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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

リアクション

 白装束を湯浴み着代わりに、温泉に入っているのは樹とフォルクスだ。
 濡れた白装束が肌に張り付き、透けているのでタオルを巻くよりセクシーかもしれない。
「少し狭いな」
 フォルクスはそう言うと樹の腰に手を回し、引き寄せた。
「ちょ、フォルクスなんで引き寄せるんだよ。そんなに狭くないだろ!」
「樹兄さん、フォル兄に優しくしてあげて」
 浅く掘った温泉に足だけ浸けて楽しみつつ、そう言ったのはショコラッテだ。
「ショコラちゃん……これってセクハラだと思うんだけど」
「セクハラじゃない、スキンシップ。フォル兄は寂しがり屋なの」
 ショコラッテはぱしゃりっ、と右足でお湯を軽く跳ねさせた。
「ショコラッテ、早く私の本体を引き上げてください!」
 そう抗議しているのはセーフェルだ。
 杖の形をしている本体を縁に立てかけて、ショコラッテは一緒に足湯をしているのだ。
「樹兄さんが持ってたらお湯の底だけど良いの?」
「いや! 良くはないですけど、足湯もやめて下さい!」
「あ、そうだ。お弁当作ってきたから……はい」
 セーフェルの声は届かず、ショコラッテの作った桜の塩漬けの入ったお弁当をつつくのだった。
「そろそろ離れろーーーっ!」
「そんなに顔を赤くされると余計に可愛がりたくなるな」
 樹の鉄拳がフォルクスに入れられるのも秒読みだ。


 レイディスは腰にタオルを巻いて、足先から温泉へとゆっくり入っていく。
 じわりじわりと温泉の熱が体の中へと入って来る感覚を堪能しているようだ。
 足が浸かると、時間を掛けて肩まで浸かっていく。
「はぁ〜〜……」
「気持ちええねぇ……」
 先に入っていた陣が声を掛ける。
「おっ! ホイップちゃん、こっちこっち!」
 陣が次はどこで入ろうかとうろうろしていたホイップを見つけて手招きした。
「陣さん! レイディスさんも!」
 小走りで近づくと2人に笑顔を向けた。
「おぁっ!」
 レイディスは女性の水着姿すら直視出来ないらしく、顔を真っ赤にしてしまった。
「レイディスさん?」
 ホイップが何事かと近寄ろうとしたが、陣に止められた。
「ええ、ええ。ほっといてやった方が良い」
「そうなの?」
 レイディスは無言で首を縦に振った。
「で、聞きたいことがあるんやけど」
「何?」
 陣は真面目な顔してホイップへと向いた。
「君はティセラは酷い事をするような人ではなかったって言ってたけど……オレにはそうは思えん。あの乳女Bは、何の罪もない獣人達が住む村を合成獣を引き連れて滅ぼしやがったんだ――」
 陣はその光景を思い出し、拳を握りしめ湯を叩いた。
「でも、聞いた話では台風を消滅させる事にも一役かったらしい……。オレはあの女の考える事が分からんくなってきた。一体、あいつは何をしたいんだ? 何か分からないか?」
「……ティセラは酷いことが出来る人じゃないよ。うん、これだけは言える。今、どうして……あんな事をしているのかは……分からないよ」
 ホイップは遠くでのんびり入っているティセラへと視線を向かわせる。
 ティセラはその視線に気づき、ホイップの方へと一瞬だけ向くと鋭い視線を向けた。
 その鋭さにホイップはびくりと体を震わせた。
「……ティセラ……」
 悲しそうな表情をするホイップにレイディスと陣は頭をぽんぽんと叩き、励ました。
「もう恥ずかしいのは良いのか?」
 にやりと陣がレイディスに笑うと、レイディスは陣の顔にお湯を掛けた。
「うるさい!」
「やりやがったな!」
 陣はやり返す。
 2人でお湯の掛けあいが始まってしまった。
 その楽しそうな笑顔に釣られてホイップも笑顔を少し取り戻したようだ。


