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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第3回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第3回

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第十四章 〜進撃〜


「それでは皆さん、お願いします」
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)はPASD情報管理部の職員に、海京の役員達の安否確認を依頼した。
 PASDには役員の名簿は存在しない。そのため、海京で重要な地位にいると想定される者を当たっているといった感じだ。
 それをあえて空海京を繋ぐ一般回線で行ってもらう。そちらの対応に追われ、PASDの機能が麻痺しているように見せかけるためだ。
 集合場所に向かう前に地下を除く海京の地図をデータベースからダウンロードしてある。
(さすがに全員は無理でしたか)
 ロザリンドはPASDの専用回線を通じて五機精、有機型機晶姫達にも招集をかけた。応じたのはサファイア・フュンフ、ガーネット・ツヴァイ、モーリオン・ナインの、空京在住の三人だ。空京以外の場所にいる他の六人は、すぐに来れるような状態ではない。彼女達は集合場所に着いたとのことだ。
「それでは、あとは宜しくお願いしますね」
「りょーかい! PASDはあたしに任せて!」
 エミカ・サウスウィンド(えみか・さうすうぃんど)に情報管理部を任せて、ロザリンドは集まった契約者と共にサイオドロップのアジトへと転送された。


・ミーティング


「無事に到着したようだね」
 鉄骨や工事道具が積み上がった広い倉庫のような空間で、アレン・マックスの声が漏れた。
 PASDが擁する転送術者、ノイン・ゲジヒトにより秘密裏に集められた協力者が送られて来たのだ。
「アレンさん、ご無事でしたか?」
「この通り。PASDとの通信を切ったのは、地下のセキュリティの掌握に集中するためだよ。心配かけたなら申し訳ない」
 今のところ、このアジトの中は安全らしい。
「とはいえ、固定式の強化型Pキャンセラーは直接起動しなければならない。今は地下の隔壁を操作してどうにか食い止めているけど……向こうは地下構造の全容を把握している。いずれはここまでやってくるよ」
 アレンのパソコンのモニターには、地下の地図とエキスパート部隊を表す光点が映し出されていた。
「……では、始めるとしよう」
 仮面を被ったスーツの男が口を開いた。
「あなたは?」
「ここでは『ボス』、あるいは『代表』と呼ばれている。マックス氏、例のデータを彼女に」
 地下の地図と天御柱学院風紀委員――エキスパート部隊に関する情報が入ったフラッシュメモリーをロザリンドは受け取る。
「彼らと一緒に集めたエキスパートの基本情報だよ。さすがに詳細な内部事情までは調べられなかったけどね」
 とはいえ、あるのとないのでは大きな差が生じるだろう。
「他に、海京についての情報を持っている方は?」
 最初に応じたのは、月舘 冴璃(つきだて・さえり)だ。
「最新版の海京地表部分の地理情報です。狭い路地裏や、細かい建物の情報もありますよ」
 それでも足りない部分は海京知識で補い、銃型HCを通してロザリンドへ送る。
「管区長四人についてだけど……」
 次に声を発したのは榊 朝斗(さかき・あさと)だ。彼は過去に起こった事件でエキスパート部隊に協力をしている。設楽 カノン(したら・かのん)以外の四人の管区長とは、そのときに顔を合わせていた。
「鈴鈴さんが『切り札』があるって言ってたから、強化型Pキャンセラーを発動しても油断は出来ないよ。それと、前に彼らと戦ったときに四人、エキスパート部隊が捕縛してる。そのときの仮面を、向こうは被ってるかもしれない。あるいは、その仕組みを解析して対策を練ってるかもしれない」
 それに加えて、地上で監視を行っているパワードスーツ『ストウ』のことも伝える。
「『ストウ』はただのパワードスーツじゃない。生身の人間では耐えられないような設計になってる」
「『アイスキャンディ事件』のことは、大体調べてあるよ。けど、あれは約二ヶ月前。お蔵入りしたと見せかけて『強化人間用』に改良された可能性もある」
 アレンがその可能性を指摘した。
「どのみち、地上の情報システムも掌握しなければならない。オーダー13の精神ネットワークは司令塔である管区長が倒されれば停止する。けれど海京の情報ネットワークは、
海京が出来たときから何者かに掌握されていた。それが今回のクーデターの主だろうね。この街を完全に奪還するには、海京のメインサーバーにハッキングし、プログラムを書き換えることも必要になる」
 仮に五つのエリアを同時に制圧出来たとしても、このままでは海京にある機密情報が流出しかねない。
「手順としては、海京のネットワークを奪還した後、各エリアの制圧を行うということになるでしょうか。PASDから持ってきた高性能通信機とはいえ、傍受される可能性はゼロではありませんから」
「海京の都市管理を行っているのは西地区の役所だ。オレがそこに向かう。ここは任せるよ、情報管理部長さん」
「はい。アレンさん、くれぐれもお気をつけて」
