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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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 下り階段を降りた先、短い通路と正面の大きめの扉を前に、エメネアと学生たちは息を飲んだ。
 左右の扉は、古ぼけた武具たちが残された倉庫であった。
 残るはこの扉の向こう側。
 エメネアは観音開きの扉の両方に手をかけると、ゆっくりとそれを押しやった。
 広がるのは、とてもとても広い空間。
 ただ、至るところに太い丸い柱が立っている。
 そして、その大きな部屋の最も奥には大きな宝箱がどっしりと構えている。
「あれでしょうかーー???」
 エメネアはその宝箱を指差した。
 他を見回してもそれらしきものはその宝箱のみで、他には何もない。
 怪しいと疑っていた手紙の送り主も見渡す限りにはいないようだ。柱の影に隠れていれば、入り口からは見えない部分もあるため、確証は持てないけれど。
「近付いてみましょう」
 エメネアはゆっくりと歩を進める。彼女を護衛する学生たちも皆、歩を進め始めた。

 入り口から宝箱まで、半分ほど歩いたところで、重い扉が開かれる音が左右から響く。
 部屋の左右の中央辺りに扉があったのだ。
 その扉から、無数のゴブリンたちが部屋へとなだれ込んで来る。
「襲撃ー!」
 黒いスーツにサングラス姿のレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)が叫ぶ。同時に、エメネアの頭を押さえつけ、伏せさせた。
「はわわっ!?」
 押さえつけられ驚くエメネア。彼女の周りに居た学生たちは皆、それぞれの武器を手に、彼女の周囲を取り囲み、護るように立つ。
「エメネア、危ないから、下がってな」
 アサルトカービンを構え、遠山 勇人(とうやま・はやと)は言う。
 彼の機関銃のように弾をばら撒くような攻撃に、ゴブリンたちは一瞬、怯むものの、棍棒や弓矢を手に、学生たちに向かってきた。
「あらあら、たくさんね〜」
 オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は言いながら、床を蹴ると柱から柱へ飛ぶように駆け出す。ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)も高周波ブレードを手に、オリヴィア同様、柱を駆け出す。
 自分たちの頭上を移動するかのように、柱から柱へと駆け回る2人の姿にゴブリンたちは驚く。
「あははははは!」
 その隙を突いて、ミネルバは床へと降り立つと、鬼神の如き猛々しさで、高周波ブレードを振るった。
 ゴブリンたちはその一撃に耐えた後、ミネルバへと棍棒を振るってくる。後方からは矢を射るゴブリンたちも居る。
 それをミネルバは紋章の盾を構え、耐える。
 その間に、オリヴィアが前衛に立つゴブリンたちの後ろ側へと駆けていた。
 幾度目かのゴブリンかの攻撃を盾で受け止めたミネルバ。それと共に、オリヴィアが電雷を纏った拳をゴブリンへと叩き込む。
 更に円が呼び出した雷が、ゴブリンたちへと降り注ぐ。
「3対1で卑怯だとかいわないわよねぇ〜」
 倒れていく何体かのゴブリンたちにオリヴィアがくすりと笑いながら言う。
「気を抜かないで、次行くのだよ!」
 円がパートナー2人へ声をかける。
「封印を解く前とは、考えていたタイミングとは違いましたね」
 それまで気配を隠していたウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)は、パートナーのファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)の身体から、一振りの剣を取り出しながら言う。
「ウィングに祝福を……」
 剣を構えるウィングに、ファティが両手を組んで、祈った。
 彼女が祈り終えると共に、ウィングはゴブリンに向かって駆け出す。剣を上段の構えから、ゴブリンに向かって、振り下ろす。
 奇声を上げて、痛みながらも棍棒を振るい、ウィングへと反撃を試みるゴブリン。
「甘いです」
 けれどもウィングもそう易々と攻撃を受けるわけではなく、棍棒の動線を見切ると避ける。剣を構え直そうとしたところで、後方のゴブリンから矢が放たれた。
「っ!」
 咄嗟の反応が出来ず、浅いながらも傷を負う。
「癒すよ」
 ファティが傷口へと両手を翳す。薄らと血の滲んでいた傷口は、徐々に癒され、消えていった。
「今のうちに、あの柱の影へ」
 レロシャンはエメネアを近くの柱の傍へと誘導する。
「はいー」
 初めに、彼女に押さえつけられ、姿勢を低くした状態のままで居たエメネアは、中腰のまま、誘導された柱の傍へと移動した。
 彼女を護る学生たちもそれに合わせて、移動する。
「背の護りに就かせてもらいたい」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)とパートナーのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が名乗り出て、エメネアが背を向ける方を向くと、それぞれの武器を構える。
「最近身体が鈍ってるし、遊ばせてもらえるなら力貸すよ!」
「いしゅたんもやるー!」
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)はハルバードを、パートナーのイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)は薙刀を構えた。
 ミルディアが近くのゴブリンを掃除するかのような攻撃をしかける。続いてイシュタンが同じゴブリンへと、ミルディアと同じ攻撃をする。
 ゴブリンも負けじと棍棒を振るってきた。
「きゃっ!」
 避けきれず、腕を打たれる。思わずハルバードを落としそうになったが、そこは堪えた。
「ミルディア、大丈夫?!」
「ええ。ほら、注意を逸らさないで!」
 イシュタンの気がミルディアへと逸れると、別のゴブリンがイシュタンに向かって、棍棒を振り上げた。
「大丈夫!!」
 薙刀で、棍棒を払い、そのままゴブリンへも一撃入れる。
 ミルディアはハルバードをしっかりと握ると、先ほど痛みを与えていたゴブリンへと、一撃を与えた。腕を痛めた分、初手より弱いその一撃であったが、傷を負うゴブリンには充分だ。棍棒を落としたかと思うと、ゴブリンの身体も揺らぎ、倒れた。
 次は、と辺りを見回すと、学生たちの数以上にゴブリンが犇めき合っている。
「エメネア、危ないから少し下がっててね」
 彼女の傍で護衛をしていたアルステーデ・バイルシュミット(あるすてーで・ばいるしゅみっと)であったが、押し寄せるゴブリンの多さに、前線へと出ることにした。ランスを構える。
「戦闘の邪魔になってはいけマセン、エメネア様はシエルがお守りしマス」
 パートナーのシエル・テスタメント(しえる・てすためんと)もカルスノウトを構え、近付いてくるゴブリンへとけん制する。
 アルステーデは、構えたランスを向かってくるゴブリンに続けざまに繰り出した。2体同時に、同様の痛みを与える。
 棍棒を振り回してくるゴブリンを交わして、その横から、シエルは剣圧を纏った一撃を与える。
 もう1体がその先で待ち構え、攻撃を終えたシエルへと棍棒を振り下ろした。
「痛いデス……」
 打たれた痛みに、シエルは眉を寄せる。
「大丈夫っ!?」
 パートナーの様子を窺いながら、アルステーデは彼女を再度、ランスを続けざまに繰り出した。目の前のゴブリン、2体同時に痛みを与えていく。更にシエルからも攻撃が加わり、1体は倒れた。
(あの宝箱の中身が、エメネアさんが必要な『何か』なのか?)
 ゴブリンに囲まれてしまって、すっかり注目対象から外されてしまった宝箱へと神和 綺人(かんなぎ・あやと)は視線を向けた。
 すると宝箱のすぐ傍の柱の影から1人、ゴブリンではないものが姿を現す。
「エメネアさん、宝箱に!!」
 綺人の言葉に、皆の視線が宝箱へと向いた。