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「思い出スキー」

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「思い出スキー」

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6・翌朝


 朝日が昇るころ、子ども達は、そっと寝ているロザリンドを置いて部屋を抜け出した。使っていない広間まで足音を消して歩いていく。
 引き戸を開けると室内は既に暖かく、イルミンのルーナ・フィリクス(るーな・ふぃりくす)セリア・リンクス(せりあ・りんくす)が待っていた。
「ちゃんと起きてきたのね」
 ルーナが入ってきた子ども達の前に、毛糸の束を出す。孤児院建設のときに編み物を教える約束をしていた。そのために今回のスキーツアーでも毛糸を大量に持ってきたのだ。
「編み物はね、大切な人のことを想って編むのが大切なの。少しくらい下手でも、気持ちがこもった物なら相手はきっと喜んでくれるわ。だけど、今回はちょっと時間もないし、数も多いから、毛糸のぼんぼんをつくるわね」
 セリアが、子ども達に丸いダンボールのようなものを渡す。
「ここに毛糸を通して…」
 ルーナの言うとおりに毛糸を巻きつけ、糸で結び、はさみで切る。
 少しいびつな毛糸のボンボンが出来る。
「少しは丸からはみ出た毛糸を、ちょきちょき切れば出来上がりだよ」
 セリアが、みんなの前で可愛い丸い毛糸のぼんぼんを振る。
「そして、この名前の札を付けたら、お守りの出来上がり!」
「じゃあ、みんなが起きてくるまで、まだ時間があるわ。頑張りましょう!」
 子ども達が頷く。
 みな真剣だ。
 レッテが、ルーナに近寄る。小声で、
「オレ、ダーちゃんにマフラー作りたいんだッ。メシ食べた後、教えてくれるか?」
「もちろんよ、でもスキーはしなくていいの?」
「ああ」
「じゃ、あとでね」
 二人は秘密の指切りをする。


 翌朝、早く起きた七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は、既に子ども達が起きていることに驚いた。
「じゃあ、ここに管理人さんの雪だるま運んでこない!」
 みんなが起きてきたら、ここで記念撮影をする予定だ。そのときに一緒に写るように、溶けないよう日陰に置いてあった、昨日弐識 太郎と作ったピエロメイクの雪だるまを台車に乗せて玄関まで運んでくる。
「ご飯の用意、出来たよー」
 民宿から声がする・
「よし、じゃあ、朝ごはん食べようか!」
 今日も晴天だ。



7・後日

 数日後、【孤児院写真班】の鬼崎 朔(きざき・さく)が孤児院に来ている。朔が撮った写真は、スキー教室や雪合戦だ。既にプリントした写真を、孤児院の廊下一面に貼ってゆく。
 一人一人の写真もあれば、全体の記念写真もある。
 ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)は、機嫌が悪い。カメラが壊れたためにカリンの撮った写真はない。
 スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)は、すべての写真を並べてから、あることに気が付いた。
「里也お姉さま、女の子の写真が多いです」
「そうかぁ」
 英霊尼崎 里也(あまがさき・りや)は笑い声を抑える事が出来ない。ただ、単に可愛い子を撮影する大義名分としての写真班だったが、撮影中に邪心は無かった・・・
 朔は、並んだ写真の横に「一枚100G」の値段をつける。
「お金取るんですか?」
「当然だっ、孤児院に寄付するんだ」
 最後に飾るのは、大きく引き伸ばした「全員の記念写真」。全員が小さな毛糸のボンボンをつけている。
「これはサービス!」
『写真購入者にプレゼント!』大きなPOPが写真の横に貼られている。


 小さな雪ウサギは、まだ溶けていない。北側の窓に飾られている。



おしまい。




担当マスターより

▼担当マスター

舞瑠

▼マスターコメント

今回は大変遅くなりまして申し訳ありません。
以後は締め切りを守るよう努力します。
次回はまだ未定です。孤児院から離れた話になる予定です。