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白昼の幽霊!? 封印再試行!!

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白昼の幽霊!? 封印再試行!!

リアクション

 ハデスたちがマリーたちを追って廊下を踏み鳴らし進む。
「あそこ右に曲がったところだ!!」
「やれやれアナさんも困ったものだねぇ。よりにもよって俺を挑発するなんて」
 白衣を翻しながらハデスとカガチは廊下を曲がる。この向こうにはマリーたちがいるはずである。しかしそこに居たのはオルフィナが率いる盗賊団たちであった。オルフィナたちもエリザベータを追ってここにたどり着いていたのである。
 ハデスとオルフィナが対峙し、互いに視線をぶつけ合う。雰囲気的に同族だということを察したのにはそれほど時間はいらなかった。今視線をぶつけているのはどちらが上かを示すための威嚇行為のようなものである。
 しかしそれに飽き足らなかったのかオルフィナが顔を回しながら凄みを聞かせた口調でしゃべり始める。
「おい。あんたら。誰の許可もらって山賊名乗っているんだ!!」
「フハハハ!! 許可が必要なんてどこに書いてあるんだ?ヘスティア・ウルカヌスは知っているか?」
「知りません」
 きっぱりとした口調の背後でハデス率いる山賊団が笑う。その笑い方はオルフィナの山賊団とどこか本質的に似たような存在だということを語っているようだった。
「へぇ……じゃあ俺たちが目を光らせているのを知ってて、好き勝手やっちゃうわけ?それって面白くないなぁ。お前らもそう思うだろ」
「へい!! 頭」
「ピラミッドの頂点は一つしかない。奪う立場は一つだけで十分だ!!」
 勢いよく語りつくすと剣を構え、ハデスたちに敵意を向ける。ハデスは息が続く限り高笑いを続けていた。
「俺も同意だな。奪う立場は一つだけあればいい。ちょうど成果がなくなった今もう一度略奪を続けようではないか!!お前らの実力を見せてやれ」
 眼鏡を鈍く光らせると、ヘスティア、そしてカガチと多数のマネキンが襲い掛かる。それに臆することなくオルフィナたちの山賊団も進撃を開始した。
 廊下で轟音が響く。マネキンの一部や生徒たちが廊下を転がったり、床にたたきつけられたり、まるで乱闘騒ぎのようで幽霊が原因だとは思えないほどの迫力があった。
 数と数のぶつかり合いが繰り広げられ物陰でその様子を眺めていたエリザベータ、縁、咲耶たちは思い通りに進んでいることに笑う。
「このまま頃合いを見計らって飛び出し一網打尽にしましょう」
「私がお兄ちゃんとヘスティアちゃんを相手にします」
「それじゃあ予定通りあたしがオルフィナを相手にするか」
「私と百とマリーはカガチと漏れた雑魚の露払いをしましょう。みなさんいいですか?」
 もはや誰も待ったと叫ぶ者はいない。皆は不意打ちのような形で襲撃を加える。正々堂々とはかけ離れた内容であるが、さんざん略奪を繰り返している山賊たちに慈悲をかける必要はなかった。
 セフィーとエリザベータ、そして咲耶とアナスタシアはハデスとオルフィナがぶつかり合う瞬間を狙う。わずかに生まれるその隙を四人は何よりも求めていた。
「悪いわね。オルフィナ。少しだけ眠ってもらうわ」
 完全に隙を狙ったセフィーはさらに自分のマントを翻すとそれをオルフィナにかぶせる。そして視界を奪ったままそのまま鳩尾に鋭い一撃を加えると、手ごたえがあったことを確かめ薄く笑った。
「手をかけてくれたわよね。どうやって埋め合わせしてあげようかしら」
 前髪を書き上げて意識を失っている彼女を前にセフィーはいたずらに笑っていた。
 縁と百は雑魚の処理を担当するつもりだったのだが、数が数だけに一番手こずっていた。マネキンの幽霊はたとえ無力化させたとはいえ、また動き出してしまう。そこが最大の誤算だった。
「縁ちゃん。しっかり」
「任せなさい」
 そう言ったが、この数を独りでさばくのはやや苦しかった。じりじりと追い詰められていく縁はセフィーたちが援護に来てくれるまで持ちこたえることを優先させようとする。
「なんだ?佐々良じゃねえか?この状況はどうしたんだ?」
 背後から聞きなれた声が聞こえてきた。姿は真であるが、その雰囲気と何より顔と腕に浮かぶ痣から縁は理解を示す。
「諒さん!!」
