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夏休みを取り戻せ!(全2回/第1回)

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夏休みを取り戻せ!(全2回/第1回)

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第6章「冬の女王」の説得と、本当は皆と仲良くしたいらしいのこと

 「なんだか騒がしいぞよ……ん? なぜ、この者たちは硬直しているのだ?」
 奥の方から、青いストレートロングの髪のスレンダーボディの美女が現れた。「冬の女王」であった。
 アーデルハイトを説得しようとしていた者たちは、あまりのことに、動けなくなってしまっていた。
 それならばと、「冬の女王」を説得しようと考えていた者たちが話しはじめる。
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)は、「冬の女王」の魔法の技術に興味津々であった。
 「「冬の女王」さん、いったいどうやって、町を一瞬で冬にすることができたのですか? 夏に戻すにはどうすればいいんですか? あと、アーデルハイト様とはお知り合いなのでしょうか?」
 ナナのパートナーで、魔女のズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)もたずねる。
 「こんにちわ。冬のおば……、えー、これ言っちゃ駄目なの? ……まあいいや、事に至った経緯を知りたいな。正直、わざわざルクオールじゃなくったって寒いところなんてあるよね?」
 「なんだか失礼な発言が聞こえた気がしたが、寛大なわらわは聞かなかったことにしてやるぞよ。わらわがルクオールを一瞬で冬にできたのは、わらわが冬を司る精霊だからぞよ。あの程度、お茶の子さいさいぞよ。なぜルクオールを冬にしたかというのは、わらわはこの地に長い間、封印されていたのだが、復活の儀式も行われずに目覚めてしまったのが許せなかったんだぞよ!」
 さらに、「冬の女王」は続けた。
 「あと、結構勘違いしてる者がいるようだが、アーデルハイトちゃんとは初対面ぞよ。かわいい子をナンパするのは貴族のたしなみぞよ」
 不穏当な発言が含まれてはいたものの、「冬の女王」は意外にもフレンドリーに答えてくれた。
 いつも眠そうな顔の大鳥 暁(おおぞら・あかつき)が、さらにたずねる。
 「じゃあ、復活の儀式がなかったから、怒って、ルクオールを冬にしたということですか?」
 「そのとおりぞよ。わらわは冬の精霊なのに、儀式もなしに夏に目覚めるなんて、こんなに腹立たしいことはないぞよ! それに、目覚めたばかりだったから、いつもより機嫌が悪かったのだぞよ」
 腕を組んで、憮然とする「冬の女王」は、むう、とうなった。
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、そんな「冬の女王」に話しかける。
 「なるほど、冬の精霊だから暑いのが苦手なのか。でも、夏ならではの楽しいイベントもたくさんあるんだぜ。川や海、プールでの水泳に、川原や山でのキャンプ。それに、夏祭りや花火大会だろ。パッと思いつくだけでもこんなにあるんだ。あんたも俺たちと一緒に夏休みを過ごさないか? 俺たちがあんたも夏が好きになるようにしてやるぜ」
 「そうか、そんなに楽しいことがあるのか。しかし、わらわは冬の精霊、冬の気候が一番性にあっているぞよ」
 ケイの説得に、「冬の女王」は少し心を動かされたようであった。
 「そうだよ、夏のイベントはとっても楽しいんだよ!」
 「夏になればプールや海で若い娘の水着が沢山見れますよ。もしかしたらアーデルハイト様の水着も見れるかもですね」
 「アンナの言ってることはよくわからないけど、あたしも海に行けば水着着るし、夏に戻してくれたら一緒に海に遊びにいこうよ!」
 クラーク 波音(くらーく・はのん)と、パートナーの魔女アンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)の言葉に、「冬の女王」はさらに迷う様子を見せる。
 「なに、水着とな!? そ、それは……。うーむ」
 アーデルハイトに横目で視線を送りつつ、アーデルハイトに近い外見年齢の波音とアンナを、「冬の女王」は交互に見つめた。
 「今は皆、ふかふかのコートなどを着ていてそれはそれでかわいいが……。夏になれば、露出が増えるのか……。な、悩ましいぞよ……」
 本気で悩みはじめる「冬の女王」の前に、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が進み出る。
 「「冬の女王」さんっ、このままじゃ町の人が困っちゃいます。私のパートナーは雪国育ちですから、積雪の危険性をよく知ってるんです。道が雪で閉ざされて、通れなくなってしまう交通の被害もありますし、窓ガラスが割れたり、最悪、雪の重みで屋根から家が潰れたりする、住宅への被害もあるんですよ! お願いです、ルクオールを夏に戻してください!」
 真面目に説得する純真なソアの隣に、御剣 カズマ(みつるぎ・かずま)があらわれた。
 カズマの手には、女子スクール水着が数着握りしめられていた。
 「はじめましてだな、「冬の女王」! 俺は御剣 カズマ! 君という貧乳な存在に心奪われた男だ!」
