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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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第2章 魔法草を狙う密猟者

「この前は邪魔されたが、今度こそマンドラゴラで大儲けしてやるぜ。タネから育てているやつがこの辺にあると思うんだが・・・」
 魔法草を栽培している場所を探し、国頭 武尊(くにがみ・たける)は辺りをキョロキョロと見回す。
「(あぁ・・・やっぱり栽培しているのを狙っているのね)」
 シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は思わず涙を流しそうになる。
「それじゃあ俺は邪魔するヤツが来ないか警戒するために姿を隠しておくか」
 光学迷彩の能力で景色に溶け込み、猫井 又吉(ねこい・またきち)は姿を隠す。
「ねっ・・・ねぇ、バイクで空ぶかして騒音を立てれば野生のほうが寄ってくるんじゃないかしら?」
「ふむ・・・それもそうだな。そうするか」
 武尊はバイクでブゥウンッドルゥンッと騒音を立て、マンドラゴラを誘き寄せることにした。
 音を聞きつけガササッと草むらから音を立てて、何者かが彼らに近づいていた。



「アウラネルクが森から姿を消してしまったようですね・・・森に何か異変が起こったのでしょうか・・・。とりあえず学園から持ってきたタネのマンドラゴラの成長具合を見ましょう」
「えぇ、そうですわね」
 マンドラゴラの成長具合を見ようと、安芸宮 和輝(あきみや・かずき)クレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)が森の中にやってきた。
「前に来た時よりも、なんだか空気が淀んでますね・・・。森の獣たちも見かけません」
「重苦しい感じですわ」
 不気味なほど静かな雰囲気に、2人は頬から冷や汗を流す。
「たしかこの辺りにタネを植えたはずなんだけど・・・」
「どうしたの?」
 焼けた木々をカゴいっぱに詰め、あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)がクレアたちに声をかける。
「蒔いたタネがどれくらい成長したか見に来たのよ」
「それならたしかこっちの方よ」
「あっ、そうだったわね」
「ワタシたちは他の荒れちゃった場所を耕してタネを蒔きに行くから、じゃあね〜」
「筐子さん早くー」
 少し離れた場所からアイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)が呼びかける。
「先に行ってしまいますぞ」
「あぁあっ待ってよー」
 筐子は一瞬 防師(いっしゅん・ぼうし)たちの方へ駆けていった。
「見つけました、ここですねタネを蒔いた所は」
 土から魔法草の若葉が顔を出している。
「順調に成長しているようですね」
「あれ?ここだけ何かが移動したような跡が・・・」
 クレアの視線の先には、土が盛り上がり何かが移動した跡があった。
 どうやら移動したのは1匹だけのようだ。
「成長したマンドラゴラがどこかに行ってしまったのでしょうか」
「まだ育ったばかりだから誰かに採られてしまうかもしれないわ。後を追ってみよう」
 どこかへ行ってしまった魔法草が、密猟者に狙われていないか心配になったクレアたちは探しに行くことにした。



「なかなか寄って来ねぇなマンドラゴラ・・・」
「あっ!アレじゃないかしら」
 シーリルが指差す方向には、体長2cmほどの小さな魔法草がいた。
「ちっちぇえな・・・。まぁ、あんなのでも金にはなるだろうぜ」
 魔法草は捕まえようとする武尊の手から逃れ、猛スピードで地中を移動する。
「こっちの方に逃げたと思うんだが・・・」
 草むらに逃げ込んだマンドラゴラを追って、草の中を掻き分けて探す。
「(見つけたぞ!こいつめ・・・根隠して頭の草隠さずだな・・・)」
「誰だ、そこで何をしている!」
 武尊の姿を見つけたエル・ウィンド(える・うぃんど)が声をかける。
 彼の手元を見ると小さなマンドラゴラを採ろうとしていた。
「もう一度聞いていいか?そこで何をしようとしているんだ」
 キッと青色の双眸で睨みつけ、エルは怒気を含んだ口調で言う。
「何かあったんですか!?」
「密猟者が出たのか!」
 エルと一緒に森の調査をしていたホワイト・カラー(ほわいと・からー)ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)が駆けつけきた。
「(いいところで邪魔しやがって!)」
 アサルトカービンの銃口をエルに向け、又吉がトリガーを引く。
 気配を察知したエルは、とっさにナイトシールドでガードし銃弾を弾いた。
「(避けやがったか、運のイイやつだぜ。今度は外さねぇえっ)」
 鬱蒼と覆い茂る草木の中を移動し、狙い撃とうとする。
「(光学迷彩で姿を消しているのは君だけではない!)」
 又吉の背後からデューイ・ホプキンス(でゅーい・ほぷきんす)が、スプレーショットをくらわす。
 ズダダダンッと銃声が森中に響き渡る。
「ちぃっ」
 とっさに地面へ転がり、なんとか銃弾を避ける。
「成功者ってのは、決して諦めねーんだよ!」
 武尊は怯えている小さな魔法草を採ろうと手を伸ばす。
 そうはさせまいとミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)が、木の上から雷術を放つ。
 ビバシィイッと身体中に電気が走る。
「せっかくアウラネルクと話し合えたのに、なんでこんなことするの。アウラネルクさんの具合だって悪くてしまうじゃないの!」
「やれやれ・・・こういうことで金儲けしようなんて・・・」
 怯んだ隙に草陰から現れたシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)が殴りかかった。
「そう簡単に殴られてやらねぇぜ!」
 シェイドの拳を腕でガードする。
「安心するのはまだ早いですよ」
 ニィッと笑い後方へ飛び退く。
 武尊がエルの方へ向き直ると、鋭く尖った槍の刃がすぐそこまで迫っていた。
 とっさに飛び退こうとするが、刃が頬を掠めてしまう。
「くそっ!人数が多すぎだ」
 多勢に無勢と思ったのか、武尊たちは森の外へ出て行った。
「ここら辺で人の声が聞こえたような気がしたんですけど・・・」
 騒ぎ声を聞きつけた和輝とクレアが、エルたちの所へやってきた。
「マンドラゴラを密猟しようとしていたヤツを追い払っていたんだ」
「そうだったんですか・・・。私たちは森で育てていたマンドラゴラがどこかに行ってしまったので、探している途中なんですけど・・・」
「もしかしてこの小さいやつかしら?」
 ホワイトは草むらの中に隠れている魔法草へ視線を移す。
「あっ!それですね」
 小さな魔法草は和輝たちの姿を見つけると、サササッと彼らの後ろに隠れた。
「どこか見つかりにくい場所に連れていってあげましょうか」
「それがいいわね」
「ボクたちは森林の警備に戻るかな」
 互いに手を振り、それぞれの役割に戻っていった。



