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第2章 女子立ち入り禁止?!


 警備班から取材許可証ももらえたところで、次は闘技場の中に入ってみましょう。
 おや…闘技場の入口から、般若のような形相を浮かべた少女一人が出てきましたよ。ちょっとお話を聞きに行って………って、うわぁぁぁぁー!!!
「良いもん発見や!!!!」
 叫ぶや否や飛びかかってきた小動物。もといツインテールの少女…蒼空学園の桜井 雪華(さくらい・せつか)ちゃんです…。
「うちが折角、アシスタント嬢に立候補したのにぃ。イニチエリの奴らが女はダメや言うとんや!」
 まぁ…薔薇の学舎主催だからねぇ。進行アシスタントと言えど、ステージに立つ人間はすべて美男子でそろえたいんじゃないでしょうか…。
「だから、ここでアシスタントさせてや!」
 いや…それはまずいって…。
 イヤイヤと首を左右に振る雪華は、つかんだ服の裾を離そうとはしません。
「えぇやんけっ。アンタらだって、美少女が一緒の方が良い絵がとれるってウハウハのくせにっ!」
 いや…それはそうなんですけど……なんか遠回しに嫌みを言われたような…
 とりあえず彼女に会場の中の様子について伺ってみましょうか。
「そりゃぁもうすごかったで!」
 ………簡潔な感想をありがとう…。
 何はさておき、百聞は一見にしかず。会場の中に潜入です。


「我らがジェイダス校長のために創りあげた至極の空間をとくとご覧あれ!」 
 得意げな表情を浮かべながら、会場に案内してくれたのは、シャンバラ教導団工兵科所属の青 野武(せい・やぶ)さん。
 せり上がる壁のように作り上げられた階段状の観客席。舞台が設けられた中央は深く掘り下げられていて、中にいる人が普通にジャンプしても観客席には手が届かない仕様になっています。これはコンテスト会場と言うよりも、獣と獣が戦う闘技場というべき代物ですね。
 薔薇の学舎主催のコンテスト会場としては、些か無骨すぎる感じがしないでもないのですが。
「それに関しては…だじゃな」
 青さんは「待ってました」とばかりに観客席の方で黙々と作業を進めていた少年に声をかけました。
「おーい、深草くん、そっちの方はどうじゃ」
「…順調」
 ぶっきらぼうな口調で答えたのは、深草 祐介(ふかくさ・ゆうすけ)くん17才。煌びやかな印象が強い薔薇学生には珍しく無口で表情の少ない男の子。
 え、と、彼は今、何を作っているのでしょうか?
「内緒じゃよ」
 ニヤリと笑う青さん。
 って、教えてくれるんじゃないんですか?!
「簡単に言うと女性専用席じゃな」
 男女7才にして席を同じうせず。と、言いますからねぇ。
 さすがは女子禁制の薔薇の学舎。その辺は徹底しています。
 でも、それならばラインでも引いて、場所を分けるだけでも良いのでは?
 深草くんの様子を見ていると、配線やら何やら仕込んでいるようにしか思えないのですが。
「その辺ははじまってからのお楽しみじゃ」
 意味深に笑われると、逆にすっっごく気になるんですけど…。


「大変やでー!!!」
 おっと、ここで、いつの間にか姿を消していた雪華ちゃんが息を切らせて走り込んできましたよ。
 慌てた様子の雪華ちゃん。何やら手紙のようなものを持っているようですが。
「見てや、これ! どないしよっ?!」
 渡された手紙を読んでみると…
『オーディション30分前に会場の裏で待ってます。直ぐ終わりますからきっと来て下さい。 キティ・ミント』
 えーと、何かしでかしたの、雪華ちゃん?つか、ただのナンパじゃないの、コレ。
「キティだなんて女の名前やんけ。うちは女にナンパされる趣味はあらへん」
 まぁ…それはそうですよね。でも、取材中だしなぁ…。
「何か困ったことでもあったの?」
 おっと、ここでまたもや王子様登場。サラサラの金髪が目に眩しい美少年・クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)くんです!
 困っている女性を見逃さないあたり、さすがは薔薇学生と言いたい所ですが、何やら様子がおかしいですよ。
「ええトコに来おったな、アンタ。ちょっと付き合ってやっ」
「あ…あのっ?!」
 怒濤のような勢いで詰め寄られたクライスくん。何やら耳まで真っ赤になっています。どうもこれは…女性に免疫がないのでしょうか。
 ズルズルとクライスくんを引き摺っていく雪華ちゃん。それは「お願い」ではなく「連行」って言うんですよ…。とりあえず心配なので、私も一緒についていきます。


 案の定、会場の裏口に着いた二人を待っていたのは、突然の斬?でした。
「うわぁ?!」
「きゃぁぁっ?!!」
 剣先から繰り出された衝撃が二人に襲いかかります。しかし、クライスくんは素早く雪華ちゃんの身体を抱え込むと、横転して衝撃を交わしました。
「誰だ!」
 片膝を付いたままの体勢で腰間の剣を抜き放つクライスくんの前に、姿を現したのは覆面をした3人の男達です。
「ちっ、参加者は一人か」
「いきなり襲いかかるなんて卑怯だぞ」
 雪華ちゃんを庇い男達に立ちはだかるクライスくん。なんかこう、めっちゃ乙女心をくすぐる展開です。しかし、多勢に無勢。その上、明らかに草食系男子のクライスくんではあまりにも不利?!
 と、思いきや。暴漢の一人がリーダーらしき男に斬りかかったぁ?!
「主、助太刀いたします!」
「アナタ、裏切るのですか?」
「例え卑怯と言われようとも、常に主のために生きるのが騎士の勤め。恥じることはない。貴殿たちの策略に誘い出されたのが主であったことだけは誤算だったがな」
 覆面を取り、暴漢達に向かって堂々と言い放ったのは、クライスくんのパートナー、ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)くん。
 え…と、仲間割れに見えなくもないのですが、これは一体、どういうことなのでしょうか???
 何はさておきパートナーの登場に、クライスくんも力を得たのでしょう。
「場をわきまえろ下郎。貴公の醜き行いは、この場に相応しくない。うせるがいい」
 啖呵をきるクライスくん、表情はおろか口調もさっきまでとは別人です。
「ふん、正々堂々? 戦場では最後に立っていた人間のみが勝者なのだよ!」
 いやいや、それはそうかもしれませんが。ここは戦場ではなく、美男子コンテスト会場………って、えぇ??!!!!
 裏口に掲げられた看板にかかれていたイベント名は「ルール無用パラミタ最強決定戦」とありますよ?!
「2対2であれば問題ないだろう。今ここでどちらが最強か分からせてやろう」
 クライスくん達の行動に煽られたのか、暴漢達も覆面を取り去ります。
 その正体は、コンテスト参加者の一人、レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)くんとパートナーのシルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)くんです!
 どうやらレオンハルトくん達の「コンテスト参加者を事前に潰しておこう」という策略のようですが。なんかもう、この際ですから決着は闘技場の中でつけたらどうでしょうか…。