人は観客の拍手に送られてステージを後にした。


「さあさあ、会場の熱が冷めないうちにどんどんいきましょう!」
 泪が声を張ると、ステージに白波 理沙(しらなみ・りさ)愛海 華恋(あいかい・かれん)チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)白波 舞(しらなみ・まい)の四人が顔を出す。
 四人はチェック柄とフリルのついたスカートが特徴的な衣装に身をつつみ、観客に向かって手を振った。
 理沙はセンターに立つと、マイクを手に取って観客に声をかける。
「今日は今まで以上にマジカラットの魅力を全部出し切るから! 応援よろしくー!」
「わあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 次いで、理沙から華恋にマイクが渡る。
「今日はとにかく楽しめるステージにしたいと思ってるから、みんなで一緒に盛り上がろうね!」
 喉を潰さんばかりの歓声が返ってきて、チェルシーが小声で声をかけてくる。
「そのくらいにしておかないと、歌う前にお客さんが潰れちゃいますわ」
「そうだよ。やるからにはみんなで全力を出せるようにしないと」
 舞も続くように口にすると、華恋は頷いて観客に向き直ると演奏が始まりチェルシーのキーボードが曲の調べに乗る。
 ポップな音楽に合わせて華恋は明るい調子で歌い始める。
 底抜けに明るい曲は観客の身体を自然と揺らし始める。
 華恋のダンスに合わせて客たちも徐々にその動きをコピーし始める。華恋が動けば、数拍置いて観客が続く。華恋が歌で呼びかければ観客がそれに応える。
 舞のコーラスで歌はさらに盛り上がり、ステージには確かな一体感があった。
 その最高潮の盛り上がりに応えるように理沙のソロダンスが始まる。
 先ほどまでの全員が一体となることを重視したダンスとは違い、高度に洗練されたそれは一体感を興奮へと変換させ、理沙一人に歓声と視線が注がれた。
 ダンスが終わると、再び華恋の歌と舞のコーラスが始まる。
 チェルシーの演奏にも熱がこもる。
 曲は最高潮のまま最後を締めくくり、観客から惜しみない拍手が送られ、肌が震えるほどの歓声が轟いた。
 四人が四人とも全てを出し切り、熱気と疲労で足下をふらつかせながら互いの顔を見やる。
 四人全員が満足そうな笑みを浮かべていた。
 言葉はなくとも互いの言いたいことが分かり、その一体感を感じると充足感を覚えた。
「それじゃあ、戻ろうか?」
 理沙が声をかけると、三人は頷きステージを後にする。
 その背中が見えなくなっても、しばらく拍手の音は鳴りやまなかった。


 続いてステージに上がるのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)遠藤 寿子(えんどう・ひさこ)吸血鬼の少女 アイシャ(きゅうけつきのしょうじょ・あいしゃ)の三人組だった。
「皆さん、こんにちは〜! ハロー☆クロニクルです! 今日は楽しんでいってくださいね!」
「わあああああああっぁぁぁあああああああああああああああああ!」
 割れんばかりの声が返ってきて、寿子は身体をビクッと震わせた。
 狂信的とも言える観客の熱を受けて、何もしていないうちから涙目になっている。
「寿子さん、緊張してる?」
 詩穂が声をかけると、寿子は身体を振るわせて詩穂を見つめる。その姿は小型犬を彷彿とさせた。
「う、うん……すっごい緊張してる」
 その言葉に横にいたアイシャもため息をつくように頷いた。
「無理もありません。これだけの人に見られているんですから、緊張しない方がおかしいですよ」
「うう……詩穂ちゃん。緊張をほぐす方法とか無いかな?」
「ほぐす必要なんてないんですよ。緊張なんて、乗り越えちゃえばいいんです。大事なのは勢いですよ!」
 詩穂は寿子の背を押すと、観客に呼びかける。
「さあ! 今日を人生最高の日にしよう! 準備はいい!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
 詩穂は煽ると、それに合わせて観客が声を張り上げる。
 熱気が振動となって寿子とアイシャの肌を揺さぶり、心地の良い一体感が二人の背中を押した。
 二人の顔つきに覚悟の色が滲むのを見て、詩穂が笑顔で声をかける。
「準備はいいですね?」
「うん!」
「はい!」
「よし、それじゃあいくよ……変身!」
 詩穂と寿子は同時に変身! で衣装をチェンジする。
 寿子は地味な眼鏡っ子の姿から青を基調としたステージ衣装に変身し、詩穂は対照的に赤を基調とした衣装に変身する。
 そのパフォーマンスに観客は沸き立つが詩穂は盛り上がりの手を弛めない。
「まだまだ! ここからが本番ですよ!」
 詩穂の声と共に音楽が流れ始め、マジカルステージ♪ による歌と踊りで観客たちは魅了され、先ほどとは打って変わって静寂が場を支配する。
 歌詞は何気ない日常にある幸せにスポットを合わせたもので、しっとりとした音楽と共に詩穂の歌声が調べに乗る。
 寿子とアイシャの歌声が詩穂の歌声と重なり合い、それは心地の良い三重奏となった。
 二人の顔に緊張はない。
 この瞬間、最高の時を生きようとする人間の輝きだけがそこにはあった。
 三人の姿に胸を打たれ、泣く者もいた。
 観客は息を呑んでステージを見つめ続け、その魅了は曲が終わるまで途切れることはなかった。


