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第三章 団長と一緒

「団長ー!!」
 服を元に戻し、ちょっと疲れた顔で合コン会場に戻ってきた団長を、黒乃 音子(くろの・ねこ)が明るい笑顔で迎えた。
「お疲れさまでした!」
「……ああ、疲れた」
「でも、カッコ良かったですよ! いつもと違う団長が見られて! さすがボクが兄とお慕いした方!」
「兄……?」
 怪訝そうな顔をする団長を見て、音子のパートナーであるフランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)がフォローに入る。
「ああ、音子は入団以来、団長に憧れていたでござるよ。今はにゃんこ小隊長でござるが、本当は団長親衛隊に入りたいくらいに」
「にゃ、にゃんこ小隊長もちゃんとやってるよ! いつか中隊長になるんだ!」
「おや、では、団長親衛隊は?」
「あれば入りたいけど、その……」
 ちらちらっと音子は団長の顔色を窺った。
 笑ってはいないが、特に不機嫌な様子もない。
 音子は思い切って、団長に尋ねてみた。
「だ、だ、団長?」
「なんだ?」
「ずっとお話したいと思ってました。お近づきになってお名前を覚えていただけたらと思って……」
「そうか、私もマリーの考えはどうかと思うが、生徒と話す良い機会だとは思っている。こうやって話せるのは良かったことだろう」
「本当ですか!?」
 音子は団長の5倍以上の声で反応を返した。
(ああ、今日は男装をやめて、おろしたてのスカートを履いて来て良かった! 下着も新品の真っ白なのを履いて来たし!)
 最初はもう団長と話ができるかどうか、というくらいに緊張して、上着のポケットに『またたび』と『秋刀魚の蒲焼の缶詰』を忍ばせておいて、ドキドキと待っていた。
(リラックス、リラックス・・・金「兄貴」に名前を覚えてもらえるチャンスだから頑張らないと!!!!)
 そう思っていたことを思い出し、改めて音子は挨拶をした。
「黒乃か」
「はい、オークスバレーではニャオリ族を率いております」
「オークスバレーか。新設された第四師団はどのような働きだった?」
「はい、それがですね……」
 音子は囮と遅滞戦術を使って、オークの押し寄せる攻め手を受けきった時の話や戦線の流れ、分校の活躍などを身振り手振りで語った。
 団長ならばきっとそういう話の方が好みなのではと思い、戦記を語る吟遊詩人の如く、物語調で語った。
「あ、団長、どうぞ烏龍茶を。みたらし団子もあるので」
「……ふむ」
 話しながら音子は団長に気を使う。
 しかし、その様子を見て、サミュエル・ハワード(さみゅえる・はわーど)はやきもきしていた。
(アノみたらし団子、甘くないのカナ……?)
 団長のプロフィールは暗記が基本という団長大大大大大大大大大大大大好きなサミュエルからすると「甘いものが苦手」な団長にみたらし団子なんて! なのだが、団長は黙ってお茶にだけ手をつけ、音子のエルデの街での巨大アリとの戦闘の話を聞いている。