天御柱学院

リアクション

エピローグ


　シャンバラ大荒野での事件より数日後――
　暗闇のベヒモス事件に関わった契約者たちは、空京にあるシャンバラ宮殿に呼ばれていた。
　
　近代的で荘厳な謁見の間。
　その玉座には、本来ならそこに佇んでいる筈の女王アイシャの姿は無く、
　その代わり、玉座の傍らに女王のパートナーである二人の代王が居た。
　
「皆、とにかく無事で良かった……。
　それに、今回は本当に良くやってくれたわ」

　西シャンバラの代王、高根沢　理子（たかねざわ・りこ）が言って、
　その対面で何やら偉そうに薄い胸を張る東シャンバラの代王セレスティアーナ・アジュア（せれすてぃあーな・あじゅあ）が頷く。

「うむ、とても褒めるから、胸を張って存分に褒められるがいい！」
「皆のおかげで救われるべき人たちは救われ、暗闇のベヒモスは消滅した……
　それに、今回の事件の首謀者たちも無事捕まえることが出来た。
　アイシャに代わって、心からお礼を言わせてちょうだい」
「連中に情報を渡した者が何者なのかは、まだ分からないままだがな」
「……そうね。
　確かに、これで事件が全て解決したわけじゃない……」

　理子は小さく息を付いてから、改めて契約者たちを見やった。
　
「現在、パラミタ大陸は滅びに向かっていて、
　それを解決する方法を探すべく、先日、新大陸ニルヴァーナへの道が開かれたわ。
　
　ただ、それでパラミタ大陸は更に安定を失い、
　アイシャは大地を支えるため、籠ることになってしまったけれど」
　
　だから、アイシャは今この場には出てこれないのだという。
　
「だが、道は開かれたのだ！」

　セレスティアーナが、ずびしっと適当な方向へと指を突き出し、続けた。
　
「これから、ニルヴァーナの探索が本格的に開始される！
　多くの謎に包まれた広大な大陸は、我ら契約者によって、その全貌を明らかにしていくだろう！
　そうなれば、きっとパラミタを救う術も見つかるはずだ！！」
　
「その一方で、シャンバラでは何かが動き始めているようね。何か、良く無いものが……。
　まだ、それは姿を現す気は無いみたい。
　だけれど、いつか……いえ、きっと近い内に私たち契約者の前に現れるに違いないわ」

　それから、理子は一つ息をつき、ニッと笑んだ。
　
「って言っても、とにかく備えろー！　とか、ひたすら鍛えてー！　なんて言うつもりは無いわ。
　かつて、闇龍っていう負のエネルギーの塊みたいなものがシャンバラを滅ぼそうとした時があったの。
　負のエネルギーって簡単に言っちゃうと“楽しい”の反対の感情、かな？
　
　だから、例え小さな事でも、助けを必要としている人たちを助けたり、日常を楽しんだり……」

　理子は、笑みを強く続けた。

「それはいつか、きっと大きな危機を乗り越えるための大きな力になる。
　皆、それを忘れずにね。

　というわけで……今回は本当にお疲れ様。
　皆のこれからの活躍を期待しているわ！」