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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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第2章 ホーティ義賊団のファーストミッション 3
 バルクに続きホーティも制御コンピュータを破壊することに成功。残るはあと一つ。
「……ルニ」
「うん、あった」
 ルニと共に先行していたタマーラ・グレコフ(たまーら・ぐれこふ)。他の契約者たちは白騎士を倒してから来ると約束していた。
「開ける」
 ルニの言葉にタマーラは頷く。それを見たルニがゆっくりと扉を開けた。
 部屋の中を見やれば、白騎士たちが壁に沿って並んでいた。すぐに戦闘態勢を取る二人。
「……去れ」
 落ち着き、それでいて威圧感のある声が二人の鼓膜を震わす。声の主は、“白き風”ガーノ。
「だめ。それ、壊さないと」
「できん。だから、去れ」
 ガーノに戦闘の意志は見受けられなかった。逆にルニたちを引かせ、戦闘を回避しようとする姿勢だ。
 そんなガーノの言葉に、素直に首を縦に振るわけにはいかないルニ。無口な彼女も、必死で言葉を紡ぎだす。
「私は、この世界が好き。ホーティも、バルクも、ピィチーも、タマーラも」
「…………」
「だからこの世界を守る。誰でもない、自分のために。……だから、そこ、どいて」
 白騎士に囲まれながらも凛と立ち、ガーノを説得するルニ。
「可愛い女の子がそう言ってるんだから、どいてもらえないかしら?」
 道中の白騎士たちを蹴散らし、真っ先に駆けつけたのは蓮見 朱里(はすみ・しゅり)。その傍らにはアイン・ブラウ(あいん・ぶらう)もいる。
「…………」
「あなたがどこまでアダムを慕っているかはわからない。けれども、アダムがやろうとすることは決して許されることではない。そうでしょう?」
 朱里もまた、ルニと同じようにガーノの説得を試みる。
 彼女はアダムの行いが、許されることではないとガーノも気付いていると予想していた。だからこそ、説得も可能だと判断したのだ。
「……確かに、許されぬかもしれん」
「なら」
 朱里が言葉を続ける前に、ガーノが言葉を発する。
「しかし、我は老兵。もはや曲げられぬ」
 それまで杖代わりにしていた大斧をゆっくりと構える。それは拒絶を意味し、戦闘の始まりを意味していた。
「最早言葉は不要。……参られい」
「ガーノ……僕たちとて、曲げられん。守るべきもののために、真っ向からいかせて貰う」
 ガーノと相対するようにアインが前に出る。
 事前に朱里から『プロフィラクセス』をかけてもらったアインにぬかりはない。
「そういうわけでルニちゃん、制御コンピュータを壊しちゃおう。最後まで走りぬけて、世界を救おう」
「……うん」
 どうやら、今回もルニは突っ走るようだ。仲間のために、最後まで。
「老兵とて、“白き風”と言わしめた力、存分に味わうがいい」
 ガーノの周囲に白き風が漂う。同時に、威圧感が辺り一体を支配する。
 しかし、臆することなく前に出たのはアインだった。
「守りたいものにかけて、僕は退かない!」
 ガーノの威圧を跳ね除けて、まさしく真っ向からガーノへ攻撃をしかける。
 対するガーノも避ける素振りを見せず、あまつさえ守りも固めずモロに攻撃を受けた。
「なに?」
「これが、白き風」
「……傷が!?」
 アインの見事としか言いようがない攻撃による傷が、みるみるうちに塞がっていく。
「倒したくば、全霊を持て。でなくば焼け石に水」
 強力な自己再生能力の前では生半な攻撃は通用しない。それを見せるためだけに、わざと攻撃を受けたのだ。
「なら、痛みだけってのならどうだ?」
 突如、現れた声。その自分の声すら置き去りにガーノへ向かうのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)。自慢の俊足で息もつかせぬ間に接敵。
「はいゲット。そんじゃもう、離しませんよっと。……抵抗しないんで?」
「好きにしろ」
「余裕かい。なら、遠慮なく」
 【アブソービンググラブ】を使い体力を奪い始める。更にガーノの腕をひねり、背後に回る。これならば、傷はできずとも激痛は伴う。
「っと、更に極悪にできますけど、どうします?」
「痛みで屈服、か。ぬるいものよ」
「今さら言っても、もう離してあげませんよ? もう決まっちゃってるし」
「抜ければいい」
「どうやって?」
「こうして、だ」

ゴキンッ!