 縁の声に階段を下りながら薄ら笑いを浮かべる諒に敵とみなしたマネキンが襲い掛かる。
「俺は別に戦うつもりはないのだけれどな。でも山賊となれば話は別だ」
 マネキンたちの一閃を諒は余裕を持った動きで避ける。そして薄笑いを浮かべながら襲ってきた幽霊の順番通りに手刀を繰り出した。白い軌跡を描いたそれは幽霊たちの体に深々と突き刺さる。暗闇を切裂いていく。
「もう少し反省してからこい!!」
 加勢に諒たちだけではない。セレンフィリティとセレアナたちもすでに武器を構えると、流れるような動きで幽霊たちの合間を縫う。
「全く!! そんなに暴れまわりたいのなら地獄でやっていれば? そんな度胸もないのでしょうけれど」
 セレアナが描いた軌跡上にいた幽霊は自分が何かされたのかさえ分からないまま倒れていく。つみあがっていくその幽霊たちの数を眺めてセレアナとセレンフィリティが腕を組み合わせた。
 うろたえ始めたのは山賊たちである。こうなれば自分の身を守ることを第一に手薄な道へ進みだした。ぼろぼろの状態である山賊たちは、捕まりたくない一心で進んでいたがやがてそこの道さえも自分たちにとっては希望でないことを知ることになる。
「へぇ……まだ幽霊たちが居たんだ。面白いことになっているね。ボクたちも混ぜてくれないか?」
ミリーとフラットが鏡写しのように腕を組みながら立っていた。その後ろでは煉が目の前にいるマネキンや山賊たちの幽霊を数えている。
「ひ……ふ……み……まぁこれくらいの相手なら何とかなるかな。物理的な手段で悪いが、勘弁してくれ」
 自分の刀をゆっくりと持ち直しながら、煉はその目つきを鋭くさせる。その意味をひしひしと感じた山賊たちはその場をおろおろするだけで、もはやその威厳もなにもかも失ってしまっていた。
 これまでさんざん略奪を繰り返していた山賊たちはその勢力を完全に失うこととなった。
 最後にエースとエオリア、そしてルファスとイリアが幽霊を守るように姿を見せる。
「あなたは俺が守っていますからね。大丈夫ですよ。指一本触れさせません」
 エースがそう都合のいいことを話しているのをルファンは飄々とした表情で聞いていた。あたりの山賊たちはほとんど無力化したようで、セフィーとエリザベータがてきぱきと縛り上げているのが見える。
 後に残ったのはハデスとそしてカガチだけだった。
「観念するのねぇ」
「年貢の納め時です」
「それはどうですかねぇ……」
 カガチはあくまでも余裕ぶった表情をしている。だが頬に浮かぶ冷や汗を隠し切れ得ていなかった。ハデスは対照的に狼狽えている。それが伝染しているのか、ヘスティアもおろおろと左右を振るだけだった。
 咲耶はそれが分かったのだろう。にっこりと笑う。それだけで十分だった。
「さて……いい加減観念してくださいね。これから長いお話が待っていますよ」
 それからはあっけなく、数分後には縄で縛られているハデスたちが床に転がることになるのだった。盗賊団は完全に解体され、雅羅に引き渡される。こうしてひとまずの解決を見せたのだった。
 盗賊団の解体はほかの場所でもよい動きを見せていたらしい。イリアとルファンたちだけが幽霊たちが略奪を繰り返して集めた物を広げ、目当てのものを見つけていた。
「あったよダーリン!!」
 その手の中には一つの髪留めが収められていた。やはりただの髪留めとはいくらかかんじる色が違っている。ルファンはよくやったと言わんばかりにその両手を自分の手で包んだ。
「探し物はこれであっているかのう?」
 幽霊はそれを見ると、それまでの泣き顔とは打って変わりぱぁっと顔を明るくした。エースとエオリアもそれにつられ、笑う。
「やっぱり私の言うとおり見つけられたでしょ?」
 そう言ったのはセレンフィリティだった。
「君はやはり笑顔のほうが似合うよ。これは俺からの餞別だ」
 エースはどこからか取り出したか分からない白いガーベラを、そしてエオリアはチョコレートを代わりに差し出す。
「君の新しい出発がうまくいくことを祈っているさ」
「ナラカで会えるのを、楽しみにしているぜ」
 諒と幽霊と握手を交わす。
みなさんありがとウ。それとお姉ちゃんも
 最後にイリアを指名して幽霊は蛍火のような淡い光に包まれ始めた。
「ありがとう」
 イリアはその言葉を深く心に刻みはにかんだ。幽霊に感謝される事は意外だったが、意外だったがゆえにその喜びは格別だった。