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ダイエットも命懸け!?

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ダイエットも命懸け!?

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第六章

 蟻地獄が倒されて。
 その場にいたほとんどの人間が巣の中に入り、行方不明になった村人を探していた。
 しかしここに、巣の中に入らず少し離れた場所で見守っている三人が居た。
「参ったな。跳び込むタイミングを完全に失った」
 『ツクヨミ&ケンリュウガー参上!』と書かれたカードを手中で弄びながら、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は呟いた。
 いつ出よう、どのタイミングで出よう? 今か? いや、もう少し! もう少しピンチになってからのほうがヒーローっぽいんじゃないか? あ、今! わかった、じゃあアンタから行け。は? 俺? 俺が先? いやいいからそういう遠慮。だから行――あれ、勝負終わった。
 そんなやり取りをしているうちに、本当に終わってしまった。
「なんて言うか、俺」
 超カッコ悪ぃ。
 そう言おうとした瞬間、
「その先いらない。言わないでよ牙竜」
 ぴしゃりと止められた。視線だけ動かして声の主を見る。マジカル・リリィの衣装を着たリリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)が、今の自分と負けず劣らず沈んだ表情で砂に落書きをしていた。
「あたしは牙竜と何でもかんでも張り合ってきたよ。勝負したよ。だけど、バカさ対決では張り合わない――っていうか、釣り合わないはずだったのに」
「誰がバカだ。ていうかどういう意味だ」
「牙竜とバカ対決できる土俵の上に居るあたしが気にくわないだけ」
 ぽそりと漏れた呟きに牙竜が反応する。睨む。リリィも負けじと睨む。
 二人が一触即発の雰囲気になったのを消したのは、十六夜 泡(いざよい・うたかた)の一声だった。
「もう、落ち込んでる場合じゃないでしょ? そりゃ、ヒーローにはなり損ねちゃったけど……本来の目的は行方不明者の救助活動よ。ほら、行きましょう?」
「……カッケェ。さすが、俺がヒーローになれると感じたヤツだ」
「うん、カッコイイよ! そうだよね、こんな風に落ち込んで腐ってる場合じゃないよね!」
「そうよ。今できることは何か、常にそれを考えて、考えた上で動くべきだわ」
 すく、と泡は立ち上がり、巣の方向へと向かう。
 牙竜とリリィも続いた。が、すぐに立ち止まった。泡が立ち止まったからである。
「どうした?」
「どうしたの?」
 二人が同時に声をかけると、泡は「あれ……」と呟く。
波羅蜜多実業の生徒を思わせる服装をした人間が、こっちに向かってきていた。その数は十人を超えている。
 次の瞬間、三人は同時に走り出す。
 彼らの手に、斧やボウガンといった物騒な得物があったから。
 彼らの目が、怪しく光ったから。
「敵だ!」
 思わず叫んでいた。向こうの奴らと目があった。


