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リアクション
第十五章 ――第三層――
・科学と魔法が交わる時
図書館三階では順調に解読が進んでいた。情報拠点にもたらされるものの多くは、ここから発信されていた。
「上では何やら強い機械のガーディアンが出たそうだ。もしかして、さっき分かった『機甲化兵計画』に関係あるんじゃないかねぇ」
東條 カガチ(とうじょう・かがち)が七枷 陣(ななかせ・じん)を見遣る。
「うん、多分あるな。そのガーディアンの見た目の特徴とかって、連絡来てる?」
「一体は剣を構えていて、もう一体は身体中から銃撃をしてくるヤツらしい。さっきの守護者といい、この遺跡は何かと物騒なものが多いなぁ」
カガチの話を受け、陣は再び本に目を落とす。
「あと、遺跡の中でパートナーと離れた子がいて、上の拠点にいるそうだ。それらしき人を見たら伝えて欲しいだってよ」
カガチが顔を上げて周囲を見渡す。すると、辺りを見回しながら歩いてる男と目が合った。
「なあ、セレンス……いや、小柄な女の子を見なかったか?」
それはまさに今口に出した人物、ウッドだった。
「見てはないけど、上でパートナーとはぐれた子がいるってさ。この上の遺跡の入口らへんに拠点があるみたいだから、多分そこへ行けば会えるんじゃないか」
「入口か。ありがとう、助かったぜ」
ウッドはそのまま外周通路へと出て上層へと向かっていった。
「一応連絡は入れておくか」
カガチはトランシーバーを使い、今の出来事をそのまま伝えた。
「さて、それじゃ解読に戻るとするかねぇ。おねえちゃん、どんな感じだい?」
彼はパートナーのエヴァ・ボイナ・フィサリス(えば・ぼいなふぃさりす)に視線を移す。
「ええ、段々と分かってきました。さっきまだ読んでたものには概要程度しか書かれてませんでしたが、こちらのは具体的な研究内容にまで言及しています」
エヴァの顔は青ざめていた。それほどまでに「人型兵器」がおぞましいものだということだろう。
「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
カガチのもう一人のパートナー、柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)が心配そうにエヴァを見上げる。
「はい、なんとか……」
あまりの衝撃に気持ちが追いついていないようではあるが、それでも目を背けずに彼女は読み解いていった。
「さっきのは機甲化兵計画の大筋しか書いとらんかったからなー。多分この辺りにもっと詳しいのがあるはず、と。そっちはどうだ、真奈?」
「大体見当つけたものは確保しました」
陣と彼のパートナーの小尾田 真奈(おびた・まな)もまた、文献を読み始める。重点を置くのは「機甲化兵計画」の全容についてだ。
「お、書いてある。『この国はポータラカの技術により、飛躍的な進歩を遂げた。だが、ここにきて外敵からの脅威にさらされている事が判明した。このままでは、争いとなり多数の人命が失われることとなるだろう』これは序文かな?」
陣が読んでいる文献は以下のように続いた。
――機甲化兵計画は、いわば血を流す事のない《不死身の兵隊》であると同時に、民衆の代理としての戦力となる兵士を生みだすものだ。この計画が遂行され、機甲化兵が実戦に登用されれば、失われる人命が減る事になるだろう。むろん、その強さは女王の護衛が務まるほどでなければならない。
そこで機晶姫の技術を応用する事にした。今現在機晶姫はこの「代理兵器」に最も近い存在として認知されている。だが彼女達には人格も、感情もある。単なる機械ではない。
この計画で造られるのは、それらを排した、完全なる機械だ。機晶姫がどの段階で人格や感情を形成していくのはまだ研究段階である。もしかしたら機晶石に何らかの秘密があるのかもしれない。
そのため、動力源である機晶石の改良に取りかかる事にした。これにより暴走の可能性を軽減し、さらに自由意思の発生を抑える事に成功。(中略)
結果、六体の雛型が完成した。これを基に、既に量産型の製造ラインも組んである。それぞれの型と具体的な仕様については別の項に記す――
