空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

リアクション公開中!

【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

リアクション

「歩ちゃんもやろうよっ!」
 悠希に言われて歩も石の前に立つ。
(あたしも上手くいきますように〜)
 ゆっくり歩き出す歩。
「おっ!もうすぐやで。あゆむん、そのまままっすぐ!」
 どこがで聞いた声がする。
 歩も成功することができた。
 目を開けると、日下部 社が望月 寺美と共に立っていた。
「ほいっ」
 社、手に持った八つ橋を歩むに渡す。
「よう、頑張ったな」
 少し照れる。

 絵馬を前にして、悠希は考え込んでしまった。
(静香さまと両想いになれますように、は描きにくいな)
「静香さまやみなさまとの楽しい時間が、ずっと永く続きますように」
 絵馬には、そう書いた。

 神楽坂 有栖は、少し照れながらも、
「ミルフィともっと親密になれますように、、」
 パートナーの名前を書いている。
 書きあがった絵馬をきゅっと抱きしめる有栖。

 真紀と手をつないで歩いていた日奈々。
「代わりに書こうか」
 日奈々はにっこり笑っていう。
「目も見えなくて…ひらがな、しか…書けないし…下手だけど…思いを、込めて書くですぅ…
「あたし、横で見ていていいのかな」
「はい」
「ちゆりちゃんとりょうおもいになれますように」
 一文字一文字、ゆっくり書いてゆく。
「上手だよ、ひな(日奈)ちゃん」

 ヴァーナーは、両手いっぱいに抱えるように絵馬を持っている。
 その一つ一つに相合傘を書いて、自分と相手の名前を書き込んでいる。
 可愛いイラストも添えてる。
「ヴァナちゃん、絵馬かいてるんだっ、いっぱいだね」
 神社内を見ていた歩が声をかける。
「歩ちゃんも書いたらいいですよっ」
「見ていい?」
「どうぞ」
「あれ?これ女の子の名前だよ」
「ん?大好きな人たくさんなんです。みんなともっと仲良くなれるといいです。」


 シェリスも、恋占いには興味がないが、絵馬は買ってみた。
 文字を書くと願いが叶うと聞いたからだ。
「エンシャントワンドのようなものじゃな、持ち歩かずにここに下げるのはどうしてなのじゃ」
 同じ人力車で来たマコトに聞いてみる。
「・・・」
「惚れ薬のようなものじゃな」
「違い・・・」
「魔よけか?」
 シェリスはとりあえず思い浮かぶ顔もないので、あたまにぽっと浮かんだ猫の絵を描いておいた。


 日奈子が絵馬を書いている間、真希はお守りを見ていた。
 ちょうど百合園の生徒は誰もいない。
「これ、くださいっ!」
 向こうからレロシャンが歩いてきた。
「なに買ったの?」
「ないしょ」
「いいなぁ、ないしょ」

「そうだ、お守りを買わなくてはいけませんっ!」
 絵馬を描きおわった有栖がやってくる。
 ミルフィへのお土産を買うためだ。
 いろいろあるお守りのなかで有栖が選んだのは、「ふたりの愛」だ。
「ミルフィ、喜んでくれるでしょうか」

「ねっ、有栖ちゃんは絵馬なんて書いたの?」
 悠希が歩きながら聞く。
「悠希ちゃんは・・・?」
「・・・(耳元でそっと)」
 女の子同士、歩きにくい足元をカバーするように寄り添って、腕を取って歩いている。

 音羽の滝までやってくる。
 この滝の、3つの筧から流れ落ちる3筋の水にはそれぞれご利益があり、「学業成就」「恋愛成就」「延命長寿」といわれている。

 柚子が真剣な顔の、みんなを前に飲み方の注意をしている。
「3筋すべての水を飲むと受けたご利益が全てなくなるんどすぇ。お気をつけやす。ひしゃくで受けた水を、2口、3口で飲むとご利益が2分の1、3分の1になるんどす。一口で飲んでおくれやす」

 セラは迷っている。もう十分に長寿なのだ。恋愛にとくに興味はない。
「学業しかないわ」
 ひしゃくで受けた水を、一気に飲み干す。
「どんなご利益があるのか、たのしみだわ、ねえ、フィル」

「ゆん(柚子)ちゃん、ありがとうございますぅ」
 木にもたれて、水音を聞いていた日奈子が、柚子の衣擦れの音を聞き分けて声をかけた。
「ガイドばっかりで・・・・楽しめなかったんじゃ・・・」
「かまわへん。みんなで来るのはたのしいどすぅ」

「あっちには何があるのでしょう」
 おぼこにもなれてあちこち探索していた有栖は、体の向きを変えたとたん、「きゃぁ・・」転びそうになる。
 手を差し伸べたのは、甲斐 英虎(かい・ひでとら)だ。
「大丈夫?」


 蒼空学園の甲斐 英虎と甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)は、少し前まで、茶店で抹茶と京菓子を頬張っていた。
 緋毛氈と朱傘の茶席は、いかにも京都の風情だ。
 二皿目の最中に続いて何を食べようか考えているのは、英虎だ。
「う〜ん、悩むなー、よし次は芋きんときかなー。ユキノは何にする?」
 抹茶あんみつを食べていたユキノは目を丸くする。
「まだ食べるのですか?」
 そのとき、目の前を人力車が次々に通った。それぞれに舞妓が乗っている。
「わぁ、すごいな。ユキノ、舞妓さんの集団だよー。あんなに大勢の舞妓さんが一緒に歩いてるの珍しいんじゃないかな?みんな綺麗だねー」
「マイコですか?全員マイコさん?」
「いやいや。女の人の名前じゃなくてね、舞妓さんっていうお仕事してる人たちなんだよ。きっと清水寺に向かうんだよ、僕たちも行ってみようよ」
 清水寺をあちこち見学して、音羽の滝までやってきたとき、再び舞妓さんたちの集団にであった。
「またあったね、折角だから、一緒に写真撮ってもらえないか頼んでみよう」

 英虎は、先頭にいる橘 柚子に声をかけようと歩いてきて、バランスを崩した有栖と出会った。
「大丈夫です。ありがとうございます」
「一緒に写真をお願いしたいんだけどー」
「そうですよね、写真だわ。ゆんちゃんー!」
 有栖が柚子を呼ぶ。


 それから、一同は、並んで写真を撮ることになった。
 まず英虎がカメラを構える。
 総勢17名が笑顔を作る。
 いつの間にか、人力車の車夫が来ていた。
「私がお取りします」
 英虎が加わって、総勢18名の記念写真が出来上がる。
 ケイが列から外れて、カメラを構える。
「舞妓さんだけの写真も欲しいな」
 舞妓12名(もちろん柚子も含んで)の写真を撮る。

 あちこちで、2,3名ずつの写真撮影会が始まっている。

 シェリスがマコトにこっそりいう。
「そなたは先に帰ったほうが良いぞ。そろそろ誰かが気が付くじゃろ」

 境内は見事な紅葉で埋め尽くされている。
 空を見上げる。
 紅葉の枝の間から、パラミタ大陸が見える。
「また、みんなで来ようね」
 みんな同じ気持ちだった。