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占い師の野望

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占い師の野望

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三章 信じる者

 彩羽が敵を撃退し、エース達と会った頃、
「火術、火術、火術!」
 アッシュは、現れた占い師の協力者に火術を使い、退け奥に進もうとしていた。
「こう多いと俺様も手間取るな」
「火術!」
 数の多い敵を前に汗を拭いていたアッシュに向かって炎が飛んできた。
「うわっ!」
「偉大な占い師様を妬む愚か者め! 僕が相手だ! ここから先には行かせない!」
 何とか炎を避けるアッシュの横を通り、通せんぼするようにドアの前に立ったフィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)がアッシュに向かって大きな声を上げた。
「おい、そこのチビ! あの偽占い師が何をやってきたのか知らないのか?」
「チビって言うな! チビだと思ってバカにしないでね! それに占い師様のおかげで僕は、呪いで酷い目に遭わなくて済んだんだ!」
 フィッツはそう言うと、氷術で氷を呼び出しアッシュに向けて放った。
「最近、頻繁に起こっている自爆テロ、ここの偽占い師がやっているって知らないのか? それにこいつらは何だ! 普通の占い師がこんな奴ら雇うと思うのか!?」
「そんなの嘘だ! この人達は、お前達みたいな妬む愚か者が襲ってきた時のために雇っているんだ!」
 アッシュは更に火術で炎を呼び出し、氷を相殺した。
「お前! 周りをよく見ろ! 無抵抗な奴まで襲っているじゃねぇか!」
 アッシュの向いた方向では、赤いフード付きコートの人物が一般人に襲い掛かっている所や赤刀の男が纏めている集団が一般人を背にしたエース達と戦っている所だった。
「そ、それでも僕は占い師のおかげで、呪いで酷い目に会わずに済んだんだ!」
「さっきから呪いだ、呪いだって言っているが、どんな呪いだ? どんな恐ろしい事が起きるって聞いたんだ?」
 フィッツは更に叫んで今度はファイアストームを放った。アッシュは同じファイアストームを放ち、攻撃を相殺した。
「し、知らない……でも! 占い師様は、僕に呪いが掛かっている事を言い当ててくれたんだ!」
「お前! どんな呪いか、どんな事が起こるかも知らないのに偽占い師を信じたって言うのか!?」
 二人は、熱風を避けながら尚も会話を続けた。
「そ、それでも占い師様は……」
「黙れ! お前もイルミンスールの生徒だろ? 魔法使いだろ! 少しは自分で呪いを調べようって考えは無かったのか!」
 フィッツの言葉をアッシュが遮り、アッシュは更に言葉を続ける。
「お前にも友人は居るだろ! 占いっていうのは今後の可能性であって行動するのは自分自身だろ! 誰かに依存するのは楽だけどそれは今後、自分自身のためにならねぇだろ!」
 アッシュは更に捲くし立てると、泣きそうになっているフィッツの傍に行き、
「魔法使いの友達が居ないってなら俺様がなってやる。俺様もそんなに強くないけど、同じ上を目指す仲間が出来れば強くなれると思うんだ。それに仲間が多いほうがお前の呪いについて分かると思う」
 アッシュは、フィッツの前に手を出した。
「うん、よろしく」
 目を潤ませながら、フィッツはアッシュの手を取った。

「真相を確かめるために来たけど……乱闘か」
 灯真 京介(とうま・きょうすけ)灯真 楓(とうま・かえで)を抱え上げ、安全な場所に楓を降ろした。
「僕は怪我人を運ぶから、治療をお願い」
「分かりました」
 京介は軽身功を使い、戦闘の合間を縫って怪我人の救助を開始した。

「あらあら」
 森林浴をしていたクエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)サイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)は、戦闘の音を聞きつけ小型飛空艇を使い駆けつけた。
 二人は大広間に入り、戦闘で一般人も巻き込まれている事に気づいた。
「サイアス。お願いね」
 二人は、重傷者にヒールを施している楓を見ながら、クエスティーナは楓の元にサイアスは怪我人の救助に向かった。

「おい、そこのチビ二人、休んでないで怪我人の救助を手伝ってくれ」
「「誰がチビだ!」」
 京介と共に怪我人を運んでいるサイアスの掛け声にアッシュとフィッツは大きな声で返した。
「それだけしゃべれれば十分だね。怪我人を安全な場所に運んでくれよ」
 京介がアッシュ達に言うと、
「占い師の野郎を捕まえに行きたいが、今から追いかけるのは無理だな……よし! 救助の手伝いをするか!」
アッシュとフィッツは立ち上がり、怪我人の救助を開始しようとした。