 「ひ、貧乳だと!?」
  冬の女王の青い瞳が見開かれる。カズマは、さらに妄想に基づいた演説をはじめた。
 「君は貧乳にコンプレックスを持っていて、巨乳な娘たちの水着姿を見たくないために夏を奪ったのだろう! しかし! 間違っている、間違っているぞ! オッパイに貴賤は無い! 巨乳も良いが貧乳もまた良し! 貧乳はステータスであり、希少価値だ! 君の存在はそのままで美しいのだ!  貧乳を萌えに変える水着、それはスク水! さぁ、このスク水を着るがよい! そして己が誇りを取り戻し、夏の水辺で愚民どもに、真の萌えというものを教えてやるのだ!」
 カズマは、手にしたスク水を掲げて、高らかに宣言する。
 「だ、だ、だ、誰が貧乳ぞよー!!」
 激昂した「冬の女王」は、手から冷気を放ち、カズマを氷漬けにする。
 しかし、カズマは、むしろ喜んでいた。
 「我々の業界ではご褒美です」
 カズマは笑顔で氷漬けになってしまった。
 ソアのパートナーで白熊の姿のゆる族雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)は、カズマの意見に全面的に同意していた。
 「スク水はまさしく日本の文化と芸術の結晶だぜ! 俺様パラミタ生まれだけど!」
 そして、雪国 ベアは、ソアにスク水を差し出した。
 「ふえぇー!? 私がそれ着るんですかーっ!?」
 驚きの声を上げるソアに、雪国 ベアは笑顔で大きくうなずいて見せた。
 「ご主人はアーデルハイトと外見年齢近いだろ? 作戦だよ、作戦!」
 部屋の隅で、クロセルと睡蓮たちがかぶってきていたシーツにくるまって、ソアはパートナーの言うとおり、スク水に着替えた。
 「あ、あの……」
 さっきまで真面目に話していたのに、ソアはいきなり注目の的になってしまった。
 「おお、とってもかわいいぞよ! 恥ずかしそうにしてるのもポイント高い!」
 大絶賛の声が、「冬の女王」から上げられる。
 「さ、寒い! とっても寒いですー!」
 しかし、ソアは、涙目で震えていた。暖かい部屋とはいっても氷の城だからであった。
 「何をやっておるのじゃ……。しょうがないのう。早く服を着てコタツに入りなさい」
 「あうー……」
 アーデルハイトが助け舟を出し、ソアはコタツに入った。
 「つまんないぞよ……」
 「冬の女王」は、本気で残念そうにしている。
 そこへ、背中に「女王LOVE」の刺青シールを貼り、「女王LOVE」の刺繍を施したふんどしを着用した青空 幸兔(あおぞら・ゆきと)が飛び込んできた。
 「オラを見てください、「冬の女王」様! オラの熱い気持ちは、冬の寒さにも負けへんのです!」
 「な、なんだ、そなたは!? へ、ヘンタイがいるぞよ!?」
  あまり人のことは言えないであろう「冬の女王」は、幸兔を見てのけぞる。
 「オラは見ての通り女王様ラブ! けっして敵意はあらへん! その証拠に、武器は持ってないことを証明します!」
 言うなり、幸兔は、ふんどしを外し、いきなり全裸になった。
 「きゃーっ!?」
 「……!?」
 主に女性陣の悲鳴と、男性陣の絶句が、部屋を支配した。
 「こ、この愚か者ーっ!! わらわはロリとショタ以外には興味ないぞよ!!」
 怒った「冬の女王」の本気の攻撃により、幸兔は氷漬けにされてしまう。
 「やれやれ、相変わらずアホなことしでかしよって……」
 幸兔のパートナーで魔女のフィリス・アンヴィル(ふぃりす・あんう゛ぃる)が、あきれ顔で幸兔を助けるのだった。
 「うう、天国から地獄ぞよ……」
 「冬の女王」は頭を抱える。
 そこへ、バトラーの沢渡 真言(さわたり・まこと)が、「冬の女王」の機嫌取りを目的に進み出る。
 「「冬の女王」様、気を取り直して、私のご主人様になってくれませんか?」
 「うむ、そなたはかわいいのでかまわないぞよ」
 「光栄です。では、スープ作りのご奉仕をいたしますね」
 真言は、「ギャザリングヘクス」のスキルを使い、ぐつぐつ煮立った大窯とスープを出現させた。
 しかし、スープは緑色と茶色を混ぜたような色をしており、謎の具がたくさん浮かんでいた。
 別に失敗ではなく、「ギャザリングヘクス」の効果なのだが、皆ドン引きであった。
 「おお、美味そうなスープぞよ。そなたは優秀なバトラーのようだな」
 しかし、「冬の女王」本人は喜んでいた。
 真言は、端正な顔にさわやかな笑みを浮かべ、一礼した。
 「わー! あたしも真言のご主人様になりたい!」
 真言の幼なじみの三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)が、賞賛の声を上げる。
 「ねえねえ、あたし達と一緒にイルミンスールに来ない? イルミンスールにはかわいいお嬢さんもたくさんいるし、学校は世界樹内だから、外より涼しいと思うし。「冬の女王」さんなら、すごい魔法使いだから、イルミンスールの講師になれると思うなあ。校長先生も、蒼空学園に対抗できるし、賛成してくれると思うんだ」
 のぞみは、笑顔で提案する。のぞみは、「冬の女王」をイルミンスールの講師としてスカウトすることで平和的に解決しようと考えていたのだ。
 真言の意図は、のぞみのこの提案を「冬の女王」に受け入れさせるためだったのである。
 「うーむ、そうすれば、アーデルハイトちゃんともいつも一緒にいられるようになるのか……」
 「冬の女王」は、本気で迷って考えこんでいるようであった。