「さあ、一回クールダウンしたらまだまだ盛り上がれるよね? 次はこの二人です!」
 泪がコールを駆けると、ステージ袖から五十嵐 理沙(いがらし・りさ)セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)が現れる。
 プロ野球チームを応援するアイドルユニットということもあり、野球に詳しい何人かの人間から特大の歓声が上がる。
 二人が着ているのも、応援の時に使用しているユニフォームが基調の衣装でありそれが一部のファンの胸を貫き悲鳴のような歓声は伝播して周りの声を次第に大きくした。
 二人はその声を聞きながらVサインを作ると、それをくっつけてWのようにするとポーズを取る。
「私達、ワイヴァーンドールズです♪」
「わああああああああああああああああああ!」
「グランドアイドル決定戦! 出るからには優勝狙うから応援よろしくー!」
「今日はツァンダワイヴァーンズの応援歌メドレーですわ。ファンの方もそうでない方も一緒に歌いましょう!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 二人の言葉に歓声が返ってくると、ワイヴァーンズの球団歌が流れてだし、セレスティアが震える魂と熱狂で一気に盛り上げると、ワイヴァーンズのファンが合いの手を入れて、周りもそれに合わせる。
 曲が次々と変化する中で観客は必死に合いの手を入れてくる。その熱意に応えるように、理沙は観客に向けてバレンタインデーキスをする。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
 投げキッスで男たちはさらに燃え上がり、その熱狂はセレスティアにも飛び火した。
「セレスティアちゃああああぁぁぁん! 俺にも投げキッスしてぇぇ!」
 悲鳴のような声の要求が飛んでくるが、セレスティアは顔を赤くして恥ずかしそうに手を振ることしかしなかった。
 間奏に入ると、ステージにスタッフが入ってきてバットとサインボールが入ったカゴを持ってきた。
「さあ、サインボールノックいっくよー! フライで打つからしっかり取ってね!」
 理沙が叫ぶと、観客たちがフライキャッチの体勢に入り理沙はサインボールを右に左に打ちまくり、歓声がさらに強くなった。
 セレスティアはホッと安堵のため息をつきながら、引き続き熱狂でステージを盛り上げた。


