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パラ実占領計画(最終回)

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パラ実占領計画(最終回)

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 典韋に促され、ロケット打ち上げ場へ走る良雄達をレンが許すはずもなく。
「他はどこへでも行けばいい。だが、良雄は置いていけ」
「なっ、何でそんなに俺だけ狙い撃ち!?」
 おののく良雄に、彼も宇宙に連れていこうとするロケット組から、レンに敵意が向けられる。
 全員でかかればレンと竜造を倒すことができるかもしれないが、長引けば空からパラ実を滅ぼすレーザーが降ってくる。
 良雄を残していくのが手っ取り早い方法だったが、そうしようと言い出す者は誰もいなかった。
 緊迫した空気が両者を包もうとした時、ダッシュローラーで滑り込んできた者がいた。
「レンさんの相手は詩穂が引き受けた! みんなはロケットへ!」
 本気狩る☆ステッキをレンに突きつけ、早く行けと言う騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
 レンが詩穂をかわして良雄に掴みかかろうとするのを、素早く移動して進路を塞ぐ。
「ダメだよ。詩穂と勝負してもらなくちゃ」
「俺と勝負してお前に何の得がある」
 きつく睨みつけてくるレンの視線を、詩穂は笑顔で受け止めた。
「詩穂が負けたら何をしてもいいよ。でも、そっちが負けたらパラ実生と和解してほしいんだ」
「和解? 俺はそんなもの求めちゃいねぇよ」
「ハスターの皆さんは、レンさんと一緒にいるのが一番なんだって。せっかくここに来たんだもん、パラ実のみんなと仲良くなって、今度は彼らと一緒にパラミタを冒険したらどうかな?」
「そいつは悪くねぇな。奴らが俺の舎弟になるならな!」
 詩穂の返事を待たずにレンは金属バットで彼女を薙ぎ払おうとした。
 人型ではなく、詩穂を守る鎧形態として能力を発揮する清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)の軽身功でそれを防いだ後、いったんレンから離れる。
「舎弟とかじゃなくてさ……」
 むくれる詩穂に、レンは薄ら笑いで答えた。
「俺に言うこと聞かせたかったら、それなりのモン見せろよ」
 具体的なものは言わなかったが、要するに彼を満足させるものなら何でもいいのだろう、と判断した詩穂は、やっぱり勝負するしかないと腹を決めた。
「俺も混ぜろよ。二対二でちょうどいいだろ」
 長ドスを光らせる竜造から闇の気配が漂う。
 レンはバットの先で軽く地面を叩くと、勢い良くそれを振り上げ、詩穂へ襲い掛かった。
(やっぱりそう来たか)
 詩穂はこれまで見てきたレンの戦い方から、しっかり対策を練ってきた。
 本気狩る☆ステッキをくるりと回し、詩穂はバットの軌跡を読もうと集中する。
 そうしてかわした先で髪をいくらか持っていかれたが、ステッキをあいた胴へ叩きつけようとして──ハッとして身を引いた。
 そこにあったのは、竜造の長ドス。
 気づかずに攻撃していたら脇から刺されていただろう。
 竜造としても、パラ実に喧嘩を売ったレンを『おもしろい』と感じた以上、負けてもらっては困るのだ。
「ふぅん……そうくるなら……」
 詩穂は大きく深呼吸すると、スピード勝負に出た。
 それは、レンと竜造が対応できる速さを超えていた。
 本能が危険を教えるままにレンがバットを体の前で構えた直後、詩穂のステッキがバットを折るような力強さでぶつかり、レンの手から飛ばす。
 同時に詩穂の手からもステッキが飛んだ。もしかしたら、わざと捨てたのかもしれない。
 バットとステッキは竜造のほうへ飛んだため、彼は詩穂を止めることができなかった。
 詩穂が拳で決着をつけるつもりだと気づいたのは、レンがバットを弾かれた勢いで足を滑らせた時だった。
 レンが尻もちをつくようにこけたため、詩穂のパンチは空を切り勢い余って数歩飛び出した。
 詩穂の背をしばらく見ていたレンは、これまでの敵意を引っ込めて質問をした。
「おまえ、どうしても俺達とパラ実を仲良くさせたいのか?」
「愛を守る魔法少女の使命かな」
「ふぅん」
「質問しといて興味なさそうな返事だね……」
 立ち上がったレンは、ある方向を指差す。
「これから来るだろう奴との勝負の結果次第で考えてやる」
 詩穂のパンチが当たっていたら自分は負けていたことを、レンが認めた故の言葉だった。