「これだけ読めば、多くの犠牲を払わなくて済むようにする計画のようだけど……おっと、こっちはその仕様についてか」
別のページを開くと、雛型の六体と量産型の具体的な仕様が書かれていた。
「強化装甲、退魔力、これまたすごいな。欠点は関節部が薄いのと、電撃に弱いくらいか。それでもほとんど隙がないよなー、これ」
六体はそれぞれ、剣、槍、刀を扱う当時の名の知れた騎士をモデルにしたものと、体内に重火器類を大量に収めた機体だった。それぞれ、中距離、長距離型。そして最後の一体はただ「殲滅型」とあるだけだ。
それらの情報をカガチに無線で全体に流すように伝える。
その時、陣がパートナーの異変に気付いた。俯き、どこか塞ぎ込んでいるようである。
「どうした、真奈?」
「ご主人様、心も感情も持たずただ道具として生みだされるというのは、どこか残酷なようにも思えます」
機晶姫である真奈は、造られた存在だ。だからこそ、ただ戦場に送られるために造られた機甲化兵に自分を投影したのだろう。しかも自分もまた、兵器として投入されようとしていたことが、おぼろげながらも記憶の中にある。
「私も同じような目的で造られたのでしょうか? 人間の代理として、たくさんの人を殺すために」
「真奈!」
陣が叫ぶ。真奈は一瞬はっとしたようになり、ゆっくりと顔を上げる。その目には涙が浮かんでいた。
「それ以上言ったら本気で怒るぞ。自分を人形と思うな。真奈にはちゃんと心があるやないか。その涙が何よりの証拠だ」
真摯に向き合い、励ます陣。
「もし心が無かったとしても……真奈は、真奈だろう。オレ達にとって、大事な存在なんや。自分を蔑ろにする必要なんてないんだ!」
「ご主人様……」
彼の言葉で、真奈は落ち着きを取り戻しつつあるようだ。
しばらくして、二人は解読作業に戻った。
「それにしても不思議だよな。この内容を見た限り、人の命を尊重し、機晶姫もちゃんと人として扱ってる。そんな科学者が、なぜ人型兵器や、合成魔獣なんてものを造ろうとしたんやろ?」
陣にはそれが不思議だった。非人道的な研究に着目されていたが、何やらかみ合わないものがある。
(なんか引っかかるな……)
「オレ達もそろそろ解読に取りかかりましょう。既に攻撃も止んでますし、バリケードも張ってありますから」
リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)とパートナーのシーナ・アマング(しーな・あまんぐ)は、危険が去った事を確認すると解読組の所へ戻って来た。大体の事をカガチから聞いて把握する。
「なるほど、機甲化兵計画に、人型兵器ですか」
それらについては前者は陣達が、後者はエヴァ達が読み解いている最中だ。
「おっと、下もすっかり落ち着いて調査を再開したみたいだねぇ。どれ、進展はあるか……かがっちゃん借りるよぅ」
佐々良 縁(ささら・よすが)がカガチの手元からひょい、とトランシーバーを取る。
『こちら三階。その後何か情報入りましたかー?』
この時ちょうど一階には無線持ちの六本木 優希が到着した直後だった事もあり、一階での魔導力連動システムと合成魔獣の事が新たに判明していた。
『どもです〜。こっちでもその項目調べて見て情報あったら報告しまーす』
無線を切り、縁はカガチにそれを戻す。
「で、どうだった?」
「魔導力連動システムと合成魔獣だって。また何か物騒な感じだねぇ」
口に出してみるものの、いまいちどんなものかピンとこない。
「連動システムねぇ……情報通信とか電子センサの考え方と似とるねぇ、見てみるかぁ」
彼女は前者についての文献を探しにいった。
「オレ達は合成魔獣について調べます」
リュースは後者について調べるようだ。まずは手元の本に何かないか、読み始める。
「うーん……よし、みんな読み始めてるし、今なら大丈夫かな?」
椎名 真(しいな・まこと)は全員が解読作業に入るのを見て、さらに周囲が安全だと分かると、文献を探し始めた。
「真君、それ出しっぱなしだよぉ」
縁が指摘したのは本ではなく、超感覚の発動以降出したままになっている真の犬耳だ。
「え、耳? はは……気にしないで探してよね」
苦笑しつつ、目ぼしい本を棚から取り出す。
「どれどれ、『魔力融合型デバイス』について……なんだろう、これ?」