 理沙たちの番が終わろうとする中、次に控えている松本 恵(まつもと・めぐむ)松本 優(まつもと・ゆう)桜井 静香(さくらい・しずか)の三人は円陣を組むようにして顔を見合わせていた。
 緊張しているのか、静香は何も始まっていないうちから涙目になっている。
 恵は静香の肩に手を置いた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ! 自信を持って!」
「で、でも……もし失敗したらって思うと……うう……」
 肩を狭めて小さくなる静香に優も声をかける。
「静香さん。大事なのは失敗することではなく、この状況を楽しめないことですよ。誰も失敗なんて気にする人はいません。見たいのは必至に頑張っている静香さんの姿なんですから」
 優に言われて、静香は涙を引っ込めるとステージから泪の声が聞こえてくる。
「さあ、どんどんいきましょう! 次のアイドルはこの三人です!」
「呼ばれたね……。それじゃあ、僕が先に出ていくから、後はよろしくね」
 恵はそれだけ言うと、真っ先にステージへと飛び出した。
 熱い声援を一身に浴びながら恵はヒーローブレスレットをかざし、
「チェンジ、ブレイズガード!」
 掛け声と共にヒーローコスチューム改の衣装に変身した。
 そのパフォーマンスに観客は歓声で応え、優と静香が姿を見せるとさらに声は大きくなる。
「盛り上がったところでヒーローと魔法少女の歌、聞いてください!」
 恵が叫ぶと演奏が始まり、三人の歌声が会場に響き渡る。

雷の最中呼ぶ声が僕らを強くする
揺れ動く時の最中誰かを守りたい
その思いが遥か彼方へと続く
今ここに僕らが居ることを運命と呼ぶならば
きっとこの出会いは偶然じゃなくて
待ち望んだ必然なんだ
言葉にはできなくても誰かが願うなら
僕らはきっとそこに居るよ
それが僕らの宿命だから

 熱血ヒーローソングを意識した曲は一部の層の琴線に触れたのか、威勢の良い合いの手が入る。
「どうですか静香さん。まだ緊張していますか?」
 間奏に入って、恵が一人で観客を盛り上げている合間に優が訊ねる。
 優を見る静香の顔には爽やかな笑顔があり、額から汗が一滴流れ落ちていた。
「優さん。さっきの言葉の意味、今はよく分かる気がします。失敗することなんかよりも、この時を楽しめない方が今はずっと怖いです!」
 その答えに優は笑みを返す。
「それなら、それに負けないくらい今を楽しみましょう!」
「はい!」
 間奏が終わり、再び歌詞が始まって優と静香は恵に続いて熱唱を続ける。
 ここで全てが終わってもいいと思えるほど、静香は完全燃焼を果たすこととなった。


 控室でブルーのウィッグにグリーンのカラーコンタクトを装着した富永 佐那(とみなが・さな)ザーヴィスチの肩に乗りながら機体を操縦しているエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)に声をかけた。
「そろそろ出番よ。準備はいい?」
「ええ、二人を落とさないように細心の注意を払いますわ。サフィも準備はいいですね?」
 エレナはザーヴィスチの手の平に乗せているサフィことソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)を見つめる。
 佐那とは反対にグリーンのウィッグにブルーのカラーコンタクトを装着し、エレナに手を振る。
「それじゃあ……行きますよ!」
 エレナはザーヴィスチを――遥か上空の位置から一気にステージまで降下させる。
 先ほどまで無人だったステージに颯爽とイコンが現れたことで全員の視線はそこに釘付けになる。
 それを図ったかのように佐那とソフィアがザーヴィチスの肩と手の上から手を振る。
「ウェブの海からПривет!海音☆ シャナ、水産っ☆」
「WEBのрябьに乗って只今推参☆ あたしは霙音☆彡 サフィだよ☆」
「「私達…【Русалочка】でーす☆」」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「新曲『небожитель』聞いて下さい☆彡」
「みんなーっ☆振り付けは覚えてるかな?☆それじゃ、シャナちゃんと一緒に歌って踊ろ☆ すっごく楽しいよ☆」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 観客が声を張り上げてサフィは手の平に設置されたピアノの前に腰を下ろし、鍵盤に指を添えて、曲を奏で始め、シャナはその調べに歌声を乗せる。

大いなる意志は言いました☆水の中に 大空あれ、と☆WEBの海から天上へ――空よ、私たちを未だ見ぬ世界へ連れて行って!☆

遠い瞳で彼方を見つめてる子供たち
虹の向こうに何があるんだろう?
蒼穹の先にあるのは何?
それはきっとГРАНИЦЫ!

私には見える(何が?)
見たこともない様な空の青さ!
私には聞こえる(何が?)
新しい世界へいざなう風の声!

 シャナの歌声に観客は振り付けで応える。
 歌と万の踊りが一つとなり、全員がまた一つ最高の時を手に入れた。