 「冬の女王」は、本当は学生達と仲良くしたいのであろうことが、その態度からは感じられた。
 一緒に遊ぶなどすれば、説得できるかもしれない。
 そして、アーデルハイトは、「シャンバラ山羊のアイス」をエリザベートに食べられたことを理由に、「合法的に家出」していたのであった。
 しかし、ルクオールが冬になったことで、シャンバラ山羊のミルクはさらに希少なものになってしまっていた。
 そして、そのころ、エリザベートは、校長室から、ルクオールの町の方を見つめていた。
 「ぜぇったいに、わたしは悪くありませぇん。大ババ様が悪いのですぅ……」
 そうつぶやきながらも、エリザベートは、ばつの悪そうな表情だった。
 おそらく、エリザベート1人では、アーデルハイトに謝りに行くことは難しいだろう。
 学生達の力で、事件を丸くおさめないと、イルミンスールの夏休みはなくなってしまうのである。

担当マスターより

▼担当マスター

森水鷲葉

▼マスターコメント

 「夏休みを取り戻せ!」第1回にご参加いただき、ありがとうございます。
 掲示板のアクション相談も盛り上がっていただいていたようで、大変うれしく思っております。
 もちろん、単独でのご参加も大歓迎です!
 全2回のシナリオですので、次回は最終回です。
 何卒よろしくお願いいたします。