真がそれまでの報告にない単語を発見した。それはこの遺跡内、現時点では最上階で存在が確認されている試作型兵器の開発時の名称なのだが、彼はまだ知らない。
「とりあえずこれについて調べてみようかな」
真は本を持ち、バリケードの近くまで移動した。リュース、縁もそれぞれ既に解読に入っていた。
「えーっと、『光条兵器の原理を応用し、武器と魔力の融合を図ったが、出来たのは不完全なものばかりだった。魔力は有限であり、例え武器と融合してもいずれは尽き、使用不可となる。そこで次の段階として、永続的な魔力の使用を可能とするシステムの構築に着手する』関係ありそうだねぇ」
「あれ、ってことはこれが出来る前に別の研究がされてたってこと?」
縁の隣で佐々良 皐月(ささら・さつき)が指摘する。
「もしかして、その研究はこれのことかな?」
真が自分の持っている文献に書かれているのが、「魔力融合型デバイス」であることを伝える。
「何だかそれっぽいねぇ。ってことは真君のそれの後に魔導力連動システムの研究が始まったってことかい。リュース君のは?」
「こちらも前の研究の結果を受けて、みたいな事は書いてありますよ。『機甲化兵計画の中止を受け、二つの研究を同時に進めることとする。一つは魔力を武器の中に融合し制御する事で、それ自体が永続的に魔法的な力と純粋な武器としての威力の双方を発揮出来るようにするというもの。もう一つは、合成獣の技術を用い、魔法と魔獣を融合する事で、その身に強大な魔力を留めさせるというもの。前者は完成すれば白兵戦で絶対の力を発揮するだろう。後者は、成功すればドラゴンをも超える生命体を生み出す事が可能となるだろう』でも、縁さんの文面を考えるとどちらも失敗してしまったようですね」
これまでに判明した文献を断片的に繋いでいくと、研究における時系列も見えてきた。
「でも魔力を融合する、とはどういう方法なのでしょう?」
シーナが疑問を口にした。
「こればかりは読んでいかなければ分かりませんね。上手くいかなかったという事は、そうそう簡単な方法ではないとは思うのですが……」
彼自身はそれほど魔法に精通しているわけではない。ただ、漠然とそれが困難なものだと感じていた。
実際、異なる属性の魔法を融合して使うのは高度な技術である。複数の属性魔法を習得する事自体は可能だが、よほどの魔法使いでなければ属性融合や、別々の属性魔法の同時発動というのは不可能だろう。
それを、ある意味において科学と魔法の融合という形で実戦しようというのがリュースの読もうとしている事の前提なのだ。無理だろうと考えるのは決して不自然な事ではない。
***
「下には手掛かりがなかったけど、あの守護者の魔法……あれほどの力を使えるようにする術式か何かはどこかにあるはず。それを手に入れない事には終われないよ」
ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)は三階に上がってきていた。
「ほら、ユーノもキリキリ働く! 僕のパートナーなんだからそれくらい当り前でしょ! ただでさえ僕らは持ってる情報が少ないんだから」
パートナーであるユーノ・アルクィン(ゆーの・あるくぃん)に指示し、手ごろな文献を抱えさせる。
「分かりました。読む際も分からない事があったら遠慮なく言って下さいね」
苦笑しつつも、ユーノはニコに付き従う。
「それにしても、魔法が使われた痕跡は至るところにあるのになんで肝心の魔道書がないんだ? 下で見つけたのは魔道書ではあるけど、何か違うんだよな」
釈然としない様子のニコ。使い魔のカラスも飛ばしているが、まだ有益な情報はない。と思った時、使い魔が何かに反応したようだった。
「ん、何か魔法に関するものを見つけた人が同じ階にいる? よし、行ってみよう」
どうやら魔法的なものを誰かが掴んだらしい。ニコは使い魔の知らせ通りに、その場所まで移動する。すると、それほど歩かないうちに姿を捉える事が出来た。
「やはり、『あれ』に関する情報はありませんか。しかし、魔法を応用した研究。せめて手掛かりくらいは……」
同じ三階で、レーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)はあるものに関する文献を探していた。
「師匠、やっぱりどれを見ても魔法そのものは書いてないよ。何やら魔力融合なんてものは研究されてたみたいだけどね」