 風間 光太郎(かざま・こうたろう)は、討伐された巨大蟻地獄をじっと眺めていた。
「どうかしたか? 風間」
 あまりにもじっとそれを見つめていたから、風祭 隼人(かざまつり・はやと)は光太郎に尋ねる。
「土遁の術を、取得したいでござる」
 返事は、あまり噛みあっていなかった。何か考えがあるのだろうか、と思いつつ隼人は周りを見る。
 蟻地獄の巣が移動するとは考えにくく、複数の蟻地獄が居るのではないかと思ってさっきから見回していたのだが、特にそれといった気配はなかった。己の中の仮説にバツをつける。
 案外、移動するという特殊な特性を持った蟻地獄だったのかもしれない。
 そう割り切って、今回の依頼主からもらった写真を見た。写っているのは笑顔の女の子。今回行方不明になった少女だ。
「見つけてあげないとね」
 アイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)が覗き込んできてそう言った。
「ああ。家族の幸せを失うのは、悲しいから」
「そうだね。早く見つけなきゃ」
 短く言葉を交わし、どうするか考える。
 巣穴に飛び込んで探しに行くか? でも、もう相当な数が巣穴の中を探している。それで何も見つからないということは、ここに居ないということだ。
「アイナ、この辺他に怪しい場所ってあったか?」
「ううん。特にこれといったものはなかったけど」
 二人が考え始めたその瞬間だ。
「隼人殿」
「何だ?」
 光太郎が真剣な表情のまま、視線は蟻地獄の巣に向けたまま言った。
「蟻地獄、連れて帰ったらダメでござるか?」
「……光太郎」
「何でござる?」
「私たち今、そういう話してるんじゃないんだけど。それと冗談はもうちょっと笑えるものがいいよ」
「失礼な。拙者、本気の本気でござる。土遁の術を会得したいでござる」
 確かにそう言う光太郎の眼は真剣だが。
「ダメだろ、蟻地獄を連れて帰るのは」
 というか、蟻地獄は生きているのだろうか? ぴくりともしないのだが。
 ダメ、という言葉を聞いた光太郎は、心なしかショックを受けた顔をする。
「土遁ねぇ。砂埃で目くらましとか?」
「地面を割るでござる」
「それはちょっと規模がでかいと思う」
「地震とかもびっくりするでござる」
「考えてみると土遁って規模が大きいものが多いかもしれないわね、私たちが立っている場所だって土の上なんだから」
 アイナの言葉に頷くと同時に、背後で声がした。

「敵だ!」

 三人が同時に振り返る。そこに居たのは、十人を超える波羅蜜多実業の生徒を思わせる格好をした人間。手に持っている前時代的な武器が物騒だ。
 そして物騒はすぐに証明される。
 背後から忍び寄って来ていたこいつらの存在を周りに気付かせる声をあげた牙竜たちへと、手にしていたその武器を投げたのだ。
 危ない、と思って咄嗟に隼人はスノボを投げた。投げられたもの同士がぶつかって砂の上に落ちる。誰にもケガはなさそうだ、スノボには傷がついていそうだけれど。
「アレで巣へと滑り降りようと思ったんだけどな。まさかこんな使い方するとは思わなかったぜ」
 苦笑するように言ってから光条兵器を構えた。アイナも構える。蟻地獄のことがショックなのか、やや動きが緩慢な光太郎。そんな光太郎に、「これが終わったら土遁の会得手伝ってやる」と声をかけると、「やるでござる!」と一気にやる気を見せてきた。普段はもう少しクールなのに、とまた苦笑して、隼人は波羅蜜多実業生徒もどきに向けて走って行った。