 腰に巻いたタオルが湯の中でゆらりゆらりとしている。
 侘助は自分が持ってきた柚子とアヒルちゃんを温泉に浮かべると満足そうな顔をした。
「見ろ見ろ、いい匂いだろ?」
 隣にいる火藍に同意を求める。
「良い匂いですね……アヒルちゃんはどうかと思いますが」
 あはは、と笑いながら侘助は桜を眺め出した。
「あんた、傷跡が結構ありますね……」
 ふと視線を侘助の体に止めた火藍が呟いた。
 確かに、侘助の筋肉質だが華奢な体には切り傷や丸い小さな火傷の跡などがうっすらと残っている。
「んー? 最近は依頼でよく怪我するようになったしなー、その跡じゃねぇか?」
「……明らかに最近の傷跡じゃありませんけど……話したくないならいいです」
 侘助はそう誤魔化すと、桜に見惚れるようにうっとりしていた。
 実際は、昔親戚から受けた虐待によるものなのだが、知られたくはないのだろう。
 暫くの間そうして、2人でぼんやりと桜を眺めていた。
 というか、侘助は半分うつらうつらしていた。
「うぅー、気持ち悪い……、頭がぐらぐらする……」
「温泉の中で寝てたらのぼせるに決まってるでしょうが!」
 火藍は急いで侘助を温泉から引っ張りだすと、ルイから冷たい飲み物を貰ってきて渡したのだった。


「ホイップ様、あちらで綺麗にしだれ桜が見えます。彼氏さんと一緒にどうですか?」
「か、か、か、彼氏!?」
 小夜に言われた言葉に明らかに動揺して言葉がどもってしまっている。
 陣達と会話しているところへ突然現れて、びっくりしたのもあるかもしれない。
 すでに小夜はエルを捕まえており、連れて行こうとしている温泉の近くで待機していた。
 金ピカのトランクスタイプの水着を着ているようだ。
 遠目からでも光って見える。
「えっと……行ってくるね?」
「おう! 行ってき!」
「行ってらっしゃい!」
 陣とレイディスは手を振って送りだした。
 温泉に着くと、2人はなんとなく気まずく無言で入った。
 他の場所より少し濁りが強いようだ。
「あの!」
 2人が同時に口を開いた途端、小夜がにゅっと卵を渡してきた。
「そこで作った温泉卵です。良かったらこちらと一緒にどうぞ」
 一緒にお猪口に入った日本酒も手渡された。
 よく冷やされている。
 エルは辞退したようだ。
 それを見て、ホイップも日本酒は返した。
「ところで、どうやったらこんなに育つんですか?」
「ひゃっ!」
 むにゅっと、ホイップの胸は後ろから小夜の手に掴まれた。
 エルは急いで、後を向いた。
 やることは全て終わったからなのか、小夜はどこかへと向かって行った。
 無言で温泉卵を食べる音だけが聞こえる。
 そして、近くのしだれ桜の上では箒に乗ったショウが桜に隠れてスタンバイしていた。
「まだかなぁ〜、まだかなぁ〜」
 うきうきしながらホイップに釘付けとなっている。
 ショウの箒の後ろでは総司も一緒にいる。
「こちらです」
 小夜が今度連れてきたのはティセラだった。
 ホイップ達とは少し離れた場所に腰を下ろす。
 日本酒を渡されようとしたが、ワインを嗜む程度に飲むだけだからと断られていた。
 微妙に気まずい雰囲気が流れる。
「あの……私……向こうに――」
「ホイップちゃん――」
 この空気に耐えられなかったホイップが立ち上がり、エルも立ち上がった。
 ティセラも同時に立ちあがったのだが、事件はここで起きた。
「きゃーーーーーっ!」
「っ!」
 ホイップの着ていた水着とエルの水着、そして――
「なんですの?」
 ティセラのタオルがぼろぼろになり取れてしまったのだ。
「よしっ!」
 ガッツポーズを取る桜の精……ではなく、のぞき部。
 ティセラは間一髪、温泉の中に入ったので、事なきを得たが、ホイップは胸が露わになってしまっていた。
 エルは自分も露出していることに気が付かないまま、一番近くでガン見してしまった為、鼻血を出して倒れた。
「このルカルカが女王に代わってオシオキよっ!」
 騒ぎを聞き付けたルカルカが桜の上にいる2人を見つけるとドラゴンアーツを炸裂させた。
 箒は間一髪のところで避けると、ショウがアシッドミストを使用した。
 なんとよく見ると総司は水着を着ていなかった。
 ショウにタオルを勧められたが、断ったようだ。
 ルカルカの水着まで融け始めた。
「許すまじ……のぞき……変態……!」
「待て! ルカ! ほどほどに――」
 ダリルの制止空しく、2人はドラゴンアーツを使った見事な蹴りでお星様となってしまった。
「死して悔いなしーーーーーっ!」
 2人の声が響き渡る。
「……死んではいないようだな」
 ダリルは2人が遠くの桜の枝に引っかかって、蠢いているのを見ると、ルカルカの頭を撫でた。
 そして、全てが露わになってしまう前に持ってきた大判タオルをルカルカ、そしてホイップ、ティセラに渡したのだった。
 エルにも一応、掛けていた。
 ティセラは新しいタオルを巻きなおし、ホイップは和子が余分に用意していたスクール水着を着ようとしたのだが、サイズが合わなかった為、ルカルカの予備水着を着用となった。
 ルカルカの水着の為、少々過激なビキニだが……。
 のぞき部の2人は小夜がツンツンしながらヒールを掛けていたのを目撃されている。