「一応、オレも契約者だ。下手を打ったりはしないさ」
 アレンが移動の準備を始める。それに合わせて、各自強化型Pキャンセラーと仮面をサイオドロップから受け取った。
 ロザリンドも自分の持つデータとここで得たものを統合し、それらを各自のハンドヘルドコンピューターやスマートフォンに転送する。
「あとはそれぞれの担当場所とルート取りですが、その前に――」
 ロザリンドは情報からある仮説を導いていた。
「代表さん、確かあの天住は偽者だってアレンさんに言ったそうですね」
「天住先輩は三年前に死んだ。植物状態で生きていることにされていることに、驚かされたくらいだ」
「その偽者に心当たりがあります」
 その人物を告げる。
「強化人間管理課課長、風間 天樹。彼の死体は、画面越しでしか確認されてないんですよね?」
「まさか……」
「映像である以上、いくらでも細工は出来ます。ソートグラフィーとミラージュを組み合わせて、幻術のような技を使う人がいるほどですから」
「黒川、だね」
 朝斗の呟きが耳に入った。
「はい。『幻想使い』と呼ばれる彼の力を借りているとすれば、あの天住と名乗った男はが風間であっても不思議ではありません」
 クーデターの首謀者は風間。
 それがロザリンドの考える可能性だ。
「自分の存在を抹消し、死んだ先輩を生きてることにして利用する、か。どこまで下種な男だ……」
 表情は見えないものの、サイオドロップの代表は怒りで震えているようだった。
「まだそうと決まったわけではありません。それを確かめるためにも、皆さんの協力が必要です」
 おそらく、首謀者はこのクーデターの様子をどこかで見物しているだろう。例え海京を奪還しても、逃げられては元も子もない。
「どのみち、黒幕の居場所も特定しないといけないわね」
 声を漏らしたのは、天貴 彩羽(あまむち・あやは)だ。
「ここから、空京大学やPASDのコンピューターを操作することって出来そう?」
「可能なはずです。ただ、空京のデータ通信も今は海京のメインサーバー経由ですから、一部のローカルネットワーク以外は危険かと」
「ならば、PASDの専用ネットワークを使わせてもらえないでござるか?」
 スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)が依頼してくる。
「少々お待ち下さい。アクセスコードを本部から送ってもらいます」
 アレンもここを離れる以上、一人では限度がある。並行して黒幕探しをするならば、断る理由はない。
「ありがとう、助かるわ」
 情報関係は、アレンがネットワークシステムの奪還、ロザリンドが制圧メンバーのバックアップ、彩羽とスベシアが首謀者の居場所の特定という役割だ。
「これも渡しておくよ」
 アレンから彩羽に一枚のSDカードのようなものが渡された。
「逆探知プログラム。だけど、攻撃元を特定するだけじゃない。いくつかの仕掛けを施してある。それで」
 情報屋の少年が言う。
「オレが海京のメインサーバーにハッキングするタイミングで、天御柱学院のホストに繋いで欲しい。ほんの一瞬でいい」
「だけど、学院のネットワークは一番危険な……」
 彩羽が何かに気付いたようにはっとする。
「分かったわ。それなら天学生の方が都合がいいわね」
 あとはアレンがちゃんと目的地にたどり着けるかだ。
「では、アレンさん手順を再度確認していいですか?」
 制圧までの流れをおさらいするロザリンド。それを頭に入れ、高性能通信機に位置確認用の発信機がついているか確認する。
「無線使用の条件をもう少しきっちりと決めた方がいいんじゃないか?」
 林田 樹(はやしだ・いつき)が口を開いた。
「極力使わない方がいいのは分かる。そこで、使用するのは『共有した方がいい情報が得られたとき』『緊急時』『管区長発見を知らせるとき』『タイミングを合わせて管区長を無力化するとき』のみに絞る。特に、地上はどうなってるか、まだ分からないからな」
 そしてもう一つは、襲撃のタイミングだ。
「敵の行動が完全に読めない以上、全ての地区をほぼ同時に制圧する必要がありそうだ。情報屋が海京のシステムを掌握した後は、管区長全員を発見した一分後で合わせると良いと思うのだが、如何だろうか?」
 異論はない。
 アレンが失敗した場合に備えて、スペアプランも検討する。
「もしアレンさんが辿り着くより先に管区長と首謀者全員の居場所が特定出来ているようでしたら、順序を制圧、奪還に変更することも視野に入れておきましょう。あとは、管区長の居場所をある程度絞れればよいのですが……」
 思案するロザリンドに、林田 コタロー(はやしだ・こたろう)が申し出た。
「う! ろざりんろしゃん。しょこは、こたに、まかいてくらしゃい! こた、ねーたんとじにゃのために、あきといっしょにじょーほーあつめ、すうんれす!」
 国軍所属であるため、ユビキタスで国軍のコンピューターにアクセス出来る。海京の北地区には国軍の駐屯地があるため、そこのローカルネットワークを介せばある程度海京の情報も得られるはずだ。
「こた、ぱしょこんと、ひとしゃがし、とくいなんれすよ! あと、『迷彩塗装』もとくいれす」
「心強いね。これでアジトの方も心配はいらなさそうだ」
 作戦行動に当たっての後方支援要員も充実してきた。
「では、それぞれの担当地区を決めましょう」
 統合された情報を参照しながら、役割を決定する。

