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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

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「ここは、なんなんだ……」
 辿り着いた小部屋の中を見て、トマス・ファーニナルが身構えた。
 部屋の中には小さなカプセルがたくさんならんでおり、そのいくつかは空っぽになっている。
「どうやら、ここが彼女たちの保育園、つまりは調整ラボのようですね」
 冷静にそこにある機器を調べながら魯粛子敬が言った。
「調べるなら手早くやってくれよ」
 入り口を警戒しながら、テノーリオ・メイベアが言った。
「慎重に一体起動させてみるか。何か情報を引き出せるかもしれない」
「ふむ、さて、問題はどうやってこの機械を操作するかですな……」
「何か来たぞ」
 トマス・ファーニナルと魯粛子敬が操作に悩んでいると、テノーリオ・メイベアが注意をうながした。あわてて三人が物陰に隠れる。
 小型機晶姫だが、ちょっと黒ずんでいる。
 ラボの中に入ると、その小型機晶姫はコンソールのボタンを一つ押して、空いているカプセルの中に入った。
「寝に来たのかな?」
「ダメージを受けていたようですから、修復でしょう」
 ちょっと的外れなことを言うテノーリオ・メイベアに、魯粛子敬が答えた。
「とりあえず、このボタンがあのカプセルの出入りの物のようですね」
 コンソールを調べながら魯粛子敬が言う。コンソールに現れているのは、あの小型機晶姫のデータのようだ。それらが、いったん初期化されていく。どうやら、ソフトウエア的にもメンテナンスが可能らしい。ということは、再起動時に、いくつかの用途別プログラムをセットすると言うことだろうか。
「面白いものだな……」
 不意に姿を現した綺雲菜織に、トマス・ファーニナルたちがあわてて身構えた。だが、お互い遺跡に入る所で見覚えのあった顔だと分かって、ちょっとほっとする。
「あの小型機晶姫は修理用みたいなのだが。再起動して情報を手に入れてみたいものだ」
「それは、悪くないですな」
 魯粛子敬が綺雲菜織にあらためて同意する。
 小型機晶姫の修復は、驚くほど素早く行われていった。破損したパーツ交換が迅速なところを見ると、このラボでは、小型機晶姫の修復だけでなく、あるいは組み立てをも行える施設なのかもしれない。
「では、起動させてみましょう。一応、注意してください」
「ああ、何かしようとしたらすぐに破壊してやる」
 ボタンを押す魯粛子敬の後ろで、テノーリオ・メイベアが身構えた。
 そのときだ。突然、ラボの中で爆発が起こった。小型機晶姫の入ったカプセルが、次々に破壊されていく。
「よおし、どんどんやっちまえ」
「へへへへ、まっかせてくだせえ、ピンクモヒカンの兄貴!」
 フラワシを使ってラボの中を攻撃するバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店のモヒカンを、ゲブー・オブインがよしよしというふうになであげた。
「こら、中に人がいるんだ、よせ!」
 無差別攻撃に、トマス・ファーニナルが叫んだ。巻き添えはごめんだ。
「ん? 一般人かいな? ゲブーはん、やめんかい」
 その声に気づいた大久保泰輔が止めようとするが、当然のようにゲブー・オブインとバーバーモヒカンシャンバラ大荒野店は聞いちゃいない。
「人の話を聞くのだ!」
 讃岐院顕仁が、ごすんとやって、やっと二人をおとなしくさせた。
「ラボを発見。破壊しました」
 ちょうど駆けつけた宇都宮祥子が、隊長に報告を入れる。返事はなかったが、一応ちゃんと伝わってはいるだろう。
「まったく、なんてことをしてくれたんだ。せっかくの情報源が……」
 すっかり破壊されてしまったラボ内を見回してトマス・ファーニナルが言った。
 起動中であった小型機晶姫も、ソフトをセットする前に倒壊したカプセルから放り出される形で倒れている。
「せっかく、話が聞けるところだったのに」
 そっとその小型機晶姫を拾いあげると、綺雲菜織がそれをだきかかえた。
「ああん、貴様ら何者だ? 誰の許しを得て、ここにいやがる」
 モヒカンの横にでかいコブを作ったゲブー・オブインが、トマス・ファーニナルたちに詰め寄った。
「それは、こっちの台詞だぜ」
 負けじと、テノーリオ・メイベアが言い返す。
 まさに一触即発のところへ、さらに樹月刀真たちがやってきた。
「お前たち、いったい何をやっているんだ?」
 ラボの中と外で睨み合っている者たちにむかって樹月刀真が言った。
「悪いわね、これもお仕事なんでね。邪魔するなら……」
 宇都宮祥子が、大剣を構えて言った。
「きっと、あの人たち、連絡のあった傭兵……」
 漆髪月夜が、樹月刀真に告げる。
「みなさん、戦いはいけません。やめてください」
 白虎に乗った封印の巫女白花が、双方の間に入って両手を広げた。
「へへへへ、いいおっぱいが現れたぜえい」
 ゲブー・オブインが、いただきとばかりに封印の巫女白花を後ろからだきしめる。
「きゃっ。まだ刀真さんにも揉まれたことないのに……。白虎、やっちゃいなさい!」
 悲鳴をあげた封印の巫女白花の命令を受けて、白虎がバクンとゲブー・オブインのモヒカンを食い千切る。
「ああっ、また、ピンクモヒカンの兄貴がつるつるに……」
 バーバーモヒカンシャンバラ大荒野店が悲鳴をあげた。
「ええと、この方たちはひとまずおいておいて、どうですか、あなたたちに見せたい情報があるのですが」
 そう切り出すと、魯粛子敬が傭兵部隊の隊長に関する情報を大久保泰輔たちに開示した。
「これは……」
 一通り目を通した大久保泰輔が、パワードマスクの下で渋い顔をした。
「あーあ、やっぱりかあ。胡散臭いとは思っていたんだけどね。それでどうする?」
 想定内だと、宇都宮祥子がちょっぴり肩をすくめた。
「俺は、おっぱいの味方だぜ。当然、おっぱいとは呼べない野郎の味方はしねえ」
 こういうときだけきっぱりとゲブー・オブインが言い切った。