「真希様、敵です」
 ユズィリスティラクス・エグザドフォルモラス(ゆずぃりすてぃらくす・えぐざどふぉるもらす)は静かに告げた。言葉を受けて、遠鳴 真希(とおなり・まき)はランスを握る手に力を込める。
「このタイミングで現れるとは……巨大蟻地獄との関連性が否めませんね」
「ユズ、どういうこと?」
「わたくし達が巨大蟻地獄と戦って疲弊したところに、こうして現れる。悪いと奇襲を受けてしまいます」
「わ。危なかったんだね……」
「はい。幸いわたくし達は奇襲を受けませんでしたし、力を温存している方もいくらか居るようですし――」
 ユズが周りを見渡す。明らかに疲れている人に混じって、服の乱れすらない人が何人か居た。他にも座っていたり、別の場所を探っていたり、巣の中で行方不明者を探していたり、小さな傷を負った仲間を癒していたり。
 余裕綽綽とまではいかないが、追い詰められているわけでもない。そんな状況で、奇襲でもなんでもない襲撃。
「わたくし達の敵ではありません」
 薄く口端に笑みを浮かべてユズは言う。
「ねぇ、芳樹くん、巣の中に行方不明者いなかったんだよね?」
 ユズの言葉を受けて、真希は高月 芳樹(たかつき・よしき)に問いかけた。芳樹は先ほどまで巣の中へ降りて行方不明者を探していたのだが、見つからないから上がってきたところだった。
「ああ。残念だけど見つからなかった」
「でも、食い散らかされたような様子でもなかったわ。ここに居ないだけかもしれない」
 芳樹の言葉の続きをアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が言う。
「どこかわかるような手掛かりもなかったんだが、食われたわけじゃないなら無事でいる可能性はある」
「うん、だよね。あと、きっとあの人たちが何か知ってるよね」
「……だな。怪しすぎる」
 視線を交わし、芳樹は箒に跨って空を飛んだ。その少し後ろをアメリアが飛ぶ。上空から遠距離魔法を飛ばす算段だ。
「真希様。わたくしは下がって魔法を放ちます。こちらに攻撃が来ないよう」
「わかった。身体を張って守るよ!」
 とは言え、こっちの味方が気付いて巣穴から這い上がってくるまで前衛として攻撃を受けるのはかなり無茶がある。他に反応しているのは、変わった格好をしている三人組と、スノーボードを投げてきた三人組。彼らが前衛として立っても数で負けている。
「ご無理をなさらぬよう」
 ユズはそう声をかけたが、多分真希は無理をしてでも守るだろう。
 もう何人か、前衛が欲しい。それまで真希に無理をさせずにすむかどうか。
「何小難しい顔してるんだ?」
 空から、ユズに声がかけられた。上を向くと芳樹が居た。
「いえ。真希様をお守りすることを考えていました」
「僕らも居るんだから、一人で考えすぎないで」
「ありがとうございます」
「芳樹。私、巣穴まで言って何人か引き上げてくる」
「わかった」
 数を増やすために、アメリアが巣に向かって飛んで行く。
 増えて数のハンデがなくなれば負ける要素はないだろうと踏んでいる。
 だから、それまで持ちこたえる。
「ユズ、あたしが守るからね!」
 そう声をあげ、真希は敵に向かっていく。
 ユズと芳樹も魔法の詠唱を開始した。


「うーん、まだ油断できないねぇ。襲われそうになったし、蟻地獄だってまだ居たら嫌だし」
 ルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)は、ねぇ? とあーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)に話しかけた。
「や、やめてよね! 虫とかもうやだよ、出てこなくていいよ。虫はみんな冬眠すればいいんだよ!」
「カサカサゾゾワゾワ」
「ぎゃー!」
 ルーシーの擬音語に、筐子は悲鳴をあげてアイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)の影に隠れた。
「やーめーてっ、虫イヤー。もうワタシ、戦ってくるよ! その方が気がまぎれるし、それにアイツらパラ実生徒じゃない! カツアゲ団!?」
 筐子はアイリスの鞄から殺虫剤を引き抜いて装備した。アイリスが困ったように笑う。
「筐子。向かっていくなら光条兵器のほうがいいんじゃないかしら?
「ゴキブリ野郎に武器を使うなんてもったいない! 虫には殺虫剤だぁー! お仕置きしてやる」
「そういうことを言っている場合じゃないでしょう? はい、受け取って」
 ヒートアップしていく筐子と対照的に、静かな口調でアイリスは武器を筐子に渡す。渋々といった感じに武器を受け取ると、くるりと振り返る。
「ルーシーは? やっつけないの?」
「あたし? 近付いて叩くのは苦手だし、後ろから魔法で援護するよー」
 そう言って杖を少し掲げる。杖の先に小さな火が灯った。
「火だ! ということは、あいつらは飛んで火に入る夏の虫ってことだね?」
「まあ、こっちから飛ばすんだけどねぇ。火」
「飛んだ火に射られる夏の虫! ルーシー頼りにしてるー」
 筐子とルーシーが喋っている横で、
「志位さん、貴方はいかがなさるの?」
 アイリスは志位 大地(しい・だいち)に話しかける。
 大地は、持参していた望遠鏡で巣をずっと観察していた。
「そうですね……あの巣の中から何かが出てくることはないと思うので。女性陣が戦っている中俺だけ戦わないのもカッコ悪いでしょう? そろそろ頑張ることにします」
「そう。観察はもう十分なの?」
「ええ。思ってた以上に何もなかったのでちょっと残念です」
 苦笑するように笑ってからリターニングダガーを抜いた。くるくると手中で弄んだ後、
「何が目的なのか、貴方たちはなんなのか、あの蟻地獄との関連性は、とか。興味の対象が移ったとも言いますけどね。さ、知識の探求に赴きましょう」
「アグレッシブな探究者ですこと」
「座して死を待つよりは、打って出るべきですよ」
「なんだか突然生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた感じですわね」
「知識に関してはそれくらい貪欲でいたいですね。では行って来ます」
 そう言うが早いか、大地は走って行った。
「あ! 大地、一人で突っ込んで行かないで! ワタシも行くー!」
 突っ込む大地を筐子が追いかけ、さらにその後ろ、ホーリーメイスを携えたアイリスが走る。
「筐子ってダンボール姿で動きにくくないのかなぁ」
 走る彼女を見て、ルーシーが呟く。答える声はもう言ってしまったので、大人しく魔法の詠唱を開始した。


