校長室
幽霊部員、誕生!?
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第4章 遠き雲に日は落ちて やがて、日が傾き、校内のあちこちにあるスピーカーからドヴォルザークの交響曲第九番の第2楽章が流れてきた。 なかなか決着がつかなかったウィングと涼司の試合は、この放送をもって時間切れ、引き分けと判定された。明日からはまた通常の授業日程になるため、機材や備品はすべて今日中に片付けなければならない。延長戦はできなかった。 「何とか、一日無事に終わりましたか……」 昼過ぎからずっと、校舎の上から皆のバックアップをしていたロクハは、ほっと息をついて双眼鏡を下ろした。 「お疲れさま、みんな」 そして、一人非常階段を下って行った。 『みなさん、ありがとうございました。楽しかったです』 夕陽の中で、今日一日行動を共にし、守ってくれた生徒たちに、エリサは頭を下げた。 「ねえエリサ、ウィングのパートナーにならない? パートナー契約すれば、実体が持てるようになるんじゃないかと思うんだけど」 ウィングのパートナーである剣の花嫁ファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)は、エリサにそうもちかけた。 だが、エリサはかぶりを振った。 『大陸に身体がないわたしは、たぶん、このまま誰かのパートナーになることはできません。本当は地球上に魂として現れるはずだったのに、死にたくなくて、もっと生きていたくて、魂のまま大陸に残ってしまったから……』 「ヘンな言い方になるけど、一回、ちゃんと死なないとダメっていうこと?」 ファティの問いに、エリサはうなずいた。 『だから、今はお別れします。でも、いつかまた、みなさんに会いに来られるといいな……』 そして、エリサは瞳を閉じた。一瞬、花音の身体の背後に、12・3歳の、長い髪をおさげにした少女の姿が浮かび、ふっと消えた。 「……行っちゃった」 目を開き、呟いて、花音は腕輪を外した。肌にぴったりと張り付いていた腕輪は、いつの間にか一回り大きくなっていて、するりと腕から抜けた。 「これ……」 筑摩彩が、仕立て上がったエリサの刺しゅう入りのハンカチを差し出した。 「エリサのものだけど、渡しそびれちゃったから」 「その腕輪、どうするの?」 陽神光が花音に聞く。 「エリサはまた来たいって言ったから、鑑定部で保管しておいてもらって、エリサが来たら、返そうと思います」 花音は彩からハンカチを受け取り、腕輪と、葛葉翔がくれたモモンガのキーホルダーを大切そうにそれに包んだ。 「みんな、本当にありがとう」 「俺からも礼を言うぜ。ありがとな」 花音と涼司は、深々と頭を下げた。 こうして、蒼空学園の部活動紹介日と幽霊騒ぎは、無事、幕を下ろしたのだった。
▼担当マスター
瑞島郁
▼マスターコメント
はじめまして、瑞島郁(みずしまかおる)と申します。 蒼空学園の最初のイベント、部活動紹介は楽しんで頂けましたでしょうか。 「部活に加入している」とアクションに書かれた皆さんには、称号をつけてあります。他のシナリオでも、その部活の部員として行動してくださって構いません。すべてのシナリオで部活に入部できるわけではありませんが、今後も部活関係のシナリオは公開される予定です。お楽しみに。