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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【後編】

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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【後編】

リアクション

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 「別に他人に見せたいとかでなく! さあ、今度こそ、私にビームを撃つのじゃ!」
 「ウィニイイイイング!!」
 「ちょっと待った! ウィウィさん、ババ様をきょにゅーにしちゃダメだ! ババ様がきょにゅーになったら、今みたいに気軽に話せなくなっちゃうだろ」
 「またなのかよおおおおお!!」
 和原 樹(なぎはら・いつき)が、身体を張って、アーデルハイトを守り、かわりに設定崩壊ビームを浴びた。
 「いいよ、もう、おまえは、『実は素直さの欠片もない腹黒で狡猾、パートナーに対する態度も計算づくの焦らしテクニック』っていうキャラだああ!!」
 「な!? いや、狡猾キャラはなってみたいと思うけど。俺、あんまり頭よくないから……」
 樹のパートナーの吸血鬼フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)が、激しくショックを受ける。
 「なっ!? なんだと……? では、今まで耐えてきた我の努力は……。一人では眠れぬお前に毎晩のように寄り添い、散々生殺し気分を味わわされているというのに」
 「って、ああ! 俺より相方の方が衝撃受けてる! しかもショック受けるとこはそこなのか!? 違うからっ。本当に今は無理だから! 嫌いな訳じゃないけど、そういうのはちょっと……」
 「樹……こうなったら、今すぐにでもこれまでの貸しを返してもらおう。焦らされた分の利子は高くつくぞ?」
 「待っ……勘違いしたままこっち来るなぁぁ!」
 「待てー! 今日こそ思う存分可愛がってやる!」
 「うわああああああ!」
 フォルクスが、樹を追いかけて走り去る。
 「なんだあれは……。狡猾キャラになったと見せかけて、『フォルクスにセクハラされたときに鉄拳制裁』っていう部分が崩壊したのか?」
 アーデルハイトが、樹を見て、呆然とつぶやく。

 「さあ、今度こそ、私にビームを撃つのじゃ!」
 「いいかげん成功したいぜ! ウィニイイイイイング!」
 「させぬ!」
 機晶姫のジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が、飛び出し、ウィニングのビームをそらす。
 「アーデルハイト師匠! 師匠はボクの目標なんです! だから命がけでボクが護ります!!」
 ジュレールのパートナーのカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が、アーデルハイトをかばってビームを受け、巨乳になった。
 「こらーっ! 何するんじゃ!」
 「ああっ、なんて恐ろしい体になってしまったの? こんな悲しい思いはボク一人で十分だよっ! ジュレ、高カロリーのスイーツをありったけ持ってきて!」
 「わかった。超メガ巨大パフェに、ホールケーキ10個だ」
 カレンは、ジュレの持ってきたスイーツをパクパク食べる。
 「ひどい、ひどすぎるよ! ボクは別に巨乳になりたいわけでも、いくら食べても太らない体質になりたいわけでもなかったのに! ぽっこりお腹にならないし、胸がこんなにぼよよーんとしてるし! ああ、恐ろしい、恐ろしい!」
 「何言ってるんじゃ、お前は! いいから、私にビームを浴びさせるのじゃ!」
 「ダメだよ、アーデルハイト師匠! 巨乳ビームを浴びるのはボクだけでいいんだよ! アーデルハイト師匠がこんな、こんな、変な設定で、恐ろしいカラダになってしまうなんて、耐えられないよ!」
 「我も格闘家なのに、鎖鎧を着て剣を構えているし……ビームを受ける前から設定がおかしい気もするがな」
 ジュレが、ぼそっとつぶやく。
 「ジュレ、引き続き、ボクに全部当たる様に、彼の巨乳ビーム発射をフォローして!」
 「俺のビームは巨乳ビームじゃねえ! 魔法忍術・設定崩壊ビームだああああああああああああ!」
 ウィニングがキレて叫ぶ。

 その様子を見ていた、ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)が、カレンを必死で押しのけようとしているアーデルハイトに近づいていく。
 「アーデルハイト様、これは噂話なんですけど、胸を大きくする方法があるって聞きました」
 「な、なんじゃと!?」
 「学生達の間の噂話なんだけど……。牛乳を飲んだり、鶏肉を食べたり、キャベツを食べたりするといいらしいよ。はい、たくさん持ってきたから」
 ミレイユは、大量の牛乳と鶏肉とキャベツを、アーデルハイトに渡す。
 「それと、アーデルハイト様、好きな人いる?」
 「は? なんじゃそれは?」
 「えっとね、好きな人に何かしてもらうと、胸が大きくなるって聞いたんだけど……」
 「何かってなんだ?」
 「肝心な部分が聞こえなかったんだ。よくわからないけど、きっといい事なんじゃないのかなぁ……?」
 ミレイユは、首をかしげる。

 「それは、こうすることだああああああああああああああああああ!!」
 「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
 神野 永太(じんの・えいた)が、いきなりアーデルハイトの背後から現れて、胸をもみしだいた。
 「この日のために、この永太、ネットに溢れるありとあらゆるバストアップマッサージの動画を閲覧し、アーデルハイト等身大ソフビ人形を使って鍛錬に励んでいたのだ!」
 「そして、この天良 高志(てんら・たかし)こそ、実はMK5の黒幕であり、イルミンの全女性を巨乳にするのが目的だったのだ! さあ、僕もアーデルハイト様の胸をもむのに参加するよ!」
 高志は、ウィニングの設定崩壊ビームを浴び、おかしな妄想に取り付かれていた。
 「さあさあ、アーデルハイト様を巨乳にしたら、エリザベート校長もざんすかも、学生の皆さんも胸をもみまくっちゃうよ! ははははは!! MK5とは、魔法学校を巨乳にする五人衆の略だったのだ!!」
 「ご、ごめんなさい……そんな事だったなんて」
 「って、ミレイユ、赤面してうつむいてないで助けんかー!!」
 ブチ切れたアーデルハイトは、全力で魔法を放ち、永太と高志をぶっ飛ばした。

 「……ッ!! ……ッ!! ……ッ!!?」

 アーデルハイトは、言葉にならない声を発しつつ、血だまりに沈んだ永太と高志を、杖で殴りまくる。
 永太のパートナーの機晶姫燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)は、その一連の流れを目撃してしまっていた。
 「永太様から何か頼まれた気がしていましたが……乳が小さいだのデカイだの、鬼気迫る面持でくっちゃべっていましたが、その様子がなみなみ為らぬ気持ち悪さだったので途中で聴覚を閉ざしたのは正解でした。イルミンスール観光の傍ら、アーデルハイト様に魔法理論の釈義を頼む予定でしたが、まさか、このような残虐なダメージを与える魔法がこの世に存在したなんて……なんて恐ろしいことでしょう」
 「途中から、杖で殴ってるだけに見えるけど……ワタシの輸血パック、食用だけど、いる?」
 ミレイユが、ザイエンデに輸血パックを差し出す。
 「ありがとうございます」
 ザイエンデは、やりとげた満足した顔をしている永太を引きずって、回収した。
 幸せそうな表情の高志も、回収役の人がいなかったので、しかたなく、ザイエンデが移動させた。