「そっか……良かった……!」
 敵の姿を見て、クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は思わず声を上げた。
「何が良かった、なの? クラはあいつらの敵なのだわ。ん、撃つのだわ」
 九条院 京(くじょういん・みやこ)は、クライスに杖の先を向けた。火術が発動されかけたの見て、ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)が間に入る。それとほぼ同時に文月 唯(ふみづき・ゆい)が必死の形相で止めに入った結果、京の火術は不発で終わった。
「すっ、すみません。悪い子じゃないんです……!」
 クライスとローレンスに頭を下げる唯。クライスは苦笑いを浮かべ、ローレンスは表情を変えずにただ立っていた。
「本当に悪い子じゃ……すみません。京、ちゃんと謝りなさい。危ないだろ?」
「敵が出てきて喜ぶなんておかしいのだわ。何か裏があるのだわ」
「裏……と言うかね」
 苦笑いの表情を浮かべたままのクライスが、京に声をかける。思い切り怪訝そうな表情をした京に見つめられる中、自分の思いを言葉にした。
「巣の中に、誰も居なかったでしょ?」
「居なかったのだわ」
「だから、……食べられちゃったのかなあって思ったんだ、僕。酷いよね」
「…………」
「だから、敵が出たー、って聞いて。あ、じゃあもしかしてここに居ないだけで、あの人たちが行方不明の人たちの居場所を知ってるんじゃないかなって思って」
「つまり、行方不明者が見つかるかもしれないから思わず喜んだ。間違いないのだわ?」
「ないです。紛らわしい喜び方をして、ごめんね?」
 困ったような顔でクライスが笑うと、京も怪訝さ満点の仏頂面を崩した。
「バカなのだわ」
「そうかなぁ。そうかも。。ごめんね?」
「だって、そうよね。クラはビジュアルに似合わないお手製の背負子を用意して、蟻地獄の巣を砂まみれになってまで歩きまわるようなヤツなのだわ。敵に加担するはずがないのだわ。疑った京がバカなのだわ」
 自分に怒っているらしく、頬を少し膨らませてそっぽを向く。
「杖を向けたことは、一応謝っておくのだわ。だからちゃらにするのだわ」
「うん。それじゃあ、疑いが晴れたところでさくっと話をつけて行方不明の人たちを探しに行こう!」
「行くのだわ」
 二人のやり取りの横で。
「すごい……京があんな柔らかな態度を……!」
「クライスは誰とでも仲良くなれるからな」
「素敵ですね、それ。京は先ほどの通りの、暴走が多い子だからよく人と衝突して」
「あの暴走は行方不明者を思ってのことだろう。悪い感じはあまりしなかった」
「そうですか?」
「ああ」
「いつか友達できるでしょうか?」
「もう仲良しになっているけどな」
「えっ?」
 ローレンスが指さした先、京はクラウスの背負子に乗って「行くのだわ!」と号令をかけていた。
「……なんとなく、兄のような存在であっただけに複雑です」
「結局どっちだ」
「その話はまた、行方不明者を見つけてから。京、先に行かないで!」
「兄というより、親バカのような。……クラウス、油断はするなよ」
 小さな友情を作りつつ、進撃開始。


