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探し出せ!犯人を!お嬢様を!!

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探し出せ!犯人を!お嬢様を!!

リアクション

エピローグ


「……ダッセ家全員の捕縛に成功しました」
 縛り上げたイタルを靴の爪先でつんつんとつつきながら、林檎は携帯電話へ向かって話しかけた。お仕置きの名目の元、可愛がってあげると言いながらランスの穂先でつついたりかるーく蹴ってみたりを繰り返す林檎を恐れた他の生徒たちは、彼が真犯人であるにもかかわらずイタルからやや離れた所にいる。
「もうすぐ当主様方が? ……はい、わかりました」
「僕の顔に傷を付けたらタダじゃ、ごめんなさい!」
 時折上がるイタルの悲痛な声に敢えて目を背けながら、傷一つないユリアナの無事を祝う。
「本当にありがとうございました、皆さん!」
 涙の跡の残るユリアナの傍らに屈み込み、所々傷付いた周は元気よく声を上げた。
「なあ、ユリアナさん。あんな奴らの事は忘れて、俺と愛し合わないか?」
「それと、もしよかったら月夜の友達になって頂けませんか?」
 問い掛けた刀真は、しかし月夜の「……私はホームズ」の言葉に呆然とした。
「その設定、まだ生きてたんですか……」
 ごつ、と文庫本の角が頭に当たる。意外と痛む後頭部を、刀真はさすった。
「待って下さい、ユリアナさんとムフフな関係になるのは俺ですよ」
 ずいと名乗り出た大和に周が胡散臭げな視線を向け、ばちばちと火花が散り始める。そんな彼らを眺めるユリアナは、しかし申し訳なさそうに首を振った。
「ごめんなさい。私には、心に決めた御仁がいるのです……」
「えっ!?」
 ほぼ同時に上がった一同の声と共に向けられる視線に、ユリアナはぽっと顔を染める。
「飛び散るゴーレムの残骸から私を守って下さった方がいるのです。私が目を閉じている間に、どこかへ行かれてしまいましたが……」
「……まさか」
 はっと顔を上げたゴザル刑事に、各所から視線が突き刺さる。言いづらそうにぽりぽりと後頭部を掻いたゴザル刑事は、なるべくユリアナに聞こえないようにと声を潜めて告げた。
「それもきっと、イタルのゴーレムでござるよ。たまたまバランスを崩した一体が彼女にぶつかりそうになったのを、慌ててバーストダッシュで吹き飛ばしたでござる」
 埃まみれのトレンチコートを指さし、ゴザル刑事は溜息交じりに告げた。

「お嬢様!」
「やーやー、案内ありがとうね、カレンちゃん」
「ボクは真実を知りたかっただけだよ」
 突如三者三様の声が上がり、せわしなく一同の視線が向けられる。ばたばたと駆け寄るメイドのラピスと優雅に歩むサーシェ家当主、そして道の一本たりとも迷うことなく彼女らを先導したカレンの姿がそこにはあった。追って、屋敷から徒歩で来た生徒たちも空間へと集合する。
「お父様!」
 跳ね起きたユリアナがラピスへ笑みを向けた後、即座に当主へと駆け寄って行く。親子の感動の対面に穏やかな空気が流れる、と、誰もがそう思った直後。
 パン、と乾いた音が一瞬にして流れる空気を凍り付かせた。
「聞きましたわ! お父様がダッセ兄弟をけしかけたのね!?」
「うん。彼ら、いつまで経っても決着をつけようとしないからさぁ」
 悪びれた様子も無くにこにこ頷く当主の頬には、赤い紅葉が咲いていた。もう一撃、と振り上げたユリアナの腕を、メイドのラピスが必死に掴む。
「……そしてお嬢様が入学する蒼空学園の力を試そうとしていた……そうでしょう?」
 不意に上がった陽太の言葉に、ユリアナたちの様子を楽しげに眺めていた当主がにっこりと笑みを深めた。言葉の主である陽太へと緩慢に振り向き、深々と頷く。
「その通りだよ。……そしてどうやら、蒼空学園の実力は申し分ないようだ」
 傷一つなく助け出されたユリアナの頭を撫で、不満がる彼女に笑いかけながら、当主は満足そうに述べた。
 そんな彼の正面へ、とことこと月夜が割り込み、ぴっと指を指す。

……犯人は、あなた

 彼女の言葉を皮切りに一斉に不満や要望を爆発させた生徒たちから逃げるように、当主は背を向けて元気よく駆け出した。ユリアナは深々とお辞儀をして、メイス片手に父を追い駆ける。
 取り残されたラピスはにっこりと微笑むと、元気良く言い放った。

「皆さん、これからもよろしくお願いします!」


「……つまり、黒幕はサーシェ家の当主だったと言う訳か。よくやってくれたな、諸君。安全第一で各自の校舎へ帰ってくれ」
 班員の通信を受けたイレブンは見えないことを承知で深く頷き、全体通信で労いの言葉を掛けて電話を切った。無事に事件が解決したことへの安堵と、推理が空振りに終わったことに、脱力するまま大樹へと背を預ける。
「今回はたまたま鏖殺寺院の仕業ではなかったが……次もそうだとは限らない。気は抜けないな」
 伊達眼鏡を外しながら一人呟くイレブンの口元には、達成感に満ちた笑みが浮かべられていた。パラミタの平和を守るため、パラミタミステリー調査班は一丸となって調査に挑んだ。結成の動機が間違った推理であったとしても、何人もの同士が協力した事実は確かに胸に残されている。この結び付きは来るべき鏖殺寺院との戦いにおいて、きっと力になるだろう。

 登録数の一気に増えた携帯の画面へ目を落とす。アナログの時計が、丁度おやつの時間を告げた。

担当マスターより

▼担当マスター

ハルト

▼マスターコメント

シナリオへのご参加ありがとうございました、お疲れ様でした。
ミステリー調のシナリオと言うことで、皆さんの考えて下さった様々な推理に楽しませて頂きつつ、ラピスを疑う方の多さにびっくりしておりました。改めてシナリオガイドを読み返してみると、言われてみれば凄く怪しいな、と思わず納得させられてしまいました。
出来る限り頂いたアクションを活かせるようにと書かせて頂いたつもりですが、いかがでしたでしょうか。楽しんで頂けましたら幸いです。
そして予想だにしていなかった鏖殺寺院の名前の登場とその推理、さらにPMRの結成、驚きながらも楽しく書かせて頂けました。ありがとうございました。
では、またお会い出来ましたら宜しくお願いいたします。