「……まじですか」
「ふんっ!」
 鈍い音が部屋に響く。それと同時に自由になったガーノが唯斗に襲い掛かる。
 しかし、唯斗も素早く後ろに飛び退き攻撃をかわす。
「……まさか、自分で折るとはね」
「腕の一本など、安い」
 ガーノの言葉に偽りはない。必要ならば全てを捨てる覚悟が、ガーノにはあった。
「今ので不可視の封斬糸まで無理やり断ち切られるし……こりゃ一撃滅殺の方がよかったか」
「そこの君! 何とか協力して足を止めよう。その隙にルニたちが制御コンピュータを破壊してくれるはずだ」
 アインが唯斗に協力を持ちかけ、それに唯斗も了承を示す。
「まあ、千の痛みでだめなら万。万でだめなら、億。それでだめなら、無量大数。音を上げるまでやるだけさ」
「その通りだ! 行くぞ、ガーノ! はあああ!」
 またもアインが真っ向から走り、ガーノへ渾身の一撃を振るう。
 だが、ガーノもやられてばかりはいない。
「甘いっ!!」
 振りかぶりの一瞬の隙に、思い切り大斧の柄で脇を強打されるアイン。
 痛烈な一撃に耐えられず吹っ飛び、壁へと激突する。
「アインッ!」
 即座に朱里が『命のうねり』をアインに使用する。
「助かる。まだまだ……ルニのため、朱里のため、世界のため、守るべき者のため、何度でも立ち上がる!」
 ガーノの痛烈な攻撃を受け、更に奮い立つアイン。それを見た唯斗の心も奮い立つ。
「まっ、どんな事情があってもだ……人様の世界をぶっ壊そうなんて輩に仕える奴に、負けるわけにはいかないってね!」
 強敵を前にも立ち止まることなく、果敢に攻める二人。
 そこへもう一人、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が参戦する。
「こんだけ熱いもの見せられたら、少しくらいあてられたっていいよな」
「今度は、こちらから行かせて貰う!」
 それまで一歩も動かなかったガーノがエヴァルトへ猛突進。見た目に反して、かなりのスピードだ。
「そりゃ回復力にものを言わせた戦法も取るよな。だがよ、当たらなきゃどうってことはないんだよ!」
 寸でのところでガーノの突進をかわし攻撃に転じる。と思いきやそのまま制御コンピュータの方へ転じる。
「要はこいつを壊せば話は終わり。戦う必要もなくなるってことだ」
「させると思うか?」
「今さら遅いだろ、って!?」
 エヴァルトが急停止する。何故ならば、制御コンピュータの前には分厚い白騎士たちの壁ができあがっていたからだ。
「……ずっとこう」
「倒しても、だめ」
 先ほどから何度も攻撃していたルニとタマーラがそう言う。倒しても倒しても、白騎士たちが湧いてくるのだ。
「くそ、面倒くさいことを」
「我を負かせば、どかしてやろう」
 つまり、俺と戦えとガーノは言っているのだ。
「……アダムとやらの掲げる理想ってのは、そこまで心酔するものか? 何をどう美談に仕立て上げたところで、とどのつまりは馬鹿げた選民思想でしかないだろうに」
「それを信じる大うつけもいる。それだけだ」
「……正義の反対は、また別の正義ってか。……嬢ちゃん、制御コンピュータは任した。こうなりゃあいつをぶっ倒すの手伝うしかなさそうだ」
 そう言って制御コンピュータはルニに任せて、エヴァルトも戦闘へ参加する。