・北地区
夏野 夢見(なつの・ゆめみ)
夏野 司(なつの・つかさ)
戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)
リース・バーロット(りーす・ばーろっと)
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)
エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)
叶 白竜(よう・ぱいろん)

・南地区
関谷 未憂(せきや・みゆう)
リン・リーファ(りん・りーふぁ)
榊 朝斗(さかき・あさと)
ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)
アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)

・中央地区
樹月 刀真(きづき・とうま)
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
水鏡 和葉(みかがみ・かずは)
ルアーク・ライアー(るあーく・らいあー)
月舘 冴璃(つきだて・さえり)
東森 颯希(ひがしもり・さつき)

・東地区
御凪 真人(みなぎ・まこと)
セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)
トーマ・サイオン(とーま・さいおん)
秋月 葵(あきづき・あおい)
魔装書 アル・アジフ(まそうしょ・あるあじふ)
橘 恭司(たちばな・きょうじ)

・西地区
林田 樹(はやしだ・いつき)
ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)
レン・オズワルド(れん・おずわるど)
メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)
ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)

・後方支援
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)
天貴 彩羽(あまむち・あやは)
スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)
緒方 章(おがた・あきら)
林田 コタロー(はやしだ・こたろう)

・アジトの防衛
高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)
斎賀 昌毅(さいが・まさき)
マイア・コロチナ(まいあ・ころちな)
阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)
リデル・リング・アートマン(りでるりんぐ・あーとまん)