 京介は、壁を背にして倒れている男の元に近づいた。
「大丈夫か!? どこが痛む?」
「足を少しな」
 京介は、『パラミタ版 家庭の医学』を見ながら男の血が出ている足に適切な処置を施した。
「他に怪我した人を見なかったか?」
「向こうで戦闘に巻き込まれて大怪我している人がいたよ」
「分かった。ありがとう」
 京介は軽身功で男の指した方向に移動した。
 移動した先には腕が曲がらない方向に曲がり、一部、皮が破れ、血肉が剥き出しになっている男の姿があった。
「大丈夫か!? ……これは重症だ。おい! 少し待っていて」
 京介は軽身功で楓の所まで飛んでいき、楓を抱えて男の元に飛んで戻ってきた。
「治療できそう?」
「骨折の方は病院に行かないといけません。出血の方は何とかできます」
 そう言うと、楓は怪我人にヒールを掛け始めた。
「犠牲になるのは、力の無い人達……地球でもパラミタでも、それは同じ、か……」
 楓の呟きが乱闘の喧騒で虚しく消えた。

 乱闘もある程度収まった中、クエスティーナは赤いフード付きコートを着た男の怪我を治療していた。
「その人達は、一般人も攻撃していたのに助けるんですか?」
 フィッツがクエスティーナに声を掛けると、
「怪我をしてる人を、区別するのは……おかしい、です」
 そう言って、怪我の治療を再開した。
「よし、これで怪我人は最後だな」
 アッシュが男の子を抱え、クエスティーナの元へ歩いてきた。
 男の子の治療を終え、クエスティーナはアッシュの怪我を治療した。
「お疲れ様……でした」
「お、おう……ありがとう」
 クエスティーナはにっこりとしてアッシュを労った。

四章 潜入捜査

 乱闘が始まった直後、豪邸の廊下を赤いフード付きコートを着た二人組が走っていた。
「潜入したばかりなのに、気の早い馬鹿のおかげでぶち壊しだ」
「いや、これは好機なのだよ」
 前を走るララ・サーズデイ(らら・さーずでい)と後ろを走るリリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)は探偵稼業として、この占い師の豪邸で潜入捜査を行なっていた。
 リリ達は、平時には占い師の協力者が控えている部屋のドアを開けた。
「イルミンスールの殴りこみなのだ。皆、加勢するのだ。占い師様を守るのだよ」
 そこには、モニターを監視している数人の人物とそれを指揮しているリリ達と同じコートを着て、自分と同じ大きさの青い水晶で出来た両刃の大剣を背負った大柄な男が立っていた。
「分かっている、この建物にはいくつものカメラを設置してある……当然、今、戦闘の行われている大広間にもな」
 大柄の男は、フードから除く青い無精髭を扱いリリ達を睨みつけた。
「失礼しましたバイス様。占い師様より念のため、『例のもの』を持って逃げるように……とのことです」
「例のもの?」
「そう言えば分かると……」
ララが大柄の男……バイスに声を掛け、質問にはリリが答えた。
「言えばわかると……か。ここに居る大半が純粋にあの占い師を守りたい阿呆な奴か、我々に雇われただけの人間かだ」
 バイスは、背中の大剣を片手で構えながら、
「我々も目的が似ていたから協力していただけに過ぎん。貴様達は、どちらの立場にも見えんな。噂を聞いて探りに来たか? 残念だがここに金以外の例のものと呼ばれる何かはないぞ」
 言い終わるとバイスは、壁を砕きながら大剣をリリ達に振るってきた。
 ララは咄嗟にレーザーナギナタからライトブリンガーを繰り出し、大剣を弾いた。
「くっ、リリ、次に私が攻撃をしたら魔法で道を塞ぐんだ」
「わかったのだよ」
 そう言うと、ララは再度、弾いた大剣に対しシーリングランスを繰り出し、バイスを吹き飛ばした。バイスが吹き飛んだのを確認しながらリリはワルプルギスの書を開きながらファイアストームでララとバイスの間に大きな炎の嵐を出現させた。
 リリとララは、バイスが追いかけられない事を確認しながらコートを炎に投げ入れ、
「潜入捜査、失敗なのだよ」
「いや、そんな事はない、占い師とその協力者が同じ目的で行動していないというのは大きいことだ。それに、シャンバラ大荒野周辺の地図を持っていた。もしかしたら荒野の何処かにアジトがあるのかもしれないさ」
 元きた場所……大広間に向かって走り出した。