 ホイップが過激なビキニ姿で温泉に入っているところへ、鳳明が飲み物を持って現れた。
 その後ろにはたまたま一緒になった菫と小次郎がいる。
 菫も小次郎もタオルを巻いているのだが、小次郎の胸がF〜Hカップなので凄いことになってしまっている。
「温泉にはこれだよね! じゃーん! 温泉卵とそれに合う飲み物ー!」
 鳳明は3人に温泉卵とグラスを渡して、飲み物を注ごうとしたが、どう見ても未成年な菫がいたことで、ルイのところからジュースを持ってきて、中身を変更した。
「う〜ん、恋愛とかっていまいちピンと来ないんだけどどうなのかな? ねぇねぇ、ホイップさんはエルくんと付き合ってるんだよね?」
 鳳明は目を輝かせて質問した。
「えっと……」
「付き合ってないの?」
 菫が突っ込むと顔を赤くしてコクリと頷いた。
「そうなの!?」
 鳳明は驚いて、グラスを落としそうになる。
「でもさ、お兄ちゃんのどこが良いの? 女の子をやたらと妹にしたがる変なところとかあるし。私もその1人だしね」
 菫が言うと、ホイップは軽くショックを受けているようだった。
「あのね……でも、女性には優しいし」
「それはそうだけど……」
「それに……ストレートに好きだって言ってくれる」
 ここまで言うと、ホイップはまた顔を赤くしてしまった。
「へぇ! で、恋ってどんな感じなの?」
「えっと……本を読んでてもね、エルさんの“エル”って文字があっただけでその人の事を思い出しちゃったり……」
 鳳明の質問に茹でダコ状態のホイップが答える。
「好きな人が他の女の子に優しくしてるのは……うん、ちょっとショックかも。それが良いところなのは解ってるんだけど……あぅ」
 ホイップが顔を赤くしているのを受けて、他の3人ともつられて赤くなっている。
「エルさんの事、話してるときのホイップさんが可愛いのはわかった。そっかぁ……恋が人を綺麗にするっていうけどこういうことなのかな?」
 鳳明は首をかしげている。
「そうだ! お兄ちゃんが喜ぶこと教えてあげるよ!」
 菫はホイップに何かを伝授し、小次郎はその間にエルを起こしにいった。
 鳳明はその様子を興味津津で見つめている。
 しばらくすると、起きたエルがやってきた。
「ボクに用事って?」
 菫とホイップは目を合わせて、タイミングを合わせる。
「お兄ちゃん」
「エルさん」
 超甘え声での呼びかけ。
「これ買って?」
 最後の言葉はちょっと命令系が入った感じがミソなんだそうだ。
 2人で一緒に指差したカタログは空京で今人気の宝石店のものだ。
 ちょっと高い。
「うん、良いよ!」
 エルはまんまと魅力にノックアウトされ、2人にピンクダイヤのネックレスをプレゼントすることになってしまった。
「なるほど〜」
 ホイップとじっくり見ていた鳳明はこの技を習得した。