リアクション
○ ○ ○ ○ 「ミ、ルミちゃん♪」 アルコリアは、ログハウスの裏でしゃがんで携帯電話をいじっていたミルミに近づいた。 「迎えにきちゃいましたよぅ。ついんてついんて、これぱたぱたさせて空飛んだのかな〜。んふふ」 ミルミの髪を掴んで、アルコリアはゆらゆらと揺らして遊ぶ。 「髪じゃ飛べないよ」 ミルミから返ってきたのは暗く面白みのない言葉だった。 「……ひくっ」 顔を上げようとしないので気付かなかったが、泣いているようだった。 メールの送信を終えると、ミルミはそのまま蹲る。 「どーしたのかなー。ミルミちゃんらしくないぞ〜」 アルコリアはぎゅっと抱き締めてみたり、頭をなでなでしてみるが、いつものような反応は返ってこなかった。 「いいよー、ライナちゃん達と遊んでて。ミルミよく分かってるから。ライナちゃんの方が小さくて可愛いし。ミルミはすごくわがままだから、ホントはミルミのこと誰も好きじゃないだってこともね。……鈴子ちゃんだけは、ミルミが一番だって思ってたけど、ライナちゃんと契約してあんまりミルミのこと見てくれなくなったしね。やっぱりミルミの家柄とかが目的で契約したんだろうなあ……。大の仲良しだと思ってた、ミクルちゃんもそうだったしね。わかってるけど、わかってても、ミルミはミルミらしく楽しく生きたいんだもん! だからちゃんと我慢する、我慢するよ……」 アルコリアの行動は、親友と思っていた人物に騙されたと感じ、鈴子をライナにとられたとも感じているミルミにとっては、かなり辛かったらしい。 「ミルミちゃんが可愛くて可愛くて仕方ないのでちょっぴりぢめられたらなぁという悪い心の疼きなのですよぅ」 泣いているミルミも可愛いなあと思いながらもそれは口には出さず、アルコリアはぎゅうっと抱きしめて、ごめんねごめんねと撫でていく。 「いつも遊んでくれるミルミちゃんにお礼がしたいな、何か望みはある?」 そんな風に、言葉にすると自分までシリアスになってしまう。 そういうのは少し――かなり苦手だから。 アルコリアはそれ以上は何も言わずに、ミルミを喜ばせる方法を考えていくのだった。 (鈴子さんのお手伝いをして、鈴子さんのお仕事が減ればいいのかな〜。でも、鈴子さんがミルミちゃんを可愛がりだしたら、私がミルミちゃんを可愛がる時間が減るじゃないですか!) そんな感じで答えは直ぐに出ないのだが。 「ん? ミルミちゃん、携帯電話おっこちちゃいましたよー。メールは誰に打ってたのですか〜?」 ぽとんと落ちた携帯電話を拾って、アルコリアはミルミに渡した。 「ありがと。この間できたお友達に、話聞いてもらいたくなって。ミルミが超お金持ちでスゴイ人だってこと知らないで、友達になってくれようとした子だからね!」 携帯電話を受け取った後、ミルミは涙をぬぐって、ちょっとだけ笑みを浮かべた。 「お腹すいたー! ごはんごはんっ!」 続いて、元気な声を上げる。 「おー! ご飯食べましょう〜。私はミルミちゃんが食べたいです〜」 「もー、食べられたらなくなっちゃうんだからねーっ」 2人はいつものように笑いあって、テントの方へと歩き始めた。 ――異変が起きたのはその直後だった。 「あれ?」 葵は、使い魔と思われるカラスが飛んできたことに気付く。 カラスは上空をぐるりと回っていく。 続いて、近づいてくる害意のある存在の気配を感じる。 カラスがログハウスの屋根に止まった途端、葵は警戒を呼びかけるためにドアを開けて、「悪い人が来る!」と叫んだ。 次の瞬間。 カラスが大きな声で鳴いた。 続いて、激しい銃弾がログハウスを襲う。スプレーショットの嵐だった。 森の中から飛び出た獣人の男、ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)が走り込んでくる。 「うっ。中に入ってて……」 葵は庇護者を使い玄関に立ち、敵の攻撃が中には飛ばないよう身を挺する。 百合園生達が叫び声を上げて、蹲る。 銃弾は窓から室内にも飛んでいた。 そしてそれだけでは終わらず、次々に派手な音を立てて弾丸が放たれる。 「ヒヤッハー!」 「ぶっこわしてやるぜ!」 銃を撃ちながら迫るのは、迷彩服姿のパラ実生達とサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)。サルヴァトーレは前に出て、トミーガンで窓を狙う。だが、全ての窓にカーテンが引かれていて、中は見えなかった。 パラ実生は今回の仕事の為にサルヴァトーレに勧誘され、組織に与しだした者達だ。 サルヴァトーレはキマクの噂――リーアに関する情報操作から組織の狙いを感じ取り、使えそうなパラ実生を有効活用し、更に組織へ組み入れることを考えた。 |
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