 サイオドロップのメンバーはそれぞれのサポートに回る形で協力する。
「ガーネットさん、サファイアさん、モーリオンさんは地上に出たら待機して下さい。一般人の安全確保、及び非常時の対処をお願いします」
 万が一地上で問題が起こったときは、彼女達の力が必要になる。そのため、一般市民に混ざってもらうのだ。
「ルートに関してですが、海京の地下はエキスパートも熟知しています。正規の入口は全て固められていると見たほうがいいでしょう」
「だが、我々は何もしていなかったわけではない。秘密裏に地上との連絡口を設けた。天沼矛を除いた各地区に二ヶ所ある」
 代表の指示を受け、ロザリンドはサイオドロップが独自に作った通路をピックアップする。
「地区境の両端ですね。中央地区に至っては、天沼矛のエアダクトと繋がっています」
 しかしどのルートを取るにしても、まずは地下の安全を確保しておきたい。
「固定式のPキャンセラーの位置、教えてくんねぇか?」
 斎賀 昌毅が声を発した。
「サイオドロップのアジトが地下にあるってことを、向こうは掴んでる。けど、空京から援軍が転送されてきたことは知らない。相手に気付かせないためにも、Pキャンセラーを起動して『今地下にいるエキスパート』は最低でも封じる必要がある」
 地下が移動不可になったら、相手は入口付近で待機せざるをえなくなるだろう。その間に、サイオドロップの極秘ルートを使って地上へ送る。
「電気室だ。そこに行けば、地下全ての装置を同時に起動出来る。場所は、ここだ」
 代表が地図を指差したが、そこには空間がなかった。
「エキスパートが見つけられないように、隠し部屋になっている。そのポイントまで行って、これを押せばいい」
 代表が昌毅にリモコンのようなものを手渡す。
 問題は、そこに行くにはエキスパート部隊との戦闘が避けられないということだ。
「エキスパートの相手は私が引き受けよう。装置を作動させるまでの足止めをすればいいのだな?」
 リデル・リング・アートマンが申し出る。無論、サイオドロップの面々もだ。
「それでは、宜しくお願い致します」
 他の制圧組は、仮面を手に各々エキスパートに見つからない範囲で待機することになった。起動後、迅速に地上へ行くためだ。
「最後にいいですか?」
 関谷 未憂が静かに口を開いた。
「今回のクーデターは、もしかしたら『クーデターを起こし、それが鎮圧される』までを『誰か』が想定しているのかもしれません。最初から、シャンバラが要求を呑むはずがないと考えた上で。強化人間や、クーデターを起こした人物の命を奪ってしまったら、筋書きを書いた『誰か』が次の行動を起こす口実に使われるのかも知れません。
 ……考えすぎ、かもしれませんけど」
 苦笑する、未憂。
「『近いうちに、その日は来るでしょう。新世界への扉が開く日が』。ポータラカでローゼンクロイツと名乗った男は、そのようなことを言ってました。そして、自らを『変革者』と呼ぶノヴァ・ホワイトスノー。彼らは未来に大きな何かが起こると確信しているようでした。
 ……それが今回のクーデターなのでしょうか?」
 叶 白竜が吐露した。
 ローゼンクロイツ、という名に未憂が反応した。
「私達は、試されているのかもしれませんね。その『誰か』の筋書きを破れるかどうかを。
 ……それさえも、あの人にとっては『筋書き通り』なのかもしれませんが」
 ローゼンクロイツがどんな人物か知っている彼女としては、この件は彼によるものではないと考えているようだ。
「ただ、あの自称天住の後ろには『十人評議会』の影がある。作戦が上手く行けば、評議会の実体に近づけるかもしれない」
 と、アレン。
「ただ、それがもし事実だったとしたら、このクーデター自体が『真の目的』から目を背けさせるためのものかもしれませんね。これも深読みし過ぎなのかもしれませんが」
 考えれば考えるほど、どつぼに嵌まっていきそうだ。
「全ては『神のみぞ知る』、って言いたくなってくるよ。だけど、やるしかない。この作戦が、被害を最小限に抑えるやり方なんだ」
 アレンの言葉に、皆が頷く。
「『命を奪わず』相手を無力化する方が、相手の生命活動を停止させるよりも難しいです。それに、相手は相当な実力者。なにより、どうか自分自身を最優先に」
 未憂がこの場の者を案じるように呟く。
「我々がすべきは殺し合いではない。この街を取り戻すことだ。宜しく頼む」
 極力犠牲は避けたい。それが代表の胸中のようだ。
「皆さん、どうかご無事で」

* * *


「そうだ、代表さん。一つ確認しときたいことがあんだが、いいか?」
 各々が作戦準備を完了したタイミングで、高崎 悠司が問うた。
「これだけ水面下で色々準備してたんだ。それに、天住への返答を待たずにサイオドロップを潰しにかかっている。ってことは、あんたらは連中にとって不都合な何かを持ってるってことだろ? 援軍である俺達に任せっきりってのも、サイオドロップが全滅したらヤバイからか?」
 あくまでサイオドロップはサポートに徹している形となっている。
「状況的に、戦力も相手に対して圧倒的に少ないようだし、バンザイアタックしろなんて言うつもりはねーよ。ただ、情報は多いに越したことはなさそうだしな」
「三年前の事件の真実を、私は知っている。だから消しておきたいんだろう。もっとも私の正体を掴んでいるにしろそうでないにしろ、海京の役員が全滅した以上、我々を野放しにしておく理由も向こうにはないがな」
「なるほどねぇ。だけど、その真実とやらはもっと早い段階で公表すべきだったんじゃないか?」
「三年前、ただのいち生徒に過ぎない私には力がなかった。それに、強化人間が暴走したという事実は変わらない。公表したことで風間を退かせることが出来たとしても、その先にあるのは上層部による『処分』だ」
 だから、力を蓄える必要があったのだと。
「本来ならば、海京の役員を全員始末した後で、我々がクーデターを起こす予定だった。そこで風間を始末し、真実を公表しようと計画を練っていた」
「と思ったら、死んだはずの人間が風間を殺し、クーデターを起こしてしまったと。三年前の復讐って理由付けも出来るわけか。だけど、この襲撃は相手の化けの皮をはがすチャンスかもしれねーぜ?」
 上手くいけば、このクーデターが「鎮圧されること前提」であったとしても、その後「誰か」が行動を起こすための布石を打たせずに済むかもしれない。
「とはいえ、アレンが海京のシステムを奪還しなきゃ厳しいものがある。それと、あんたの正体を明かしてもらわないといけねーな」
 サイオドロップのマスクを借り、デジタルビデオカメラを手に持つ。
「あとは記録が必要だ。ちょっと行ってくんぜ」