「いくら魔境の森で支配力が落ちているとはいえ、こんな亡者みたいなものがそうそう大量発生するのか・・・・・・?」
 どこかにクリーチャーが潜んでいないか、警戒しながら白砂 司(しらすな・つかさ)はイルミンスールの森を歩いていた。
「森の魔力が影響しているのか、時々箒で飛べなくなるな」
 木々の間を箒で飛んでいたロレンシア・パウ(ろれんしあ・ぱう)は、草むらの中で箒から降りる。
「あぁ・・・そうみたいだな。まともに箒が使えれば、エリザベート校長でもマンドラゴラを採りに行けたのだからな」
 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が自分で取りにいかなかったのは、まともに箒が使えなかったのかと考え込む。
「いきなり高い高度からすとんっと落ちては危険だな・・・使えそうな時に低空飛行するか」
「そういえば・・・どうして亡者みたいなのが大量発生するようになったんだ?」
 亡者が大量に出現する原因について、司は考え込むように言う。
「クリーチャーや魔法草に襲われた密猟者の亡骸が、そうなったとのかもしれないな」
「過去に密猟者が大勢きていたとしたら・・・ここが元々忌み土地だったとしたら、その影響で亡くなったやつが亡者化しても不思議ではないか」
「忌み土地なら亡者がナラカと行き来する霊道もあるかもしれないな。水場が主にそうなる可能性があるから、もしかしてそこに原因があるのかもしれない」
「なるほど・・・そういう土地で大量の死者の強い怨念によってナラカとつながってしまう箇所が増えても、おかしくはないということか」
 少しだけ納得したのか、ロレンシアの言葉に司が頷く。
「待って司!そこに何かいるぞ」
 木の裏に隠れると、ガサガサッと音が聞こえてきた。
 頭蓋骨の割れた亡者が行き倒れている密猟者の首をグシャッと握りつぶし、動かなくなったのを確認すると亡者は、傍で見ている司たちに気づかずに水の中に去っていった。
「そこが通り道なのか?」
 クリーチャーの後を追おうと死体が横たわっている傍を通ると、司の足を何者かが掴む。
 命を奪われた密猟者は亡者化し、グェウッゲェッと呻き声を上げる。
「くぅ!」
 足を掴んでいる亡者の腕へ槍を突き立て千切り、その腕を地面へ投げ捨てた。
「あっちからも来たぞ!」
 ロレンシアが指差す方を見ると、数体の亡者が司たちの方へ向かっていた。
 クリーチャーの足元を司が狙い、ロレンシアは自由に動けなくなったターゲットへ火術を放つ。
「かなりの数がいるな」
 空気中を漂う異臭に気づいたエルたちが駆けつける。
「最近暴れたりないからな、ここで大暴れてやる!」
 ギルガメシュはチェインスマイトで、標的の頭部と腹部にランスの刃でズブリと風穴を開けた。
 地面に崩れ倒れたターゲットへ、ミレイユとシェイドが氷術で凍てつかせる。
「冥府に帰るがぃい!」
 エルが繰り出す槍の一撃で、パリィインッと亡者の身体が割れ、辺りに飛び散る。
「あらかた片付いたみたいだね」
「そうだな。他にもウロついているやつもいるだろうから、もう少し警備を続けよう」
 森の守護者の代わりに警備を続けようと、シェイドたちは再び森林の中を歩き始めた。



