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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
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リアクション

「間に合った!」
 古代都市の最深部に、【イゾルデ】と【雲隠】の二機が飛び込んできた。
 蘇芳 秋人(すおう・あきと)は【ジズ】と【ナイチンゲール】の間に割り込み、通信を行う。
『ここに来るまでの間に、途切れ途切れだったけど、聞こえてきたよ。この世界は繰り返しているって』
 それを知ったときは、衝撃を受けた。
 今、自分がいる世界とは別の世界があり、もしかしたらそこでもこうして戦っていてもかもしれないという事実。
(秋人様……【ジズ】と【ナイチンゲール】に……干渉を……試みます)
 覚醒状態のブルースロートによる機体干渉を、蘇芳 蕾(すおう・つぼみ)が行おうとした。
(駄目です……どちらにも……聞きません)
 二機とも他の機体へ干渉する能力を持っている。もちろん、初めから通用するなどどとは思っていない。
 だが、何もしないでいるよりは、やって駄目な方がマシだ。
『敵も味方も関係ない。死んでいい命なんて何一つとしてないんだ。皆で生きて帰る。だから、ここまで来たんだ!』
 死んでいい命は一つもない。
 きっと義姉さんもそう言ってくれる、もちろん、自分も死ぬつもりなんてない。
 たとえ、別の世界で皆生きることになるのだとしても、「ここにいる自分」ではない。それは死ぬのと同じではないのか。
「『回帰の剣を止めるのはオレ達に任せて、これ以上君達は繰り返しちゃいけないんだ。新しい道を皆で歩もう!」
 エネルギーシールドを突き破り、【ジズ】のライフル弾が【イゾルデ】の右肩を貫いた。
『分からないかな? この世界にいる限り、君達の言う「皆」に、僕は入れない。君はこう考えているはずだよ、「罪を償ってから」って。世界を変えたい、皆を救いたい、ただやり方が違うだけで、君達とやってることは同じだよ。だったら、君達は、悪を裁くヒーローじゃない。僕と同じ、ただの罪人だよ』
 ノヴァが、止まることはない。
『正しいとか、間違っているとか、そんな考えは僕にはどうでもいい。ただ、僕自身が出来ることを、この世界の歪みからみんなを救い、僕自身もまたやり直せるように――ここで「この世界」の君達を消すだけだよ』
 【ジズ】が、「回帰の剣」の起動準備を始める。
『みんな……』
 ヴェロニカからの通信が入る。
『ループのことを知って、「女神の祝福」を起動すれば、また繰り返すことになるかもしれないって……分かった。でも、私はそれを使うよ』
『ヴェロニカ……』
 ニュクスが心配するような声を向けるのが聞こえた。
『さっき、言ったよね? まだこの世界には一つ、「可能性」が残されてるって。だったら、私はそれに賭けてみたい。ここで使わずに皆を見捨てることになるより、私は「未来」を拓ける「可能性」を信じたい』
 彼女が強い意志を感じさせる声で、言った。
『――皆の力を貸して』
 さらに、続ける。
『私とニュクスだけだと、多分また繰り返すことになる。でも、皆の力があれば、大丈夫』
『……トリニティ・システムの完全同調による、真の完全覚醒。きっと、それが鍵になるわ』
 ニュクスの声が入ってきた。
『確かに、それが駄目なら……』
『大丈夫だよ、ニュクス。皆がこの世界で生きることを、「未来(あした)」を望んでる。だから、私は皆を信じる。みんなも、私達を信じて欲しい。今まで戦ってきた、たくさんの「皆」と「私達」。この世界で、一緒に戦ってきた、今も一緒に戦っている皆。その想いを、決して無駄にはしたくない。その想いが、今、ここに繋がっているのだと、信じて』
 武器は失われてしまった。
 けれど、まだ『翼』は折れていない。
『ニュクス、「今度こそ」皆で、一緒に――行こう』
 そして、ヴェロニカとニュクスの声が重なった。

「「『女神の祝福』――起動!」」