卍卍卍


 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、ある相談のために石原校長のもとへ赴いていた。
 にこにこと人の良い笑みを見せる校長へ、陽一はキマクの経済支援についての計画を話した。
「俺が新日章会の名誉メンバーであることは知ってるだろう? そのコネを使ってパラコシ──バイオエタノール燃料としてのパラミタトウモロコシを日本に売り込みたいんだ。校長はいろんなところに顔がきくと聞いた。力を貸してほしい。キマクの繁栄は校長にとっても損はないだろう?」
 長い間の女王不在のためシャンバラは貧しい。栄えているのはごく一部だ。中でも荒野の住民は底辺に位置する。
 何とかしたいと陽一は考えていた。
 痩せた大地でも育つパラミタトウモロコシは、キマク経済の底上げに打ってつけだと目をつけた。
 巨大な取引先をもうけ、キマクの労働力を増やす。
 もう一つの狙いとして、今後、日本がパラミタにおける影響力を諸外国に奪われることのないように、未開拓のこの分野に日本を置いておきたい──。
 校長は考えの読めない表情で話しを聞いていた。
「そうか。力添えはするが、うまくいくかはわからんなぁ」
「……それは、どういう?」
「バイオエタノール精製機は高価だからのぅ。シャンバラの中でも特に危険地帯であるキマクに高い投資をして、機械を無駄に壊されたり略奪にあったりしたら元も子もないじゃろ」
 それでも校長は陽一の熱意を認めた。
 陽一は研究サンプルとしてパラコシを店主から分けてもらっていた。
「日本で生産技術向上の研究が進めばと。それと、パラ実改造化と日本の研究所とで、共同研究と技術交流の提携ができればと思うけど……」
「気持ちはわかるが、根気がいるぞ。何しろ」
 今の政権はわしとは敵対しているからのぅ。
 フ、と笑う校長を陽一はじっと見つめていた。

 その頃、酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)は種モミの塔を訪れていた。
 塔にあるイコン生産工場を前に、美由子は愕然とする。
「いやー、悪いね。元に戻るまでだいぶかかりそうでさー。せっかく材料持ってきてくれたのに、加工に取り掛かるのはもう少し先になりそうだなー」
 先日のレン達との戦いで工場はほぼ壊滅状態だった。
 落ち込んだ様子でうつむく美由子に、従業員は慌てて彼女の顔を覗き込む。
「や、ここはもうダメってワケじゃないから、ちょっとだけ気長に待ってくれるといいなーってとこなんだけど」
「……そっか。うん、わかったわ。じゃあ、待つしかないわね」
「ごめんなー」
「ううん。他にもやることあるから。じゃ、もう行くわ」
 帰っていく美由子を、従業員は申し訳なさそうに見送った。
 外に出た美由子は気持ちを切り替えて、前回耕した畑へ向かった。今頃は商店街の人達が農作業をしているだろう。
 いくらパラコシが乾燥に強いとはいえ、まったくの水無しでは生きていけない。
 だから水脈を見つけようと思ったのだ。
 塔での出来事を彼らに報告すると、笑って励まされた。
「ま、地道に行こうや!」
 と、たいして気にしていない。
 ようやく笑顔を取り戻した美由子は、針金を出すとさっそく水脈探しに取り掛かった。
 そういえば、イリヤ分校もパラコシに注力していたな、と思い出す。
 協力関係を結べないものかと考えた。
「できれば、ヒラニプラも……」
 教導団とは昔ほど険悪ではないが、反りが合わないのは相変わらずだ。
 難しい顔をしながら、美由子は乾いた大地をてくてく歩く。
 やがて反応のあったところに目印を立てた。
 この先はきちんとした工事が必要になるので、手はつけず陽一に報告となる。