「この辺でいいかな。ここから先、凶暴マンドラ地帯につき立ち入り禁止と看板を立てておこうか」
 アウラネルクがいた場所に和原 樹(なぎはら・いつき)が、侵入禁止の看板を立てた。
「―・・・すでに入り込んでいそうな者もいそうだな」
 フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は侵入者がいないか辺りを注意深く見回す。
「また森が荒らされてしまったら、アウラネルクさんの命も危ないからな」
 周囲を警戒していると、木々の間を何者かが素早い身のこなしで移動していた。
「(もしかして密猟者か!?)」
 樹たちは怪しき人影を追って森の中を駆けていく。
 覆面をした男が急に足を止め、辺りをキョロキョロと見回す。
「ちっ・・・ここには魔法草はないか」
 男はマンドラゴラを狙っているようだった。
「どうする・・・すぐに捕まえるか?」
「それなら挟み撃ちの方がいいであろう」
 密猟者に聞こえないように小声で言い、草陰から跳びかかる。
 気づかれてしまったのか、軽々と飛び退き避けられてしまった。
「お前らごときに捕まらねぇよ」
 手にワイヤーを巻き余った部分を括りつけてナイフを大木に投げつけ、地面を蹴り枝に飛び乗った。
「逃がさん!」
 フォルクスが枝から枝に飛び乗り逃げていく密猟者に向かって雷術を放つが、相手に軽く避けれてしまう。
「密猟者が現れたのだな!」
 守護者を探してやっきたリリが偶然通りがかり、密猟者に向かって雷術を放った。
「確実に仕留めるなら接近戦しかないな・・・」
 樹はフォルクスに目配せをし、ターゲットが次に飛び乗る枝へ氷術を放つ。
「森を荒らす不届き者め・・・、ララ・サーズデイ容赦せんッ!」
 カルスノウトの刃で、ターゲットへ剣圧を飛ばす。
「うぁああっ」
 追撃を避けることに気をとられ氷った枝に足を滑らせてしまい、男は草むらへ落下する。
 落下した拍子に足へ傷を負いながらも逃げようとする男の背を蹴り上げ、腹部にかかと落しをくらわす。
「さぁ・・・これでもう動けないよな?」
「観念して森から出て行ったほうがいいであろう」
「まだ懲りてないなら・・・今度は足じゃなくて手がでるけど」
「くっくそぉお、覚えてろよぉおー!」
 拳をギュッと握り締めて言う樹に恐れをなしたのか、密猟者は悔しげに叫び声を上げ、よろめきながら走り去っていった。



「密猟者らしき人物は今のところ見当たらないようだが・・・隙をついてどこから来るかわからないから、常に警戒していないとな」
 大木の枝の上に乗りオペラグラスを覗き込み、閃崎 静麻(せんざき・しずま)は怪しい者がいないか見張っている。
「こちらもいないようです」
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)も彼と一緒に、密猟者が潜んでないか周囲を警戒していた。
「向こうに誰かいるぞ」
 静麻がフードを被った人物を指差す。
「こんな森の奥に何しに来たのでしょうか?」
「後をつけてみよう・・・」
 2人が後を追っていくと、謎の人物はガサガサと草むらの中で何かを探し始めた。
「何か言っていますね・・・」
「ここからだとよく聞きとれないな」
 近くまで寄ると、ブツブツと独り言を喋っていた。
「うーん・・・聞こえませんね・・・」
「―・・・どうやら魔法草を探しているようだな」
 対象に気づかれないように静麻が近寄ると、どうやら魔法草を探しているようだった。
 怪しげな人物が体長5cmのマンドラゴラを採ろうとした瞬間、レイナがカルスノウトで斬りかかるが、リターニングダガーでガードされてしまい避けれてしまう。
 静麻がアサルトカービンのトリガーを引き、銃弾を放つが森林の中へ逃げ込まれてしまう。
 密猟者は突然足を止めてパッと振り返り、破壊工作で作った爆弾のスイッチを押す。
 地中に埋められた爆弾がドォォオンッと爆発し、爆煙によって視界を遮れる。
「そこですか!」
 わずかな足音を頼りにレイナはバーストダッシュで密猟者を追い詰め、カルスノウトの柄をターゲットの頭上に叩きつけた。
 ロープで縛り上げた密猟者の背後に組織がいないか尋問するが、どうやら個人行動だったらしく仲間はいないようだった。
 二度と森を荒らさないと誓わせ、森の外へ離してやる。
「まだ他の密猟者がいるかもしれないな」
「えぇ、さっきは相手が弱かったですけど手強い敵もいるでしょうから、気をつけないといけませんね」
 レイナたちは再び森を巡回し始めた。