「俺の考え、外れてたみたいだな」
 銃に弾を込めながら、久沙凪 ゆう(くさなぎ・ゆう)はそう呟き、視線を波羅蜜多実業生徒もどきたちに向ける。
「そうですね、巣は何の変哲もない大きな蟻地獄の巣でしたし」
 荒野には場違いな和傘を差した雨宮 夏希(あまみや・なつき)が肯定した。ゆうは頷き言葉を続ける。
「蟻地獄に似た別の生物が居て、そいつが地中を移動してるのかもしれない、とか。蟻地獄は複数いるのかも、とか考えたけど」
「一匹でしたね」
 今度はカティア・グレイス(かてぃあ・ぐれいす)がゆうの言葉を続けるように言った。「そう」と頷いてから、ゆうはシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)を見た。
「シルバが正解だ」
「だって巣が移動するなんておかしいしありえないだろ」
「そう思ったから複数居るのかもしれないとか、蟻地獄じゃないのかもって思ったんだけど」
「どっちでもいいじゃん。結果的に複数居たことは確かだろ?」
 ほらあれ、と斧などを持った波羅蜜多実業生徒もどきを指さす。
「まあ、そうだけど」
 ゆうはいまいち納得できないような、歯切れの悪い返事をした。
「ま、いいや。俺もあんたも、あの蟻地獄戦の時がクライマックスだなんて思って動いてなかったんだ。力は温存してあるし、突っ込むか」
「ああ」
 四人が一瞬だけ目配せをする。次の瞬間にはもう全員がその場から走り出していた。
 一番最初にゆうが立ち止まり、中距離の位置から銃を撃つ。狙いは腕だ。戦う術をなくしてしまえばどうとでもなると踏んだから。一人が武器を取り落とし、そのままうずくまった。
 どこからかそれは見事な火の球があがり飛んで行ったり(「虫よー燃えろー」と聞こえもした)、所々で武器と武器がぶつかる音がする。
 一人、また一人と波羅蜜多実業生徒もどきが倒れて行く。
 勝つのは時間の問題で、あるいは奇襲に失敗した時点で彼らの負けはすでに決まっていたのかもしれない。
 十分後には、荒野に正座する十四人の光景がそこにあった。


「なにかこう! 大漁の気分」
 初島 伽耶(ういしま・かや)が、ロープを巣の中に垂らして声を上げる。
「大漁だもんね」
 それに合わせるはアルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)
「せーのっ」
「よいせーのせーのっ」
「沖の浦のーほーやれほー」
「ほーやれほー」
「とっちゃのハマがほーやれほー」
「ばっちゃもハマでほーやれほー」
「じっちゃもハマでほーやれほー」
「かあちゃん待ってる」
「はよかえろー」
「かえるぅ」
「なみだー!」
「ざざあーん!」
「「大漁だぞ!」」
 交互に歌い、最後は声をそろえて歌を締める。
 歌っている本人たちは楽しそうなのだが。
 大漁――巣の中で戦い尽くしていた生徒たちは、なんとも恥ずかしいような、そんな気分になったのだった。
「写メ撮っていー?」
「肖像権があるからダメなんじゃない?」
「そっかー残念。網膜に焼きつけるしかない、ぱしゃっ」
「ぱしゃっ」
「あっ、あっちでやってた戦い終わったよ!」
「終わったね!」
「さっさと釣りあげて、戻るぞー!」
「おぉー!」
 すぐ近くで戦闘開始しようが戦闘終了しようが、大して行動に変化のない二人組は、マイペースに仲間の救出活動を続けるのだった。