如月 玲奈(きさらぎ・れいな)もまた、文献を読み解いていた。やはり魔法学校に通っているせいか、魔法に関する単語には反応するようだ。
「でも、なんでこんな事をやってたんだろ? 内乱と関係あるのかな? もう少し具体的に書かれてるものがあればなあ」
目ぼしいものが見つからないらしく、玲奈はお手上げ状態だ。
「魔力融合……レナ、それに関する本はどの辺にありましたか?」
レーヴェが顔色を変えた。その言葉に一縷の望みを見出したのだろう。
「結構奥の方だったけど、壁沿いの辺りだよ」
玲奈が指した場所は、陰になっている本棚だった。目立たないわけではないが、うっかりすると見落としてしまいかねない。
「なるほど。魔法そのものと魔力を持たない物質を融合する技術ですか。さっきの魔法の兵器転用とはこれを用いたものだったのですね。しかしそれを組み込む術式はどこに?」
「結果は書いてあるけど、経過は書いてないんだよね。さっきの剣の花嫁の『最終形』も結局具体的にどうだったのかは分からず仕舞いだったし」
玲奈はえぐい内容であった剣の花嫁に関する文献について考えていた。内容からすれば、研究されてきた兵器の中でも、末期のものではあったらしい。それ以外の事は何も判明しなかった。
「魔力融合そのものは、武器に込めた魔力を半永久的に持続させる事が目的だったみたいだから、何か魔力の自動回復みたいな方法も考えていたんじゃないかな?」
玲奈が予測する。
「例えば兵器の使用者が魔力を持つ者だった場合、その本人の魔力と兵器の魔力、あとはその二者の間に魔力補充用の何かを用意し円環状にすれば、不可能ではないはずです」
レーヴェもまた一つの仮説を立てる。
(もしかしたら、その技術の大元が「あれ」に関係してるかもしれませんね)
考えながら、さらに一冊の本に手を取る。そこに書いてあるのは、今まさに立てた仮説を実際に理論立てたもの――魔導力連動システムの基礎だった。
「なるほど、限られた範囲限定という条件は付きますが……これが適用出来れば強力な魔法も容易に使えるようになりますね。アーデルハイト様の予備のボディに応用出来ればイルミンスールの大きな戦力になるのですが、今の技術では……」
もしアーデルハイトほどの魔法使いがこの力を手に入れたら、それこそ敵なしである。
ちょうどその時、二人の来訪者が現れる。
「何か魔法的なものが分かったみたいだけど、よければ教えてもらえないかな?」
ニコは自分の持ってる遺跡の魔道書の表紙を見えるように持ちながら、レーヴェに話しかける。人と関わるのは苦手なニコだが、もはやそんな事は言っていられなかった。
***
「やっぱりどこか矛盾してますぅ」
図書館二階にて、シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)は解読を継続していた。
「ほんとね。制御出来なくて恐ろしくなったから封印、とも取れるけど、それなら緊急対策用の試作型兵器なんて用意しないはずよ。同じ場所に保管したら、その危険な数体に壊されるかもしれないのに」
ミレーヌ・ハーバート(みれーぬ・はーばーと)もそれを不思議に思っていた。
「それにこれだけでは封印されたのが何かも分からないですぅ。それに御せる時がいつになるかも分からないのに、どうして確信出来たんでしょう? 現にこの施設が使われなくなって五千年経ってるんですよぉ」
「他に何か書いてあるはずよ。なんとかさっきよりは読めるようになったわ」
ミレーヌはシャーロットと共に読み進める事で、最初よりは文意を掴めるようになっていた。
「何冊か持ってきたよ。こっちは手書きじゃないけど、何かしら分かるはずさ」
ミレーヌのパートナーの一人、アルフレッド・テイラー(あるふれっど・ていらー)が本棚から四、五冊本を抱えてきた。
「ありがと、アル兄。でもまずはさっきの手書きのを……。えーっと、『例の五体のような成功例こそあるものの、やはり機甲化兵計画が中止になったのは大きかった。その後の研究によって強力な兵器を造る事は確かに出来た。だが、そのために失ったものは大きい。果たして人間の尊厳を無視していたのは、国か私か……』」
ミレーヌが読んだ部分は、シャーロットがざっと読んだ部分よりも前のページのようだった。
