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リアクション
最後の扉
「この洞窟の最深部に向かうためには、『ぴな玉』という宝玉が必要だ。それを守っている強力なモンスターから、奪い取らなければならないのだ」
ことのははまゆみに、この先に待ちかまえている危険について歩きながら説明した。
「その『ぴな玉』がないと、先へ進めないのですね」
「そうだ。……そろそろ、ぴな玉を守るモンスターがいる場所だ」
ことのはが足を止めた。まゆみも立ち止まる。
ガアアアアアアァァ!
「きゃっ!」
獣がほえる声が響き渡る!
「ふむ……ここまで来れたか。その頑張りは褒めてやらなければならないのぅ」
ひた、ひた、ひた。
暗闇から現れたのは、鋭い眼をした虎と、真っ黒いローブに身を包んだファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)だ。
「まずはわしを倒してみせろ!」
ぐるるるるる……。虎がまゆみとことのはを睨み付ける。
「こ、これこれ。睨むのはよいが、絶対に傷つけるでないぞ」
ファタが小声で虎に囁いた。
「ようし……では私と勝負……」
「まて」
勢いづくまゆみを制して、ことのはが前へ出た。
「ここは我らに任せてもらおう。まゆみ達は、この先へと進まなければならない。体力を温存しておけ」
「ことのは……」
ことのはは剣を抜いて叫んだ。
「ゆくぞ! 我が側近、マキ!」
「了解であります!」
ことのはの側近・比島 真紀(ひしま・まき)が進み出て、ことのはと肩を並べて虎渡対峙した。
「ふむ……。ことのは嬢を傷つけるわけにはいかんが、仲間役の方ならちょいとイタズラをしてもいいじゃろう」
ファタは、こしょこしょっと虎に指示を出した。
「虎よ、行くのじゃ!」
ファタの合図で、虎はことのは達の方にすごい勢いで走ってきた。
「きゃ……! これは早か……」
思わず素に戻ってしまったことのは。
「後ろに下がっているであります!」
ことのはをかばい、真紀が虎に向かっていった。
虎が飛び上がる!
続いて真紀も飛び上がった!
ガッ! 空中でクロスする。
「し、しまったであります……」
ぐらっ。体がぐらついたのは、真紀の方だった。
地面に着地し、そのままどさりと倒れてしまった。
「あ、ああ……マキ!」
ことのはが駆け寄って助け起こす。
「め、面目ないであります……。お役に立てずに……」
真紀の言葉は途切れ途切れだ。
真紀はかなり上手く演技をしているが、それ以上に演技が上手かったのが、虎。
空中で真紀とクロスした際、ぽふっと爪を引っ込めた肉球で真紀を小突いただけだった。
事前にファタから「これは真剣勝負ではない」と、しっかり指導をされていたのだろう。
「あの虎……なかなか手強いでありますな……」
「気にするな、喋るんじゃないっ! 誰か……回復役を!」
真紀を回復役に任せ、ことのはは立ち上がった。
「許さない……よくも仲間を!」
ことのはは、拳を振り回して虎に向かっていった!
「うわああぁぁぁ!」
ぽむぽむっ。ことのはパンチが2発ほど、虎の背中に命中した。
「ほれ! 倒れるんじゃ! 演技演技」
ファタが指示を出すと、虎は「きゅぅーーーん」と一声鳴き、ぱたりと倒れた。とてつもなく利口な虎である。
「むぅ。我が友を倒すとは……おぬし、やるのぅ」
ファタは虎を助け起こし、背中に飛び乗った。
「……ここまでじゃな。さらばじゃ!」
ひゅんひゅんっ。さっきのダメージなどなかったかのように(実際ないも同然なのだが)虎はファタを乗せて元気に走り去っていった。
「むむむ……こうなったら我らが行くしかない!」
とうとう現れた犬神とも! そして一緒に現れたのは、犬神ともを使役する、偉大なる魔獣使い緋桜 ケイ(ひおう・けい)だ。
「犬神ともも、使役されている魔獣だったなんて! ということは……真の親玉は、あの魔獣使いですのね!」
まゆみは剣を抜き、魔獣使いを睨み付けた!
「この俺を戦いに引っ張り出すなんて、なかなかないことだ。誇りに思っていいぜ。……それじゃあとも、かかれー!」
「わんっ!」
何故か突然犬キャラになってしまったともが、しゅたたたたっとまゆみに襲いかかってきた!
「き、来ましたわね!」
凄い勢いでともが突進してくるが、まゆみは落ち着いていた。
「犬モードのともちゃ……じゃなくて、犬神の対処法は、よく知っていますのよ!」
まゆみはにやりと笑った。
「……お・す・わ・り!」
びくうううぅぅ!
まゆみが叫ぶと、ともはキキーーっと止まり、すとんと座り込んでしまった。
「わんっ!」
いつどこでスイッチが切り替わったのか、ともは犬神というより、もはや犬だ。
「ふふふ。犬神は手なずけましたわ。あとはあなただけです、魔獣使い!」
ともの垂れ耳をもふもふしながら、まゆみはケイに向かって叫んだ。
「くっ……。犬神の弱点をすぐに見抜くとは……さすがだぜ」
「覚悟してくださいっ!」
まゆみは剣を振りかざし、ケイに向かって突っ込んでいった!
「ぐああああ! その力はー!」
まゆみの剣が光り輝いた! この光は、やられている演技をしているケイ自身が光術で作ったもの。なかなかの演出家だ。
「その力には……かなわん……」
ケイはばったりと倒れた。
「……この先に進むためのアイテム、ぴな玉をくださいますね?」
倒れたケイに、まゆみは静かに言った。
「ち。これだ……持って行け。これを持っていれば……最後の扉が開く。この先にある最後の扉の前で……これをかざせばいい」
何故か説明口調でアイテムの使い方をレクチャーする、魔獣使いケイだった。
「これが、ぴな玉……」
一見、大きめのビー玉にも見えなくもないが、まゆみの手には最後の扉を開くためのキーアイテム・ぴな玉が握られていた。
「この先は、一組のパーティしか進むことができない。行け、勇者まゆみ!」
剣士ことのはに見送られ、まゆみ一行は最後の扉の方へと進んでいった。
『もう見え見えの展開だが、次がいよいよラスボス戦! 勇者まゆみの運命やいかに!』
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