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【Tears of Fate】part2: Heaven & Hell

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【Tears of Fate】part2: Heaven & Hell

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●『シータ』の予感

 小型飛空艇が空を哨戒している。操縦桿を握っているのは一人のクランジである。無論量産型ではない、ギリシャ文字が当てられた、いわゆる『ネームド』の一人だ。
 しかしそのクランジは、シータに与する者ではなかった。
 だからといって塵殺寺院ではなく、
 無論、美空のようにすべての破壊を自らの存在理由とする者ではない。むしろその正反対だ。
 彼、バロウズ・セインゲールマン(ばろうず・せいんげーるまん)は唯一の男性型クランジ――クランジΩ(オメガ)、彼は、あらゆるクランジを救いたいと願い、この地を踏んだ。
「感じますか……?」
 シータの存在を、と問うのは榊 朝斗(さかき・あさと)だ。彼はバロウズの機に同乗し、空からの探索に加わっているのだった。目指すはクランジΘ、この戦いの首領である。
「……パイさん、それから美空さんの存在を感知しました。けれど、僕たちが目指すのはそこじゃない……」
 クランジ同士は引き合う。
 何か不思議な力が働き、クランジはクランジの存在を感じることができるのだ。集中すればその感知力は高まる。だからバロウズは戦いに邪魔されぬ上空を選んだ。
 飛空艇が旋回した。生じた風に髪を煽られながら、朝斗はじっと考え事をしていた。
(「『クランジによる国家樹立』か……ある意味ドクターミサクラって奴への復讐なんだろうな」)
 クランジの生みの親……とまではいかずとも、少なくとも重要な関係者として、『ミサクラ』という科学者が関与していることまではわかっている。この戦いの遠因は、ミサクラにあるのではないかと朝斗は想像していた。
(「アイビスやバロウズさんの気持ちは複雑なはずだ。仮にも『クランジ』という姉妹、兄弟という繋がりがある」)
 できることなら、すべてを救ってやりたい。
 けれど朝斗は現実から眼を背けたりはしないのだ。
(「けど僕たちは万能じゃない。何かを奪わなければいけない時だって来るだろう」)
 その時は――収奪の業は、
(「僕が背負ってやる」)
 朝斗の中で結論はでていた。自分一人、手を汚すことで多くを救えるのならばためらうまい。
 朝斗の思考は中断した。
「感じます……!」
 突然バロウズが声を上げたのである。
「直接会ったことはない。けれど、この嫌な感じは……頭のなかに小さな蛇が何匹も入り込んでいるような気持ちの悪い感じは……巨悪の存在を示しています……!」
 同時に、不思議と懐かしい気持ちもバロウズは抱いたのだがそれは口に出さなかった。
 急速に高度を下げ、バロウズはパートナーたちにも号令を下した。
 魍魎島の東北、切り立った断崖だ。
 彼女はそこにいる。