「最後ページには関連施設について書かれているわ。今は失われた地名みたいでどこに該当するか分からないけど……それに隣の名前は多分封印された兵器よ」
目を通し、それをシャーロットにも見せる。
「地図でもあれば分かるんですけどねぇ」
今度はシャーロットがぱらぱらとページをめくっていく。それと関わりがありそうな記述を手持ちの文献と照らし合わせていく。その中で目を引くものがあった。
『彼女達』はそれぞれの施設の中に眠らせておく事にする。全ての研究の中心であったこの場所には各種資料と、魔力融合デバイスを。ベヒーモスはあの子に懐いている。両方とも、もはや危険な存在であるため動かすことは出来ない。ここの最上階には保管のために広いスペースがある、そこに封印するほかない。
また、あの『最終』はまだ起動する事は出来ない。そのまま地下深くで眠っているのが、彼女にとっても幸せだろう。いずれ時が来れば、あるいは……
無線を誰も持ってないため、知る由はなかったが、そこに書かれているのはこの遺跡の最上階と最深部に封印されていたものについてだった。
「……研究者にも葛藤のようなものがあったようね」
「だったら、封印は解いたらまずいんじゃないか? さっきの『いつか』ってのがほんとに今なのか、それだって分からないんだぜ? 奥に向かった連中が変な事しなきゃいいけどな」
アーサー・カーディフ(あーさー・かーでぃふ)が不安そうにしていた。文面から判断される「この場所」というのは、ほとんど今自分達がいる遺跡で決まったも同然だった。現に、それらの資料がここにある。
***
「アルマ、起きてください……お願いしたいことがあるのです……」
レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)は休んでいた自分のパートナーのアルマンデル・グリモワール(あるまんでる・ぐりもわーる)を起こした。
「うむ……なんじゃ、今更起しおってからに……まぁよい、ヌシの用件を言ってみろ」
「少々……魔道書を集めるのを手伝って欲しいのです」
手元にある守護者が魔力供給に使っていた魔道書をアルマンデルに見せるレイナ。
「なるほど、ここで研究されてた魔法を知ろう、というわけじゃな」
アルマンデルは周囲の本棚を見渡す。
「ふむ……なかなかに膨大な情報じゃな。……んくく……ワシの趣味とあやつの調査を両立できそうで、なかなか良い所ではないか
二人は周辺の本棚を探りながら、資料を集めていく。
「魔法を応用した技術があるのです。……おそらく、それに関する文書もあるでしょう。膨大な量ですが……一冊ずつ確実に集めていけば何とかなるでしょう……」
レイナが先刻まで読んでいたものは魔力融合デバイスに使われた属性魔法について書かれたものだった。だからこそ研究内容にも魔法の関係を感じ取ったのだ。
(念のため……強化に使えるものを一冊くらい持っておきましょう。こちらは関係……なさそうですが)
「厚い本より薄い本ですね……どんな知識も無いよりはましなはずです。限界まで読みましょう、流し読みで目を通すだけでも」
同様に二階で文献を読み漁ろうとしていたのは、ソート・アソート(そーと・あそーと)と、パートナーの神楽 凪(かぐら・なぎ)である。
「しかし、専門用語ばかりのせいか、思うようには読めませんね」
何冊もの本を調べてみるものの、特に古代シャンバラ語の心得のない彼には、複雑な文章を読みとるのは至難の業だった。
「主、今分からない箇所は後ほど調べられるようにしましょう。僕が写本しておきます」
持って帰るにも量が多いため、重要な部分だけでも、ということらしい。
「助かります。おっと、これは……」
ソートが開いた本の序文を読み上げる。
「『人体における機晶石の影響』何やら気になる内容ですね」
そこに書かれているのは、機械を動かすエネルギーを持つ機晶石の研究内容だった。それも、機晶石を人間に組みこむ事が出来るかという。
「機晶石は機械の動力にしか使えないのでは……」
凪は首を傾げる。
「それが確かに通説です。ただ、もし人間がそれほどの力を手に入れる事が出来るとしたら……」
興味を持ったソートは食い入るようにその本を読んでいった。
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